介護施設での父とのコミュニケーション：アルツハイマー型認知症の理解と、心に寄り添う言葉の選び方

この記事は、介護施設に入所しているアルツハイマー型認知症の父親とのコミュニケーションに悩むあなたに向けて書かれています。具体的な状況を理解し、どのように対応すれば良いのか、専門的な知識と実践的なアドバイスを提供します。認知症の父との心の距離を縮め、より良い関係を築くためのヒントを見つけましょう。

91才の父を老人ホームに預けている者です。父はアルツハイマー型認知症です。離れているので、頻繁には行けないのですが、以前は私が父のイメージの中では子供だったようで、私が行くと名前は連呼するのですが、怯えて布団をかぶり、片目だけで見つめていました。

ところが、先日行ったところ、昼食中だったのですが（行動は、ティッシュを何枚も取っては、お浸しの繊維をペッっとしたり、何故かずっとお腹をさすっていて、トレパンの中にティッシュを畳んでは、しまう無意味な行動をとりながらも）「悲しいね。悲しいね。」と言っては、私の手を「貸してくれ」と言ってギューと握りしめたり、「太ったな」（本当です。これ）と言ってみたり、「もう、ダメだ！」と言う言葉が私の心に刺さりました。

質問なんですが…アルツハイマー型認知症の患者でも、時として、頭がすっきりと物事を考えられる瞬間って、あるのでしょうか？

「悲しい」と言われた時には、「こんな気持ちの良い暖かな静かな所に居られて、悲しくないじゃない！」「もう、ダメだ！」には、「こんなに私の手が痛い程力出せるのだから、ダメじゃないわよ！」とも応えましたが…（本当に綺麗で清潔だし新しく、スタッフも皆さん良くして下さる素晴らしい施設だと思っています）。

今になって、もっと良い言葉の返答がして上げられなかったのか？考え込んでしまいました。確かに、「また、来るね！」と言っても私が帰ることまでは、理解出来ていないようでした。だいたい、自分が何故自宅でなく、そこにいるのか？その施設を何処と思っているのか？も理解出来ていない所もあるのも事実です。

アルツハイマー型認知症の理解：脳のメカニズムと症状

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が徐々に死滅していくことで発症します。これにより、記憶力、思考力、判断力、言語能力などが低下し、日常生活に支障をきたすようになります。認知症の進行は人それぞれ異なり、症状の現れ方も様々です。

• 記憶障害: 最近の出来事を忘れやすくなる、同じことを何度も言う、物を置いた場所を忘れるなど。
• 見当識障害: 時間や場所、人などが分からなくなる。
• 実行機能障害: 計画を立てたり、手順を追って物事をこなすことが難しくなる。
• 言語障害: 言葉が出てこない、話の内容が理解できないなど。
• 行動・心理症状: 不安、抑うつ、徘徊、暴言、暴行など。

アルツハイマー型認知症の進行は、初期、中期、末期と段階的に進みます。初期には、物忘れや言葉のつまずきなど、比較的軽度の症状が現れます。中期になると、記憶障害や見当識障害が顕著になり、日常生活に支障をきたすようになります。末期になると、身体機能も低下し、寝たきりになることもあります。

認知症患者の「すっきりとした瞬間」：理解と対応

ご質問にあるように、アルツハイマー型認知症の患者でも、時として「頭がすっきりと物事を考えられる瞬間」は存在します。これは、脳の機能が完全に失われるわけではなく、まだ残っている部分が一時的に活性化したり、特定の感情や記憶が呼び起こされることによって起こります。

この瞬間は、患者さんの感情や思考を理解し、適切に対応するための貴重な機会となります。例えば、以下のようなことが考えられます。

• 過去の記憶のフラッシュバック: 若い頃の思い出や、大切な人との出来事を鮮明に思い出すことがあります。
• 感情的な共感: 悲しみや喜びといった感情を、言葉ではなく、表情や態度で表現することがあります。
• 一時的な思考の明瞭さ: 特定の話題や環境下で、思考がクリアになることがあります。

このような瞬間を捉え、患者さんの気持ちに寄り添うことが、良好なコミュニケーションを築く上で重要です。

具体的なコミュニケーションのヒント：心に寄り添う言葉の選び方

ご自身の経験から、もっと良い言葉で返答できなかったかと悩んでいらっしゃるようですが、それはとても自然な感情です。認知症の患者さんとのコミュニケーションは、言葉だけでなく、非言語的なコミュニケーションも重要になります。以下に、具体的なコミュニケーションのヒントをいくつかご紹介します。

• 共感と受容: 相手の感情を理解し、受け入れる姿勢を示しましょう。「悲しい」という言葉に対しては、「つらいね」「寂しいね」と共感の言葉をかけることが大切です。
• 肯定的な言葉: 否定的な言葉ではなく、肯定的な言葉を使うように心がけましょう。「もう、ダメだ！」という言葉に対しては、「そんなことないよ」「まだまだ元気だよ」と励ますのではなく、「大変だったね」「頑張ったね」と、これまでの努力を認め、労う言葉をかけると良いでしょう。
• シンプルな言葉: 難しい言葉や長い説明は避け、短く、分かりやすい言葉で話しましょう。
• 非言語的コミュニケーション: 笑顔、アイコンタクト、触れ合いなど、言葉以外のコミュニケーションも大切です。手を握ったり、優しく肩を叩いたりすることで、安心感を与えることができます。
• 過去の思い出: 昔の出来事や、共通の思い出話をすることで、会話がスムーズに進むことがあります。
• 焦らない: 相手のペースに合わせて、ゆっくりと話を聞きましょう。返答を急かしたり、否定的な言葉を使ったりしないように注意しましょう。

具体的な状況別の対応例

ご質問にあった状況を例に、具体的な対応例をいくつかご紹介します。

• 「悲しいね」と言われた時:
  • 避けるべき言葉: 「そんなことないよ」「悲しくないでしょう」
  • 推奨する言葉: 「つらいね」「寂しいね」「何かあったの？」「話してごらん」と、相手の気持ちに寄り添う言葉をかけましょう。
• 「もう、ダメだ！」と言われた時:
  • 避けるべき言葉: 「そんなことないよ」「まだ若いじゃない」
  • 推奨する言葉: 「大変だったね」「頑張ったね」「何か困ったことある？」「話を聞かせて」と、相手の努力を認め、困っていることを尋ねる言葉をかけましょう。
• 「太ったな」と言われた時:
  • 避けるべき言葉: 「そんなことないよ」「気にしなくていいよ」
  • 推奨する言葉: 「そうね、ちょっと食べすぎたかな」「美味しいものをたくさん食べたからね」と、ユーモアを交えながら、肯定的に受け止めましょう。

介護施設との連携：情報共有とサポート

介護施設との連携も、円滑なコミュニケーションを築く上で重要です。施設スタッフとの情報共有を通じて、患者さんの状態を把握し、適切な対応をすることができます。以下に、連携のポイントをご紹介します。

• 定期的な情報交換: 施設のスタッフと定期的に面談し、患者さんの日々の様子や変化について情報交換しましょう。
• 記録の活用: 施設の記録（日誌や看護記録など）を参考に、患者さんの状態や行動パターンを把握しましょう。
• 相談: 困ったことや分からないことがあれば、遠慮なく施設のスタッフに相談しましょう。
• 協力: 施設と協力して、患者さんの生活をより豊かにするための活動（レクリエーションなど）を企画しましょう。

心のケア：あなた自身の負担を軽減するために

認知症の患者さんの介護は、精神的にも肉体的にも大きな負担を伴います。あなた自身の心のケアも、非常に重要です。以下に、負担を軽減するためのヒントをご紹介します。

• 休息: 疲れていると感じたら、無理をせずに休息を取りましょう。
• 気分転換: 趣味を楽しんだり、友人や家族と過ごしたりして、気分転換を図りましょう。
• 相談: 家族や友人、専門家（医師、カウンセラーなど）に相談し、悩みを打ち明けましょう。
• 情報収集: 認知症に関する情報を積極的に収集し、正しい知識を身につけましょう。
• サポート: 介護保険サービスや、地域のサポート体制を活用しましょう。

一人で抱え込まず、周囲のサポートを頼ることが大切です。

まとめ：寄り添う心と、適切な言葉選びが大切

アルツハイマー型認知症の患者さんとのコミュニケーションは、時に困難を伴いますが、適切な理解と対応によって、より良い関係を築くことができます。患者さんの感情に寄り添い、肯定的な言葉を選ぶこと、そして、介護施設との連携を密にすることが重要です。また、あなた自身の心のケアも忘れずに行いましょう。この記事が、あなたの心の支えとなり、より良いコミュニケーションを築くための一助となれば幸いです。

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