精神障害と認知症を抱える高齢者の介護施設利用：あなたとご家族が知っておくべきこと

この記事では、精神障害と認知症を併発している高齢者の介護施設利用に関する疑問にお答えします。ご家族が直面する様々な問題、利用できるサービス、そしてより良い選択をするための具体的な方法を、専門家の視点と共にご紹介します。

うちの母は、軽い認知症と、妄想性障害？を合併している様子です。
１・身近な人が自分の通帳を盗んだ（家族が耐えきれず別居すると隣の家の人が盗んだことになる）。
２・銀行の受付の人が、自分のお金を使い込んでいる。
３・近所の特別養護老人ホームの担保に自宅がなっている。
４・自分の土地の名義が勝手に変えられている。
５・訪れる人が中年以降で男性だと、父親と死別した後にしばらく片思いしていたＦ氏と言い張る。そしてＦ氏がお金を盗んだ、自分の土地を勝手に名義変更したなどと言う。
６・隣の家の人が、自分の命を狙っている。「殺すしかないな」という声が聞こえて来た。
等という妄想があり、地域包括支援センターに相談したら、「精神病院に１か月くらい入院させてください。それから6か月後には精神障碍者福祉手帳がもらえるはずなので・・・」と言われました。

秋に、認知症外来に連れて行き、心理テストをしましたが、短期記憶の部分以外は全てクリアしております。

買い物しても、買ってきたことを忘れて放置して腐らせてしまう。いつもものを無くして探している様子が見受けられるなどの、認知症の部分は軽く、日常生活に少し支障が出ているという結果にはなりましたが、家族としては妄想の方が心配です。夜中に警察に被害届を出しに行ったり、土地の名義のことで朝から司法書士に電話したりしていますが、相手方は母が何を言っているのかわからない上に警察からは迷惑だから連れて帰るようにと夜中に子供のところに電話がかかってくる始末です。

わたしはすでに結婚しており乳幼児がいる為、母の面倒を看るのは難しいので、最終的には介護施設を利用するしかないかもしれないと考えておりましたが、包括センターのひとから、精神病院へ入院を勧められ、びっくりしております。精神障害のある老人は、認知症を併発していも、老人ホームやデイサービスを利用することは難しいのでしょうか？ 詳しい方教えてください。

はじめに：現状の理解と課題の整理

ご相談ありがとうございます。お母様の状況、そしてご家族の皆様が抱えるご心労、大変お察しいたします。精神障害と認知症を併発している方の介護は、専門的な知識と理解が必要であり、ご家族だけで抱え込むには限界があります。まずは、現状を正確に理解し、どのような課題があるのかを整理することから始めましょう。

お母様の症状を具体的に見ていくと、認知症による記憶障害に加え、妄想性障害による特有の症状が見られます。これらの症状が組み合わさることで、日常生活に様々な支障が生じ、ご家族との関係にも影響を及ぼしていることがわかります。特に、夜間の行動や警察への相談など、緊急性の高い問題も発生しており、早急な対応が求められます。

地域包括支援センターからの「精神病院への入院」という提案は、一見すると驚かれるかもしれませんが、症状の安定化を図るための選択肢の一つとして考えられます。しかし、ご家族としては、その後の介護施設の利用可能性や、お母様の生活の質（QOL）への影響など、様々な疑問や不安を抱かれることでしょう。

1. 精神障害と認知症を併発している高齢者の特徴

精神障害と認知症を併発している高齢者は、それぞれの症状が複雑に絡み合い、特有の困難さがあります。ここでは、その特徴を詳しく見ていきましょう。

1.1 認知症による症状

• 記憶障害： 新しい情報を覚えにくくなったり、過去の出来事を思い出せなくなったりします。
• 見当識障害： 時間、場所、人物がわからなくなることがあります。
• 実行機能障害： 計画を立てたり、手順を追って物事を進めることが難しくなります。
• 判断力の低下： 状況を正しく判断できず、危険な行動をとることがあります。
• 理解力の低下： 指示や説明を理解することが難しくなります。

1.2 精神障害による症状

• 妄想： 事実に基づかない考えを信じ込み、周囲の人々を疑ったり、攻撃的になったりすることがあります。
• 幻覚： 見えないものが見えたり、聞こえない声が聞こえたりすることがあります。
• 感情の不安定さ： 気分の変動が激しく、落ち込んだり、興奮したりすることがあります。
• 行動異常： 奇妙な行動をとったり、衝動的に行動したりすることがあります。

1.3 併発による困難さ

認知症と精神障害が併発すると、それぞれの症状が互いに影響し合い、より複雑な問題を引き起こします。例えば、認知症による記憶障害が、妄想の内容を強化し、現実との区別をさらに困難にする可能性があります。また、精神障害による感情の不安定さが、認知症の症状を悪化させ、介護者の負担を増大させることもあります。

これらの症状は、介護施設での生活や、地域での生活を困難にする可能性があります。しかし、適切な対応と支援があれば、より良い生活を送ることも可能です。

2. 介護施設利用の可能性と選択肢

精神障害と認知症を併発している高齢者の場合、介護施設の利用は、ご家族の負担を軽減し、本人の生活の質を向上させるための有効な手段の一つです。しかし、すべての施設が受け入れ可能というわけではありません。ここでは、介護施設の選択肢と、それぞれの特徴について解説します。

2.1 特別養護老人ホーム（特養）

特別養護老人ホームは、原則として、常時介護が必要な方が入所できる施設です。認知症の方の受け入れ実績も多く、24時間体制で介護サービスを提供しています。しかし、精神科的なケアは専門外であることが多く、精神症状が強い場合は、入所が難しい場合があります。事前に施設の受け入れ体制を確認し、主治医や精神科医との連携が可能かどうかを確認することが重要です。

2.2 介護老人保健施設（老健）

介護老人保健施設は、在宅復帰を目的とした施設であり、医療ケアが必要な方にも対応しています。医師や看護師が常駐しており、精神科的なケアも一部提供している場合があります。しかし、精神症状が強い場合は、入所が難しい場合があります。事前に施設の受け入れ体制を確認し、主治医や精神科医との連携が可能かどうかを確認することが重要です。

2.3 認知症対応型共同生活介護（グループホーム）

認知症対応型共同生活介護は、認知症の方が少人数で共同生活を送る施設です。家庭的な雰囲気の中で、認知症の症状に合わせたケアを受けることができます。精神症状が比較的安定している場合は、入所が可能な場合があります。しかし、精神科的なケアは専門外であることが多く、症状が悪化した場合の対応が限られる場合があります。事前に施設の受け入れ体制を確認し、主治医や精神科医との連携が可能かどうかを確認することが重要です。

2.4 精神科病院の関連施設

一部の精神科病院では、関連施設として、介護老人保健施設やグループホームを運営している場合があります。これらの施設では、精神科医や精神保健福祉士が連携し、精神症状と認知症の両方に対応したケアを提供しています。精神科病院に入院している場合は、連携がスムーズに行われる可能性があります。

2.5 その他の選択肢

上記以外にも、様々な介護施設があります。例えば、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、自立した生活を支援する施設もあります。これらの施設では、介護サービスだけでなく、生活支援サービスや医療サービスも提供しています。しかし、精神症状が強い場合は、受け入れが難しい場合があります。事前に施設の受け入れ体制を確認し、主治医や精神科医との連携が可能かどうかを確認することが重要です。

3. 施設選びのポイントと注意点

介護施設を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、施設選びの際に考慮すべき点と、注意点について解説します。

3.1 本人の状態に合わせたケア体制

まず、入所を希望する方の状態に合わせたケア体制が整っているかを確認しましょう。具体的には、認知症の症状への対応、精神症状への対応、医療ケアの提供体制などです。施設のスタッフが、認知症や精神障害に関する専門知識を持っているか、経験が豊富であるかを確認することも重要です。また、緊急時の対応や、協力医療機関との連携体制も確認しておきましょう。

3.2 施設の雰囲気と環境

施設全体の雰囲気や環境も、入所者の生活の質に大きく影響します。明るく清潔な環境であるか、プライバシーが確保されているか、レクリエーションやイベントが充実しているかなどを確認しましょう。可能であれば、実際に施設を見学し、入所者の方々の様子や、スタッフの対応を観察することをおすすめします。

3.3 費用とサービス内容

施設の費用と、提供されるサービス内容を比較検討しましょう。入所費用だけでなく、食費、日用品費、医療費など、様々な費用が発生します。サービス内容についても、介護保険でカバーされる範囲と、自己負担となる範囲を確認しておきましょう。事前に、施設の料金体系や、サービス内容について、詳しく説明を受けることが重要です。

3.4 家族との連携

ご家族との連携体制も、施設選びの重要なポイントです。定期的な面会や、情報交換の機会が設けられているか、緊急時の連絡体制が整っているかなどを確認しましょう。また、ご家族の意見や要望を、施設側がどの程度受け入れてくれるのかも、重要なポイントです。

3.5 事前の情報収集と相談

施設選びの際には、事前に多くの情報を収集し、専門家や関係機関に相談することが重要です。地域包括支援センターや、ケアマネジャーに相談し、情報提供やアドバイスを受けることができます。また、複数の施設を見学し、比較検討することで、より適切な施設を選ぶことができます。

4. 精神科病院への入院と、その後の支援

地域包括支援センターから精神科病院への入院を勧められた場合、その目的と、その後の支援について理解しておくことが重要です。

4.1 入院の目的

精神科病院への入院は、主に以下の目的で行われます。

• 症状の安定化： 妄想や幻覚などの精神症状を薬物療法や心理療法によって落ち着かせ、日常生活を送れるようにします。
• 身体的・精神的健康状態の評価： 認知症の進行状況や、合併症の有無などを評価します。
• 今後の治療方針の決定： 退院後の生活をどのように支援していくか、具体的な計画を立てます。

4.2 入院中の過ごし方

入院中は、医師や看護師、精神保健福祉士などの専門職によるサポートを受けながら、治療を行います。薬物療法に加え、心理療法や作業療法なども行われます。また、認知症の方に対しては、回想法や音楽療法など、様々なプログラムが提供されます。入院中は、規則正しい生活を送り、心身ともにリラックスできる環境で過ごすことが重要です。

4.3 退院後の支援

退院後の生活をスムーズに送るためには、様々な支援が必要となります。具体的には、以下の支援が考えられます。

• 訪問看護： 看護師が自宅を訪問し、服薬管理や健康状態のチェックを行います。
• 訪問介護： ヘルパーが自宅を訪問し、食事や入浴、排泄などの介護を行います。
• デイサービス： 日中に施設に通い、食事や入浴、レクリエーションなどを行います。
• ショートステイ： 短期間、施設に入所し、介護サービスを受けます。
• 精神科通院： 定期的に精神科医を受診し、薬物療法や心理療法を受けます。
• 精神科訪問看護： 精神科の専門家が自宅を訪問し、精神的なサポートを行います。
• グループホーム： 認知症の方が少人数で共同生活を送る施設です。

これらの支援を組み合わせることで、退院後の生活を支え、ご本人とご家族が安心して生活できるようになります。

5. 家族ができること：心のケアと情報収集

ご家族が、精神障害と認知症を併発している方の介護をするにあたっては、ご自身の心のケアと、情報収集が非常に重要です。ここでは、ご家族ができることについて解説します。

5.1 家族自身の心のケア

介護は、心身ともに大きな負担を伴います。ご自身の心と体を大切にし、ストレスを溜め込まないようにすることが重要です。具体的には、以下のことを心がけましょう。

• 休息： 十分な睡眠を取り、休息時間を確保しましょう。
• 気分転換： 趣味を楽しんだり、外出したりして、気分転換を図りましょう。
• 相談： 家族や友人、専門家などに相談し、悩みを共有しましょう。
• サポート： 地域の介護サービスや、家族会などを利用し、サポートを受けましょう。
• 専門家の活用： 精神科医や、カウンセラーなどの専門家に相談し、心のケアを受けましょう。

5.2 情報収集と学習

精神障害と認知症に関する情報を収集し、理解を深めることは、介護の質を向上させるために不可欠です。具体的には、以下のことを行いましょう。

• 書籍やインターネット： 専門書や、信頼できるウェブサイトから情報を収集しましょう。
• セミナーや講演会： 専門家によるセミナーや講演会に参加し、知識を深めましょう。
• 家族会： 同じような悩みを持つ家族が集まる家族会に参加し、情報交換や交流を行いましょう。
• 専門家への相談： 精神科医や、ケアマネジャーなどの専門家に相談し、アドバイスを受けましょう。

5.3 家族間の協力体制

介護は、一人で抱え込まず、家族間で協力し合うことが重要です。役割分担を決め、互いに助け合いながら、介護を行いましょう。また、定期的に話し合いの場を設け、現状の課題や、今後の対応について話し合いましょう。

6. まとめ：より良い選択のために

精神障害と認知症を併発している高齢者の介護は、困難を伴いますが、適切な対応と支援があれば、より良い生活を送ることが可能です。この記事で解説した内容を参考に、ご家族で話し合い、最善の選択をしてください。

以下に、今回の内容をまとめます。

• 現状の理解： 精神障害と認知症を併発している高齢者の特徴を理解し、現状を正確に把握しましょう。
• 介護施設の選択肢： 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、認知症対応型共同生活介護など、様々な介護施設の中から、本人の状態に合った施設を選びましょう。
• 施設選びのポイント： 本人の状態に合わせたケア体制、施設の雰囲気と環境、費用とサービス内容、家族との連携、事前の情報収集と相談などを考慮して、施設を選びましょう。
• 精神科病院への入院と、その後の支援： 入院の目的と、退院後の支援について理解し、適切な支援を受けましょう。
• 家族ができること： 家族自身の心のケアと、情報収集を行い、家族間の協力体制を築きましょう。

ご家族の皆様が、安心して介護生活を送れるよう、心から応援しています。

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