介護施設でのジレンマ：本人の「歩きたい」気持ちと、施設の方針の間で揺れるあなたへ

この記事では、介護施設で働くあなたが直面している、入居者の「歩きたい」という強い気持ちと、施設の方針、そして上司との間で生じる葛藤に焦点を当てます。本人の自立支援をしたいというあなたの純粋な思いと、転倒のリスクや施設の方針との間で板挟みになっている状況を、どのように乗り越え、より良いケアを提供できるのか、具体的なアドバイスと解決策を提示します。

認知症の方に対するリハビリの方針について疑問です。本人は歩けるようになりたいと思い、自主的に立ち上がりの訓練をされています。しかし一方、家族、ドクター、施設は転倒することを心配し、訓練はしない方針です。介護施設のご利用者です。２年程前に自宅で転倒し、大腿骨頚部骨折後、ある程度まで回復したのですが、車椅子生活、負荷をかけると左足が痛む状態です。

付き添いで手すりを持って歩行が出来るので、私が介助して廊下の手すりを使って訓練したのですが、上司から、「しない」という事で今までやっているのに勝手に介助しないでほしいと言われました。

理由は次の通りです。

• 訓練で自信が付いて、充分に歩けないのに自分で訓練を行って転倒する可能性がある。
• 家族も転倒を心配している。
• 方針で決めた事だから。

確かに、方針に反して訓練をして、いつか転倒してしまうと自分が悪かったと感じますが、納得できない点があります。

それは‘本人の気持ち’が無視されているという事です。

本人は歩きたいという目標を持っております、誰もスタッフがリハビリしてくれないから自分で手すりを使って立ち上がり～立位の保持訓練をされています。

(ブレーキのかけ忘れが時々あり、スタッフは「危ないから一人でしないで、歩かないで」等、行動を抑制させる声かけが聞こえてきます。)

そこに私が関わって一緒に歩行訓練をしたらとても喜んでいただきました。その時は、自分のした事は正しかったと信じたいのですが、上記のようなリスクや方針の事を考えると従うべきか葛藤があります。

この場で皆さんのご意見を聞かせてほしいと思い質問させていただきました。

皆さんだったら、施設の方針or本人の気持ちのどちらを支持されますか？

やっぱり私は本人の気持ちを大切に支持したいと思います。

方針を変える為に上司を納得させる何か良い方法は無いものでしょうか？

宜しくお願い致します

1. 葛藤の根本原因を理解する

介護の現場では、入居者の安全と尊厳、そして施設の方針の間で、多くの葛藤が生じます。今回のケースでは、本人の「歩きたい」という強い気持ちと、転倒のリスク、施設の方針との間で、あなたが板挟みになっている状況が浮き彫りになっています。この葛藤を理解するためには、まずそれぞれの要素を深く掘り下げてみましょう。

1.1. 本人の気持ち：自己実現への欲求

高齢者であっても、自己実現への欲求は非常に重要です。「歩きたい」という気持ちは、単に移動手段としての機能回復だけでなく、自立した生活への願望、自己肯定感の維持、そして尊厳を守ることにつながります。この欲求を無視することは、本人のQOL（Quality of Life：生活の質）を著しく低下させる可能性があります。

1.2. 転倒のリスク：安全管理の重要性

転倒は、高齢者にとって深刻な問題です。骨折や外傷だけでなく、寝たきりになるリスクも高まります。施設としては、入居者の安全を守るために、転倒のリスクを最小限に抑える必要があります。この安全管理は、介護施設にとって非常に重要な責務であり、施設の方針として徹底されることは当然です。

1.3. 施設の方針：組織としての統一性

施設の方針は、入居者への一貫したケアを提供し、スタッフ間の連携を円滑にするために不可欠です。医療機関や関連機関との連携も、この方針に基づいて行われます。しかし、この方針が硬直的になり、個々の入居者のニーズに合わなくなることもあります。今回のケースでは、この点が問題となっています。

2. 上司を納得させるための具体的なアプローチ

上司を納得させるためには、感情論ではなく、客観的なデータと具体的な提案が必要です。以下のステップを踏むことで、上司の理解を得やすくなるでしょう。

2.1. 情報収集と分析

まず、本人の状態に関する詳細な情報を収集します。具体的には、以下の点を把握しましょう。

• 医学的評価：医師や理学療法士による、現在の身体機能、転倒リスク、リハビリの可能性に関する評価。
• 既往歴：過去の病歴や現在の服薬状況。
• 生活歴：自宅での生活状況、歩行能力、活動レベル。
• 本人の意向：「歩きたい」という気持ちの強さ、具体的な目標。

これらの情報を基に、本人の状態を客観的に分析し、リハビリの必要性や安全性を評価します。転倒リスクが高い場合は、具体的な対策を検討する必要があります。

2.2. 提案書の作成

収集した情報と分析結果を基に、上司に提出する提案書を作成します。提案書には、以下の内容を含めましょう。

• 目的：本人のQOL向上、自立支援。
• 現状分析：本人の状態、転倒リスク、リハビリの必要性。
• 具体的な提案：
  • リハビリ計画：理学療法士の指導の下、安全に配慮したリハビリプログラムを提案します。
  • 環境整備：手すりの設置、床の滑り止め対策など、転倒リスクを軽減するための環境整備を提案します。
  • モニタリング：リハビリ中の本人の状態を定期的に観察し、記録します。
  • リスク管理：転倒した場合の対応策（報告体制、医療機関との連携など）を明確にします。
• 期待される効果：本人のQOL向上、身体機能の改善、自立支援。
• 費用：リハビリにかかる費用、環境整備にかかる費用。
• スケジュール：リハビリの開始時期、期間、評価のタイミング。

2.3. 上司との面談

提案書を提出し、上司と面談を行います。面談では、以下の点を意識しましょう。

• 根拠を示す：客観的なデータや専門家の意見を基に、提案の妥当性を説明します。
• リスクを説明する：転倒のリスクや、万が一転倒した場合の対応策を具体的に説明します。
• 協力を求める：上司の理解と協力を得て、チーム全体で取り組む体制を築きます。
• 柔軟性を示す：状況に応じて、計画を修正する柔軟性を示します。

面談では、上司の懸念点や疑問点を丁寧に聞き、一つずつ解消していくことが重要です。

3. チーム全体での連携

上司の理解を得た後も、チーム全体での連携が不可欠です。以下の点を意識して、円滑な連携を図りましょう。

3.1. 情報共有

リハビリの進捗状況、本人の状態の変化、転倒リスクに関する情報を、定期的にチーム全体で共有します。情報共有は、ケアの質を向上させ、事故を未然に防ぐために重要です。

3.2. 役割分担

リハビリに関わるスタッフの役割を明確にします。例えば、理学療法士はリハビリプログラムの作成と指導、看護師は健康管理、介護士は日常生活でのサポートなど、それぞれの専門性を活かした役割分担を行います。

3.3. 定期的なカンファレンス

定期的にカンファレンスを開催し、本人の状態やリハビリの進捗状況について話し合います。カンファレンスでは、問題点や課題を共有し、改善策を検討します。また、成功事例を共有することで、モチベーションを高めることができます。

3.4. 家族との連携

家族との連携も重要です。本人の状態やリハビリの進捗状況を定期的に報告し、家族の意見を聞きながら、ケアの方針を決定します。家族の理解と協力は、本人のQOL向上に不可欠です。

4. 成功事例から学ぶ

他の介護施設での成功事例を参考に、自施設での取り組みに活かしましょう。

4.1. 事例1：個別リハビリの導入

ある介護施設では、入居者一人ひとりの状態に合わせた個別リハビリプログラムを導入しました。理学療法士が中心となり、本人の目標や能力に合わせて、運動療法、歩行訓練、日常生活動作訓練などを行います。その結果、多くの入居者が身体機能の改善を実感し、自立した生活を送れるようになりました。

4.2. 事例2：転倒予防プログラムの実施

別の介護施設では、転倒予防プログラムを実施しました。具体的には、転倒リスクの高い入居者に対して、筋力トレーニング、バランス訓練、環境整備、服薬管理などを行います。その結果、転倒件数が減少し、入居者の安全性が向上しました。

4.3. 事例3：チーム医療の強化

さらに別の施設では、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、介護士などが連携し、チーム医療を強化しました。定期的なカンファレンスや情報共有を通じて、入居者の状態を多角的に評価し、最適なケアを提供しました。その結果、入居者のQOLが向上し、スタッフの満足度も高まりました。

5. あなた自身の成長のために

今回の経験を通して、あなた自身も成長することができます。以下の点を意識して、キャリアアップを目指しましょう。

5.1. スキルアップ

リハビリに関する知識や技術を習得するために、研修会やセミナーに参加しましょう。また、資格取得を目指すことも有効です。例えば、介護福祉士、理学療法士、作業療法士などの資格を取得することで、専門性を高めることができます。

5.2. 経験の蓄積

様々なケースを経験し、問題解決能力を高めましょう。今回のケースのように、ジレンマに直面した際には、積極的に情報収集し、解決策を検討することで、経験を積むことができます。

5.3. 自己分析

自分の強みや弱みを把握し、自己成長につなげましょう。今回の経験を通して、あなたは本人の気持ちを尊重し、自立支援をしたいという強い思いを持っていることが分かりました。この強みを活かし、さらに専門性を高めることで、キャリアアップを目指すことができます。

5.4. メンタルヘルスケア

介護の仕事は、精神的な負担が大きい場合があります。ストレスを軽減するために、適切な休息を取り、趣味や運動などで気分転換をしましょう。また、同僚や上司に相談することも重要です。必要に応じて、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

6. まとめ：より良いケアのために

介護の現場では、入居者の安全と尊厳を守りながら、より良いケアを提供するために、様々な課題に直面します。今回のケースでは、本人の「歩きたい」という気持ちと、施設の方針、転倒のリスクの間で、あなたが葛藤する状況を解説しました。上司を納得させるためには、客観的なデータと具体的な提案が必要です。チーム全体での連携、成功事例の活用、そしてあなた自身の成長を通じて、より良いケアを提供し、入居者のQOL向上に貢献しましょう。

介護の仕事は、大変なことも多いですが、やりがいのある仕事です。あなたの努力が、入居者の笑顔につながることを願っています。

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