介護士が知っておくべき！高齢者の手引き歩行：健側介助の正しい知識と実践

この記事では、介護施設で働く介護士のあなたに向けて、高齢者の手引き歩行における健側介助の正しい知識と実践方法を解説します。特に、90歳を超える高齢者の左肩脱臼という状況を想定し、なぜ健側からの介助が必要なのか、具体的な介助方法、そして日々の業務に役立つ情報を提供します。

施設で介護士をしています。御利用者様が左肩を脱臼されました。その方は普段シルバーカーで歩行されています。怪我をされたのでリーダーから右側に付いて手引き歩行をするように指示されました 。この御利用者様は90才を越えておられ、かなり小柄なおばあさんです。認知症は無く大変シャキシャキした方です。なぜ健側から介助するのかなあ？と思ったのですが、その時は聞きそびれてしまいました。私が考えたのは健側に杖を持ってもらい、介護者がしっかりと体幹を支えて患側に付き添うのが良いのでは？と思ったり、もし、怪我に触れては大変なので健側に付き添うのかなあ？とも思うのですが正しい介助のやり方を教えて下さい。長文ですみません!宜しくお願い致します。

介護の現場では、高齢者の安全と自立支援を両立させることが重要です。特に、歩行介助は転倒リスクを軽減し、利用者のQOL（Quality of Life：生活の質）を向上させるために不可欠な技術です。この記事を通じて、健側介助の基本的な考え方から、具体的な介助方法、そして日々の業務に役立つ知識を習得し、より質の高い介護を提供できるようになりましょう。

1. なぜ健側からの介助が必要なのか？ 基本的な考え方

健側からの介助は、高齢者の歩行を安全にサポートするための重要な技術です。その理由は多岐にわたりますが、主なものを以下にまとめます。

• 安全性の確保: 健側からの介助は、転倒のリスクを最小限に抑えるために有効です。介護者は、利用者の体幹を支え、バランスを崩した際に素早く対応できます。特に、片方の肩を脱臼している場合、患側からの介助は、さらなる怪我のリスクを高める可能性があります。
• 利用者の自立支援: 健側からの介助は、利用者が自身の力で歩行する機会を奪うことなく、安全を確保します。これにより、利用者の自立心を尊重し、身体機能の維持・向上を促すことができます。
• 介助者の負担軽減: 健側からの介助は、介護者にとっても負担が少ない方法です。利用者の体幹をしっかりと支えることで、不必要な力を使うことなく、安全に歩行をサポートできます。
• 心理的安心感の提供: 健側からの介助は、利用者に安心感を与えます。介護者がそばにいることで、利用者は安心して歩行に集中でき、転倒に対する不安を軽減できます。

これらの理由から、健側からの介助は、高齢者の歩行介助において非常に重要な役割を果たします。しかし、健側介助を行う際には、利用者の状態や状況に応じて、適切な方法を選択する必要があります。

2. 健側介助の具体的な方法：実践的なステップ

健側介助を安全かつ効果的に行うためには、以下のステップに従って実践することが重要です。ここでは、90歳を超える高齢者の左肩脱臼という状況を想定し、具体的な方法を解説します。

1. 情報収集と準備:
   • 利用者の状態（既往歴、現在の体調、認知機能など）を把握します。
   • 医師や理学療法士からの指示を確認し、介助方法の指示に従います。
   • 歩行補助具（シルバーカー、杖など）の準備と点検を行います。
2. 利用者の体勢と姿勢の確認:
   • 利用者の足元が安定していることを確認します。
   • 背筋を伸ばし、自然な姿勢で立つように促します。
   • 必要に応じて、歩行前に準備体操を行います。
3. 介助者の立ち位置と姿勢:
   • 利用者の健側に立ち、少し斜め後ろの位置を確保します。
   • 自分の足は、利用者の歩行を妨げないように、少し開いて安定させます。
   • 背筋を伸ばし、膝を軽く曲げて、重心を低く保ちます。
4. 手引き歩行の実施:
   • 患側への配慮: 左肩脱臼の場合、患部に触れないように注意します。
   • 体幹のサポート: 介護者は、利用者の体幹を軽く支え、バランスを保ちます。
   • 歩行のリズム: 利用者の歩行のリズムに合わせて、優しく誘導します。
   • 声かけ: 「ゆっくり行きましょう」「大丈夫ですよ」など、安心できる声かけを行います。
   • 杖の使用: 杖を持っている場合は、健側に持ち、歩行をサポートします。
5. 転倒予防と対応:
   • 歩行中は、常に周囲の状況に注意し、危険な場所（段差、滑りやすい場所など）を避けます。
   • 万が一、転倒しそうになった場合は、利用者の体幹を支え、安全な体勢を確保します。
   • 転倒した場合、速やかに医師に連絡し、適切な処置を行います。

これらのステップを実践することで、高齢者の安全な歩行をサポートし、転倒のリスクを軽減することができます。

3. 健側介助の際の注意点：安全な介助のために

健側介助を行う際には、以下の点に注意し、安全な介助を心がけましょう。

• 利用者の状態を常に観察する:
  • 歩行中の表情、呼吸、体調の変化に注意し、異変があればすぐに介助を中断します。
  • 疲労や痛みがないか、定期的に確認します。
• 無理な介助はしない:
  • 利用者の能力を超えた介助は、転倒のリスクを高めます。
  • 無理な体勢での介助は、介護者の負担を増やすだけでなく、利用者の怪我につながる可能性があります。
  • 必要に応じて、他の介護者と協力し、安全な介助を行います。
• 環境整備:
  • 歩行経路の安全を確保します。
  • 段差や障害物を取り除き、滑りやすい場所には滑り止めを設置します。
  • 明るく、見やすい環境を整えます。
• コミュニケーション:
  • 利用者の話に耳を傾け、不安や疑問を解消します。
  • 声かけを通じて、安心感を与え、積極的にコミュニケーションを図ります。
• 記録と報告:
  • 介助の内容、利用者の状態、変化などを記録します。
  • 異常が見られた場合は、速やかに医師や関係者に報告します。

これらの注意点を守ることで、より安全で質の高い介護を提供することができます。

4. 成功事例：健側介助で歩行能力が向上したケース

健側介助を適切に行うことで、高齢者の歩行能力が向上し、生活の質が改善された事例は数多くあります。以下に、具体的な成功事例を紹介します。

事例1：

92歳の女性Aさんは、脳梗塞の後遺症で右片麻痺があり、歩行時にふらつきがみられました。Aさんは、シルバーカーを使用しており、患側である右側に介護者が付き添って介助していました。しかし、転倒のリスクが常にあり、Aさんは歩行に対する不安を感じていました。そこで、介護者は健側である左側に立ち、体幹を支えながら手引き歩行を行うようにしました。また、Aさんの歩行のリズムに合わせて、声かけを行い、安心感を与えました。その結果、Aさんは歩行に対する不安が軽減し、徐々に歩行距離が伸び、最終的には、自宅内を自力で歩けるようになりました。

事例2：

88歳の男性Bさんは、変形性膝関節症のため、歩行時に強い痛みを感じていました。Bさんは、杖を使用しており、患側である右側に介護者が付き添って介助していました。しかし、痛みのため、歩行が困難であり、外出を避けるようになっていました。そこで、介護者は健側である左側に立ち、体幹を支えながら手引き歩行を行うとともに、歩行時の痛みを軽減するための工夫を行いました。具体的には、Bさんの歩行のリズムに合わせて、ゆっくりと歩き、休憩を挟みながら歩行しました。また、Bさんの状態に合わせて、歩行補助具の調整や、靴の変更なども行いました。その結果、Bさんは痛みが軽減し、外出に対する意欲が湧き、近所の公園まで散歩できるようになりました。

これらの事例から、健側介助を適切に行うことで、高齢者の歩行能力が向上し、生活の質が改善されることがわかります。重要なのは、利用者の状態や状況に合わせて、適切な介助方法を選択し、安全に配慮することです。

5. 専門家からのアドバイス：より質の高い介護のために

より質の高い介護を提供するためには、専門家からのアドバイスを参考にすることも重要です。以下に、専門家からのアドバイスをまとめます。

• 理学療法士との連携:
  • 理学療法士は、利用者の身体機能評価を行い、適切な歩行方法やリハビリテーションプログラムを提案します。
  • 定期的に理学療法士と連携し、利用者の状態に合わせた介助方法を検討します。
• 医師との連携:
  • 医師は、利用者の病状や既往歴を把握し、適切な医療的アドバイスを提供します。
  • 定期的に医師と連携し、利用者の健康状態を確認し、必要な場合は、医療的なサポートを受けます。
• 研修への参加:
  • 介護技術に関する研修に参加し、知識と技術を向上させます。
  • 最新の介護技術や知識を学び、日々の業務に活かします。
• チームワーク:
  • 他の介護者と協力し、情報共有を行います。
  • 疑問や不安な点は、積極的に相談し、解決策を共有します。
• 自己研鑽:
  • 介護に関する書籍や文献を読み、知識を深めます。
  • 積極的に情報収集を行い、最新の介護情報に触れます。

これらのアドバイスを参考に、専門家との連携を強化し、自己研鑽に励むことで、より質の高い介護を提供することができます。

6. 介護現場での応用：ケーススタディと実践的なヒント

健側介助は、様々な状況で応用できます。ここでは、具体的なケーススタディを通じて、実践的なヒントを紹介します。

ケーススタディ1：

認知症の高齢者で、歩行時に不安感が強く、転倒のリスクが高い場合。

• 対応: 健側介助に加え、声かけを工夫します。「ゆっくり行きましょう」「大丈夫ですよ」など、安心感を与える言葉を選びます。また、視覚的なサポートとして、利用者の目線に合わせて、歩行経路に目印を置くことも有効です。

ケーススタディ2：

片麻痺の高齢者で、患側の足がうまく動かせない場合。

• 対応: 健側介助に加え、患側の足を介護者が軽く支え、歩行をサポートします。また、歩行補助具（杖、歩行器など）を適切に活用し、安全な歩行を促します。

ケーススタディ3：

視覚障害のある高齢者の場合。

• 対応: 健側介助に加え、利用者の肩に手を添え、歩行をサポートします。また、歩行経路の障害物を取り除き、安全な環境を整えます。

これらのケーススタディから、健側介助は、利用者の状態や状況に合わせて、柔軟に対応することが重要であることがわかります。日々の業務の中で、様々なケースに遭遇すると思いますが、それぞれの状況に合わせて、適切な介助方法を選択し、安全に配慮することが大切です。

7. まとめ：健側介助をマスターし、より良い介護を

この記事では、介護士の方向けに、高齢者の手引き歩行における健側介助の正しい知識と実践方法を解説しました。健側介助の重要性、具体的な方法、注意点、成功事例、専門家からのアドバイス、そしてケーススタディを通じて、実践的な知識を習得していただけたと思います。

健側介助をマスターすることで、高齢者の安全な歩行をサポートし、転倒のリスクを軽減することができます。また、利用者の自立支援を促し、QOLの向上に貢献することができます。日々の業務の中で、この記事で学んだ知識を活かし、より質の高い介護を提供してください。

介護の現場は、常に変化し、新しい知識や技術が求められます。この記事を参考に、健側介助に関する知識を深め、実践を重ねることで、自信を持って介護に取り組むことができるようになります。そして、何よりも、利用者の方々の笑顔のために、日々努力を続けていきましょう。