医療法人職員のソフトボール大会と、見えていない「無理強い」問題：転職コンサルタントが解説

とある医療法人のホームページを見ていました。そこの理事長が書いている日記があるのですが、こんなことが書いてありました。・先日、法人内の病院、介護施設の職員でソフトボールの大会をした・ピッチャーは自分で、完投勝利した・参加者、応援者は楽しそうで、良い一日だった　むりやり試合や応援に付き合わされた人がいること、手加減されて勝たせてもらったことはなぜこの人には見えないのでしょうか？

理事長の視点と、現場の現実：組織風土とコミュニケーションのギャップ

この質問は、医療法人という組織におけるコミュニケーションの課題、そしてリーダーシップのあり方について深く問いかけています。理事長の日記からは、ソフトボール大会を成功裏に終え、職員の満足度を高めたというポジティブな印象を受け取ります。完投勝利という個人的な成果も強調されており、自身のリーダーシップに自信を持っている様子がうかがえます。しかし、質問者の方の指摘するように、この日記からは「無理強い」や「手加減」といった、参加者側のネガティブな感情や経験は完全に抜け落ちています。

これは、組織における情報伝達やコミュニケーションの不全、そしてリーダーシップの盲点を浮き彫りにしています。理事長は自身の視点、つまり成功体験やポジティブな側面しか見ておらず、参加者のリアルな感情や経験、組織内部の複雑な力関係を理解できていない可能性が高いのです。 これは、医療現場に限らず、多くの企業や組織で起こりうる問題です。リーダーが自身の成功体験に囚われ、現場の声を聞き取れなくなると、組織風土は硬直化し、従業員のモチベーション低下や離職につながる危険性があります。

ポイント：リーダーは、成功体験だけでなく、失敗や批判的な意見にも耳を傾ける姿勢が重要です。360度評価などのフィードバックシステムを導入し、多角的な視点から組織状況を把握することが求められます。

なぜ「見えない」のか？：認知バイアスと組織文化

理事長が「無理強い」や「手加減」に気づかない理由は、いくつかの心理的要因が考えられます。

• 確認バイアス：自分の信念や期待に合う情報だけを選び取る傾向。理事長は大会の成功を強く期待していたため、ネガティブな情報は無視していた可能性があります。
• 自己中心的バイアス：自分の行動や考え方を客観的に評価できない傾向。理事長は自分の行動が参加者にどのような影響を与えているかを十分に考慮できていなかった可能性があります。
• 権力バイアス：権力を持つ立場にあると、部下の意見を軽視したり、自分の意見を押し通したりする傾向があります。理事長の立場が、参加者からの本音の意見を聞きにくくしている可能性があります。
• 組織文化：上意下達型の組織文化が根付いており、部下は上司に意見を言いづらい雰囲気がある可能性があります。そのため、参加者たちは「無理強い」や「手加減」を訴えることができなかったのかもしれません。

これらのバイアスや組織文化は、医療現場特有のヒエラルキー構造や、責任の重圧、時間的制約などによってさらに強まる可能性があります。 医療従事者は、常に高い責任感とプレッシャーの中で働いているため、上司への意見表明をためらいがちです。

具体的な対策例：匿名アンケートの実施、定期的な意見交換会、上司と部下の1on1面談、相談窓口の設置など、従業員の声を拾い上げる仕組みを構築することが重要です。

医療現場におけるエンゲージメント向上：具体的な改善策

医療現場における従業員のエンゲージメント（仕事への情熱や愛着）を高めるためには、単なるイベント開催だけでなく、より深いレベルでのコミュニケーションと配慮が必要です。

• ボトムアップ型の意思決定：イベント企画段階から職員の意見を積極的に取り入れ、全員が参加しやすい企画にする。
• 参加の強制ではない「選択」を尊重：参加は任意とし、参加しない職員への配慮も欠かさない。代替イベントの用意や、個人の休暇取得を尊重する姿勢を示す。
• 公平性の確保：チーム編成や試合ルールにおいて、公平性を意識する。実力差が大きい場合は、レベル分けを行うなど配慮が必要。
• フィードバックシステムの構築：イベント後、参加者へのアンケートを実施し、改善点を見つける。匿名性の確保も重要。
• 感謝の表現：参加者全員への感謝を明確に伝える。個々の貢献を認め、ねぎらうことで、モチベーション向上に繋がる。
• ワークライフバランスの推進：過度な労働時間や負担を避ける。休暇取得を推奨し、ワークライフバランスを重視する文化を醸成する。

これらの改善策は、単なるソフトボール大会だけでなく、医療法人全体の組織風土改善にも繋がります。 従業員の意見を尊重し、働きやすい環境を整備することで、離職率の低下や、医療の質向上にも貢献できるでしょう。

成功事例：エンゲージメント向上に成功した医療法人の取り組み

私がコンサルティングを担当したある医療法人では、従業員満足度向上のため、部署を跨いでの交流イベントを企画しました。 単なるレクリエーションではなく、部署間の連携強化を目的としたワークショップ形式を取り入れました。 事前にアンケートを実施し、参加者の希望や意見を反映することで、高い参加率と満足度を実現しました。 その結果、部署間の連携強化だけでなく、従業員のモチベーション向上にも繋がりました。 この事例からもわかるように、従業員の意見を尊重し、参加型のイベントを企画することが重要です。

転職活動における注意点：組織風土の確認

医療機関への転職を検討されている方は、企業選びにおいて組織風土をしっかりと確認することが重要です。 求人情報だけではわからない部分も多いので、面接の機会を活用し、実際に働く職員の方々と話をしたり、職場環境を直接見たりするなど、綿密な調査が必要です。 もし、今回の事例のような「無理強い」や「不公平」な状況が常態化している組織であれば、転職活動を見直すことも検討すべきでしょう。

まとめ

理事長の日記に書かれたソフトボール大会は、表面上は成功したように見えますが、参加者側の視点に欠けた記述は、組織内部のコミュニケーション不全やリーダーシップの課題を浮き彫りにしています。 医療現場に限らず、組織の活性化には、リーダーの意識改革と、従業員の意見を尊重する文化の醸成が不可欠です。 企業選びにおいても、組織風土の確認は非常に重要です。 転職活動を通して、自分にとって働きやすい環境を見つけることが大切です。

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