親の成年後見人申立て、娘ができることとは？専門家が教える手続きと注意点

この記事では、認知症の父親の成年後見人申立てについて悩んでいる方に向けて、具体的な手続き、メリット、デメリットを解説します。成年後見制度の専門知識に加え、介護施設への入居、財産管理、家族間の問題など、多岐にわたる課題への対応策を提示します。ご自身の状況に合った最適な選択をするための情報を提供します。

認知症の父の成年後見人 申立てをしようか悩んでいます。

現在 父 79才、介護度1でトイレなどの実行機能にはほぼ問題ないが被害妄想がひどく会話がなりたたない。

父名義の財産 不動産含めて3000万程度、現在は母が管理。

家族は母と娘の私のみ。

後見人を申し立てしようと思ったのは、父に施設に入ってもらう時に家族では申し込みが出来ない、本人の委任状が必要だと聞いたからです。正常な会話すら出来ない父には絶対に無理なので。

そこで質問です。

上記の状態で 娘である私が後見人に なることが出来ますか？

出来たとして 後見人になった時の メリットとデメリットを教えて下さい

補足

ご回答ありがとうございます。後見人を設定したメリットデメリットと質問しましたが、それに加えて「後見人を立てなかった時のデメリット」を教えて頂ければ嬉しく思います。

ご相談ありがとうございます。認知症のお父様の成年後見人申立てについて、様々な不安や疑問をお持ちのことと思います。お父様の介護、財産管理、将来の施設入居など、考慮すべき点は多岐にわたります。この記事では、成年後見制度の基礎知識から、具体的な手続き、メリット・デメリット、そして後見人を立てなかった場合の注意点まで、詳しく解説していきます。ご自身の状況に最適な選択をするための情報を提供し、少しでもお役に立てれば幸いです。

1. 成年後見制度とは？基本を理解する

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分になった方の権利を保護し、支援するための制度です。この制度は、本人の意思を尊重し、その人らしい生活を支援することを目的としています。

• 法定後見制度: 判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助の3つの類型があります。家庭裁判所が選任した成年後見人等が、本人の財産管理や身上監護を行います。
• 任意後見制度: 本人が判断能力のあるうちに、将来の判断能力低下に備えて、あらかじめ後見人となる人や支援内容を契約しておく制度です。

今回のケースでは、お父様がすでに認知症で判断能力が低下しているため、法定後見制度を利用することになります。

2. 娘であるあなたが後見人になれるか？

はい、原則として、娘であるあなたは成年後見人になることができます。親族は後見人候補者として優先的に選任される傾向があります。ただし、家庭裁判所は、本人の状況や親族との関係性、後見人としての適性などを総合的に判断して、最適な後見人を選びます。

後見人になれないケースとしては、以下のようなものがあります。

• 未成年者
• 破産者
• 成年被後見人、被保佐人
• 後見人としての職務を誠実に遂行できない事情がある者（過去に不正行為があったなど）

これらの条件に当てはまらなければ、後見人になることは可能です。ただし、家庭裁判所は、複数の候補者がいる場合や、親族間の対立がある場合には、専門家（弁護士や司法書士など）を後見人に選任することもあります。

3. 成年後見人になった場合のメリット

成年後見人になることには、以下のようなメリットがあります。

• 本人の権利保護: 本人の財産を適切に管理し、不当な詐欺や悪質な契約から守ることができます。
• 介護施設への入居手続き: 本人の代わりに、介護施設への入居契約や医療行為に関する同意などを行うことができます。
• 財産管理の明確化: 財産目録の作成や、定期的な財産管理報告を通じて、財産の状況を明確に把握できます。
• 法的支援: 本人のために、法的サービス（弁護士への相談など）を利用することができます。

特に、介護施設への入居は、本人の生活の質を向上させるために不可欠です。成年後見人になることで、スムーズな手続きが可能になります。

4. 成年後見人になった場合のデメリット

成年後見人には、責任と義務が伴います。以下に、主なデメリットを挙げます。

• 時間と労力: 財産管理や身上監護には、多くの時間と労力がかかります。定期的な報告書の作成や、家庭裁判所とのやり取りも必要です。
• 専門知識の必要性: 財産管理や法律に関する知識が必要となる場合があります。必要に応じて、専門家（弁護士、税理士など）のサポートを受ける必要があります。
• 責任の重さ: 後見人としての任務を怠った場合、損害賠償責任を負う可能性があります。
• 親族間の対立: 財産管理の方法や、本人の介護方針について、親族間で意見の対立が生じる可能性があります。
• 報酬の発生: 後見人には、本人の財産から報酬が支払われます。報酬額は、本人の財産状況や、後見人の業務内容によって異なります。

これらのデメリットを理解した上で、後見人になるかどうかを慎重に検討する必要があります。

5. 後見人を立てなかった場合のデメリット

後見人を立てない場合、以下のようなリスクがあります。

• 財産管理の困難さ: 認知症が進むと、本人が自分で財産を管理することが困難になります。悪質な業者による詐欺被害に遭う可能性も高まります。
• 介護サービスの利用制限: 介護施設への入居や、訪問介護サービスの利用に際して、本人の意思確認ができず、手続きが滞る可能性があります。
• 医療行為への同意の遅れ: 緊急時の医療行為について、本人の意思確認ができないため、適切な治療を受けられない可能性があります。
• 相続問題の複雑化: 本人の判断能力が低下した状態で、遺産分割協議を行うことが困難になり、相続トラブルに発展する可能性があります。
• 法的保護の欠如: 本人の権利を保護するための法的手段が限られ、不利益を被るリスクが高まります。

後見人を立てない場合、本人の生活や財産が危険にさらされる可能性が高まります。特に、介護施設への入居や、医療行為の同意が必要となる場面では、大きな支障が生じる可能性があります。

6. 成年後見人申立ての手続き

成年後見人の申立ては、以下の手順で行います。

1. 申立ての準備: 申立てに必要な書類を収集します。具体的には、申立書、本人の戸籍謄本、住民票、診断書、財産に関する資料などです。
2. 申立て: 本人の住所地を管轄する家庭裁判所に、申立書類を提出します。
3. 調査: 家庭裁判所は、本人や親族との面談、医師への照会などを行い、本人の判断能力や、後見人候補者の適性を調査します。
4. 審判: 家庭裁判所は、調査結果に基づいて、後見人等を選任する審判を行います。
5. 後見開始: 審判が確定した後、後見人が職務を開始します。

手続きには、専門的な知識が必要となる場合があります。弁護士や司法書士などの専門家に相談し、サポートを受けることをお勧めします。

7. 専門家への相談

成年後見制度に関する疑問や不安は、専門家に相談することで解決できます。弁護士や司法書士は、成年後見制度に関する専門知識を持っており、申立ての手続きや、財産管理、身上監護に関するアドバイスを提供してくれます。また、成年後見制度に詳しい社会福祉士や、行政書士に相談することも有効です。

専門家への相談は、以下のメリットがあります。

• 正確な情報: 制度に関する正確な情報を得ることができます。
• 手続きのサポート: 申立てに必要な書類の作成や、手続きの代行を依頼できます。
• 法的アドバイス: 財産管理や、身上監護に関する法的アドバイスを受けることができます。
• 精神的なサポート: 悩みを共有し、精神的な負担を軽減することができます。

専門家への相談は、ご自身の状況に合った最適な選択をするために、非常に重要です。

8. 財産管理のポイント

成年後見人は、本人の財産を適切に管理する義務があります。財産管理の主なポイントは以下の通りです。

• 財産目録の作成: 本人の財産を正確に把握し、財産目録を作成します。
• 財産の保全: 財産を安全に管理し、不必要なリスクを避けます。
• 収入と支出の管理: 本人の収入を把握し、生活費や医療費などの支出を適切に管理します。
• 定期的な報告: 家庭裁判所に対して、財産管理の状況を定期的に報告します。
• 専門家との連携: 必要に応じて、弁護士や税理士などの専門家と連携し、適切なアドバイスを受けます。

財産管理は、成年後見人の重要な役割です。専門家のサポートを受けながら、適切に行うことが重要です。

9. 身上監護のポイント

成年後見人は、本人の生活、療養看護、介護に関する事項（身上監護）についても、適切な配慮をする必要があります。身上監護の主なポイントは以下の通りです。

• 本人の意思の尊重: 本人の意思を尊重し、その人らしい生活を支援します。
• 生活環境の整備: 介護施設への入居や、住環境の整備など、生活環境を整えます。
• 医療・介護サービスの利用支援: 医療機関や介護サービス事業者との連携を図り、適切なサービスを利用できるように支援します。
• 健康管理: 定期的な健康診断や、適切な医療を受けるための手配を行います。
• 権利擁護: 本人の権利を擁護し、不当な扱いから守ります。

身上監護は、本人の生活の質を向上させるために不可欠です。本人の意思を尊重し、寄り添った支援を心がけることが重要です。

10. 家族間の連携と協力

成年後見制度は、家族だけで抱え込むのではなく、家族全体で協力して取り組むことが重要です。家族間で情報共有を行い、本人の介護方針や、財産管理について話し合う機会を設けましょう。必要に応じて、専門家を交えて話し合い、円滑なコミュニケーションを図ることも有効です。

家族間の連携と協力は、本人の生活を支える上で、非常に重要な要素です。お互いを尊重し、協力し合うことで、より良い支援体制を築くことができます。

11. まとめ：あなたにとって最善の選択のために

この記事では、認知症のお父様の成年後見人申立てについて、様々な角度から解説しました。成年後見制度は、判断能力が低下した方の権利を保護し、支援するための重要な制度です。娘であるあなたが後見人になることは可能ですが、メリットとデメリットを理解し、ご自身の状況に合った最適な選択をすることが重要です。

成年後見制度の手続きは複雑で、専門的な知識が必要となる場合があります。弁護士や司法書士などの専門家に相談し、サポートを受けることをお勧めします。また、家族間で情報共有を行い、協力して取り組むことが、本人の生活を支える上で非常に重要です。

ご自身の状況を整理し、専門家のアドバイスを受けながら、お父様にとって最善の選択をしてください。そして、ご自身だけで抱え込まず、周囲のサポートを頼りながら、前向きに進んでいくことを願っています。

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