「ここは変な奴ばっかりだ」デイサービス利用者の帰宅願望と不穏行動への対応策：現役ケアマネが教える、個別ケアのヒント

この記事では、デイサービス利用中に帰宅願望が強く、不穏な言動が見られる利用者への具体的な対応策について、現役ケアマネージャーの視点から解説します。介護現場でよくある悩みに焦点を当て、利用者の方々が安心して過ごせるための環境づくり、そして職員の方々の負担を軽減するためのヒントを提供します。認知症ケア、個別ケア、そしてチームワークの重要性について、具体的な事例を交えながら掘り下げていきます。

デイサービス利用中に帰宅要求が強い利用者に困っています。男性の利用者で見た目はごく普通の年配の男性です。

日常生活には全く不自由なく完全に自立です。家族が困っているのは本人が外出先から戻ってこられなくなることです。

しかし、ご自分で財布を持ち、電車に一人で乗ることもできます。ちなみに認知症で要介護２ですが、当方のデイサービスでは介護度の高い方が多く（介護度４以上の方が２０％超えます）、３５名の利用者を６名の介護職員でケアしています。

その方は「ここはおかしい奴ばっかりだ」「帰れないなら死ぬしかないな」などおっしゃっています。

明らかにうちのデイは合わず本当にお気の毒なんです。

しかしその方が不穏になると一人がつきっきりになり、ほかの方へのケアが行き届かず本当に困ります。

相談員にもさらに上の上司に進言してもまったく変わりません。

はっきり言ってケアマネは何を考えているんだろうと思います。

できれば現役ケアマネさんからの回答がいただけたら幸いです。よろしくお願いします。補足うちのデイは認知症対応型ではないのです・・・多いですが(^_^;)

すでに現在も小さな菜園の世話をしていただいています。ただ本当に小さいので手入れもすぐ終わってしまいます。

不穏になるきっかけとして思い当たるのは、他の利用者さんの独語や奇声です・・・。

現役ケアマネが答える！帰宅願望が強い利用者への具体的な対応策

この度は、デイサービスでの利用者様の対応について、大変お困りの状況とのこと、心中お察しいたします。自立度の高い方が、周囲との環境になじめず、不穏な言動をとられることは、介護現場では珍しくありません。今回のケースは、特に認知症の症状と、デイサービスの環境とのミスマッチが複雑に絡み合っているように見受けられます。

現役ケアマネージャーとして、この問題に対する具体的な対応策を、以下の3つのステップに分けてご提案します。

• ステップ1：現状の把握とアセスメントの見直し
• ステップ2：個別ケアプランの作成と環境調整
• ステップ3：チーム全体での連携強化と継続的な評価

ステップ1：現状の把握とアセスメントの見直し

まずは、現状を客観的に把握し、アセスメント（評価）を見直すことから始めましょう。これは、問題の本質を理解し、適切な対応策を講じるための第一歩です。

1.1 利用者様の詳細な情報収集

まず、利用者様の詳細な情報を収集します。具体的には、以下の点を中心に情報を集めましょう。

• 既往歴と服薬状況： 認知症の進行度合い、合併症、服用している薬の種類と量などを確認します。
• 生活歴： これまでの生活環境、家族構成、趣味、仕事、価値観などを詳しく把握します。特に、どのような環境で育ち、どのようなことに喜びを感じていたのかを知ることは重要です。
• パーソナリティ： 性格、気質、コミュニケーションの取り方などを把握します。
• 帰宅願望の具体的な原因： いつ、どのような状況で帰宅願望が強くなるのか、具体的な時間帯や場所、周囲の状況などを記録します。例えば、「食事後」「特定の利用者との接触後」「大きな音が聞こえた後」など、トリガーとなる要因を特定します。
• 不穏行動の具体的な内容： 具体的な言動（「帰りたい」「死にたい」など）、行動（落ち着きがない、徘徊など）、身体的なサイン（顔色、呼吸など）を記録します。

これらの情報は、ご家族や本人の話を聞き取るだけでなく、過去の記録や他の職員からの情報も参考にしながら、多角的に収集することが重要です。

1.2 アセスメントの見直しと再評価

収集した情報をもとに、アセスメントを見直します。アセスメントとは、利用者様の心身の状態や生活環境を評価し、課題を明確にすることです。今回のケースでは、以下の点に注目して再評価を行いましょう。

• 認知機能の評価： 認知症の進行度合いを再評価し、現在の状態に合わせたケアプランを作成します。認知機能検査（MMSEなど）の結果だけでなく、日常生活での具体的な行動や言動も評価に含めます。
• 心理的要因の評価： 帰宅願望や不穏行動の背後にある心理的要因を考察します。孤独感、不安感、退屈感、過去のトラウマなどが影響している可能性も考慮します。
• 環境要因の評価： デイサービスの環境が、利用者様の状態に合っているかを評価します。周囲の利用者との関係性、騒音、活動内容などが、利用者様に与える影響を検討します。
• ニーズの特定： 利用者様の真のニーズを特定します。例えば、「安心したい」「誰かと繋がりたい」「自分の存在を認められたい」など、表面的な行動の背後にある欲求を理解することが重要です。

アセスメントの見直しは、一度きりではなく、定期的に行うことが重要です。利用者様の状態は常に変化するため、状況に合わせてケアプランも柔軟に修正していく必要があります。

ステップ2：個別ケアプランの作成と環境調整

アセスメントの結果をもとに、個別ケアプランを作成し、環境を調整します。このステップでは、利用者様のニーズに合わせたきめ細やかな対応が求められます。

2.1 個別ケアプランの作成

個別ケアプランは、利用者様一人ひとりの状態やニーズに合わせて作成されるケアの計画書です。今回のケースでは、以下の点を盛り込んだケアプランを作成します。

• 目標設定： 帰宅願望の軽減、不穏行動の減少、生活の質の向上などを目標として設定します。目標は、具体的で、測定可能で、達成可能で、関連性があり、時間制約のある（SMART）目標を設定することが重要です。
• 具体的なケア内容： 以下のケア内容を検討し、プランに盛り込みます。
  • コミュニケーション： 利用者様との信頼関係を築き、安心感を与えるためのコミュニケーションを重視します。傾聴、共感、肯定的な言葉がけなどを心がけましょう。
  • 活動の提供： 利用者様の興味や関心に合わせた活動を提供します。菜園の手入れだけでなく、回想法、音楽療法、手作業など、様々な活動を試してみましょう。
  • 環境調整： デイサービスの環境を、利用者様にとってより過ごしやすいものに調整します。騒音を軽減する、落ち着けるスペースを設ける、他の利用者との距離を調整するなど、様々な工夫が考えられます。
  • 服薬管理： 医師の指示のもと、適切な服薬管理を行います。
• 評価方法： ケアプランの効果を評価するための方法を定めます。例えば、帰宅願望の頻度や強度、不穏行動の回数や程度などを記録し、定期的に評価します。

2.2 環境調整の実施

環境調整は、利用者様の安心感を高め、不穏行動を軽減するために非常に重要です。具体的な環境調整の例を以下に示します。

• 個別のスペースの確保： 他の利用者との距離を保ち、落ち着いて過ごせるスペースを確保します。パーテーションで区切る、静かな場所に移動するなど、工夫を凝らしましょう。
• 騒音対策： 騒音は、認知症の方にとって大きなストレスになります。テレビの音量を下げる、話し声を抑えるなど、騒音を軽減するための対策を講じます。
• 視覚的な工夫： 落ち着いた色調のインテリアを使用する、写真や絵を飾るなど、視覚的な工夫も効果的です。
• 安心できる物の配置： 利用者様が安心できる物（写真、思い出の品など）を、見える場所に配置します。
• 日中の過ごし方の工夫： 日中の活動を充実させ、生活リズムを整えることで、夜間の不眠や徘徊を予防します。

2.3 家族との連携

家族との連携は、利用者様のケアを成功させるために不可欠です。家族に、現在の状況やケアプランの内容を説明し、理解と協力を求めましょう。家族からの情報も収集し、ケアに役立てます。また、家族の不安や悩みに寄り添い、サポートすることも重要です。

ステップ3：チーム全体での連携強化と継続的な評価

個別ケアプランの実行には、チーム全体での連携が不可欠です。また、ケアの効果を継続的に評価し、必要に応じてプランを修正していくことも重要です。

3.1 チーム連携の強化

チーム連携を強化するために、以下の取り組みを行います。

• 情報共有： 利用者様の状態やケアプランの内容を、チーム全体で共有します。定例会議や記録を通じて、情報伝達を徹底します。
• 役割分担： 各職員の役割を明確にし、責任を持ってケアにあたります。
• 研修の実施： 認知症ケアに関する知識や技術を向上させるための研修を実施します。
• 相談しやすい環境づくり： 職員が気軽に相談できる環境を整えます。

3.2 継続的な評価とプランの見直し

ケアの効果を継続的に評価し、必要に応じてケアプランを見直します。評価には、以下の方法を用います。

• 記録の活用： 帰宅願望の頻度、不穏行動の回数、生活の質の変化などを記録し、分析します。
• 観察： 利用者様の言動や表情を注意深く観察し、変化を把握します。
• 本人への聞き取り： 利用者様に、現在の気持ちや困っていることを尋ねます。
• 家族への聞き取り： 家族に、自宅での様子や変化について尋ねます。

評価の結果をもとに、ケアプランを修正します。例えば、活動内容の変更、環境調整の見直し、コミュニケーション方法の改善などを行います。PDCAサイクル（Plan-Do-Check-Act）を回し、ケアの質を継続的に向上させることが重要です。

現役ケアマネが教える！具体的な対応事例

以下に、具体的な対応事例をいくつかご紹介します。これらの事例は、あくまでも一例であり、利用者様の状況に合わせて柔軟に対応することが重要です。

事例1：帰宅願望が強いAさんの場合

Aさんは、デイサービスで「家に帰りたい」と繰り返し訴えることが多く、不穏な行動も見られました。アセスメントの結果、Aさんは、過去に自宅で転倒し、入院した経験から、自宅への不安感が強いことが判明しました。

• 対応：
  • Aさんの不安を軽減するために、デイサービス内で、Aさんが安心して過ごせるような、落ち着けるスペースを設けました。
  • Aさんの過去の経験を考慮し、転倒予防のための工夫をしました。
  • Aさんの趣味である編み物を一緒に楽しむ時間を増やし、安心感と満足感を得られるようにしました。
  • ご家族と連携し、自宅での安全対策について話し合い、Aさんの不安を軽減しました。
• 結果： Aさんの帰宅願望は徐々に軽減され、デイサービスでの生活に慣れてきました。

事例2：他の利用者とのトラブルが多いBさんの場合

Bさんは、他の利用者とのコミュニケーションがうまくいかず、トラブルを起こすことがありました。アセスメントの結果、Bさんは、自分の意見がうまく伝えられず、誤解されやすいことが判明しました。

• 対応：
  • Bさんのコミュニケーションをサポートするために、職員が間に入り、Bさんの気持ちを他の利用者に伝えたり、Bさんの意見を代弁したりしました。
  • Bさんの得意なこと（例えば、昔の出来事について話すことなど）を活かせるような、グループ活動を企画しました。
  • Bさんに、コミュニケーションスキルを向上させるための、個別指導を行いました。
• 結果： Bさんは、徐々に他の利用者との関係を築けるようになり、トラブルの回数が減りました。

事例3：不穏行動が激しいCさんの場合

Cさんは、デイサービスで突然大声を出したり、物を投げたりするなどの不穏行動が見られました。アセスメントの結果、Cさんは、特定の音（例えば、大きな物音）に過敏に反応し、不安感が高まることが判明しました。

• 対応：
  • Cさんが不快に感じる音を極力排除し、静かな環境を整えました。
  • Cさんの不安を軽減するために、Cさんの好きな音楽を流したり、アロマを焚いたりしました。
  • Cさんの気持ちを落ち着かせるために、職員が寄り添い、優しく声をかけました。
  • Cさんの行動を記録し、不穏行動のパターンを分析し、事前に対応できるようにしました。
• 結果： Cさんの不穏行動は軽減され、デイサービスでの生活が安定しました。

まとめ：寄り添うケアと継続的な努力が大切

デイサービス利用者の帰宅願望や不穏行動への対応は、簡単ではありません。しかし、利用者様の状況を深く理解し、個別のニーズに合わせたケアを提供することで、必ず改善の道は開けます。

今回の記事では、現役ケアマネージャーの視点から、具体的な対応策と事例をご紹介しました。重要なのは、以下の3点です。

• 現状の把握とアセスメントの見直し： 利用者様の状態を正確に把握し、適切なケアプランを作成するための基盤となります。
• 個別ケアプランの作成と環境調整： 利用者様一人ひとりのニーズに合わせた、きめ細やかな対応が重要です。
• チーム全体での連携強化と継続的な評価： チーム一丸となってケアに取り組み、効果を評価し、改善を続けることが、ケアの質を向上させるために不可欠です。

介護現場では、様々な困難に直面することがありますが、諦めずに、利用者様に寄り添い、継続的な努力を続けることが大切です。今回の記事が、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。そして、もしあなたがキャリアについてさらに深く悩み、専門家のアドバイスが必要だと感じたら、ぜひwovieのLINE相談をご利用ください。あなたの悩みに寄り添い、最適な解決策を一緒に見つけましょう。

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