介護記録の書き方：看護師が抱える疑問と、その解決策

この記事では、介護記録の書き方に関する疑問に焦点を当て、特に看護師としてグループホームで勤務されている方の悩みに寄り添いながら、その解決策を探ります。介護記録における尊敬語の使用は、看護記録とは異なるため、多くの看護師が違和感を覚えるポイントです。この記事では、なぜ介護記録で尊敬語が用いられるのか、その背景にある意図や目的を解説し、より効果的な記録作成のための具体的なアドバイスを提供します。

介護記録の書き方について質問したいと思います。

私は看護職で、2010年の秋からグループホームで勤務しています。

介護記録の書き方として尊敬語で書くのは介護の世界では常識なのでしょうか？

看護記録は尊敬語で書くことはないので、少々違和感を感じています。

尊敬語がだめとかではなく、何故尊敬語で書くのか単純に疑問です。

（ホーム長に聞いても、明確な回答ではないので・・・）

介護記録を開示しても良いように尊敬語での記載なのか、サービスという思いからの尊敬語での記載なのか、またはもっと違う理由からか・・・。ご回答頂けたら幸いです。

なぜ介護記録は尊敬語で書かれるのか？

介護記録における尊敬語の使用は、多くの看護師にとって馴染みのないものであり、疑問を感じるのも当然です。しかし、そこには介護ならではの重要な目的と理由が存在します。以下に、主な理由を解説します。

1. 利用者への敬意と尊厳の表現

介護記録で尊敬語を使用する最も大きな理由は、利用者の方々への敬意と尊厳を示すためです。介護の現場では、利用者の自立支援を促し、その人らしい生活を尊重することが重要視されます。尊敬語を用いることで、利用者の人格を尊重し、丁寧なケアを提供しようとする姿勢を表現します。これは、単なる記録の形式にとどまらず、介護の理念を体現する手段の一つと言えるでしょう。

2. サービス提供の意識の明確化

介護は、利用者に対してサービスを提供するという側面を持っています。尊敬語を使用することで、提供するサービスの質を高め、利用者に満足してもらうという意識を明確にする効果があります。これは、介護従事者がプロフェッショナルとしての自覚を持ち、質の高いケアを提供するための重要な要素です。

3. 記録の客観性と正確性の確保

介護記録は、利用者の状態やケアの内容を正確に伝えるための重要なツールです。尊敬語を使用することで、記録者の主観的な感情を排し、客観的な事実を記述しようとする意識が働きます。これにより、記録の信頼性が高まり、多職種連携や情報共有がスムーズに行われるようになります。

4. 記録の開示と法的側面への対応

介護記録は、利用者やその家族、関係機関に対して開示されることがあります。尊敬語を使用することで、記録がより丁寧で、誤解を招きにくいものになります。また、法的紛争が発生した場合にも、記録の信頼性を高める効果があります。

看護師が介護記録の尊敬語に違和感を覚える理由

看護記録と介護記録では、記録の目的や対象、そして記録者が持つ役割が異なります。看護記録は、主に医療的な視点から患者の状態を記録し、治療やケアの継続性を確保することを目的としています。一方、介護記録は、利用者の生活全体をサポートし、その人らしい生活を支援することを目的としています。この違いが、記録の形式や表現方法に影響を与え、看護師が介護記録の尊敬語に違和感を覚える原因となっています。

具体的には、以下の点が挙げられます。

• 記録の対象の違い: 看護記録は、病気や治療に焦点を当てることが多く、医学的な専門用語や客観的な表現が用いられます。介護記録は、利用者の日常生活全般を記録するため、よりパーソナルな情報や感情的な表現が含まれることがあります。
• 記録者の役割の違い: 看護師は、医療的な専門家として、患者の状態を客観的に評価し、記録します。介護士は、利用者の生活を支えるパートナーとして、寄り添い、共感しながら記録します。
• 記録の目的の違い: 看護記録は、医療チーム内での情報共有や、治療効果の評価を目的とします。介護記録は、多職種連携や、利用者のQOL（生活の質）の向上を目的とします。

介護記録の書き方のポイント

介護記録を効果的に書くためには、以下のポイントを意識することが重要です。

1. 丁寧な言葉遣いを心がける

尊敬語や謙譲語を適切に使用し、利用者の名前には「様」を付けるなど、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。ただし、過度な表現は避け、簡潔で分かりやすい文章を心がけることも大切です。

2. 客観的な事実を記録する

記録は、主観的な意見や感情ではなく、客観的な事実に基づいて行いましょう。例えば、「○○様は、朝食を完食されました」のように、具体的な行動や状態を記述します。

3. 利用者の状態を具体的に記録する

利用者の心身の状態や、日常生活における変化を具体的に記録しましょう。例えば、「○○様は、今日はいつもより笑顔が多く、楽しそうに会話をされていました」のように、観察した内容を詳細に記述します。

4. 必要な情報を網羅する

記録には、利用者の基本情報、健康状態、生活習慣、食事、排泄、入浴、睡眠、服薬、レクリエーションなど、必要な情報を網羅しましょう。また、緊急時の対応や、家族との連絡内容なども記録しておくと、後々の情報共有に役立ちます。

5. 簡潔で分かりやすい文章を心がける

長文や難解な表現は避け、簡潔で分かりやすい文章を心がけましょう。専門用語を使用する場合は、誰にでも理解できるように説明を加えましょう。

6. 継続的な記録を心がける

介護記録は、継続的に記録することが重要です。日々の記録を積み重ねることで、利用者の状態の変化を把握しやすくなり、より適切なケアを提供できるようになります。

介護記録の書き方の例文

以下に、介護記録の書き方の例文をいくつかご紹介します。これらの例文を参考に、ご自身の記録作成に役立ててください。

例文1：食事に関する記録

日付：2024年5月15日（水）
時間：12:00
利用者：山田太郎様
記録者：〇〇　〇〇
記録内容：昼食は、ご飯、味噌汁、焼き魚、野菜の煮物でした。山田様は、ご飯をほぼ完食され、味噌汁も全て飲み干されました。焼き魚は少し残されましたが、「美味しい」とおっしゃっていました。食後には、「ごちそうさま」と笑顔で話されました。

例文2：排泄に関する記録

日付：2024年5月15日（水）
時間：10:00
利用者：田中花子様
記録者：〇〇　〇〇
記録内容：田中様は、自力でトイレに行かれ、排尿されました。排尿量は普段と変わらず、色は薄い黄色でした。排尿後、「すっきりしたわ」と話されていました。

例文3：レクリエーションに関する記録

日付：2024年5月15日（水）
時間：14:00
利用者：鈴木一郎様
記録者：〇〇　〇〇
記録内容：本日のレクリエーションは、歌唱と脳トレを行いました。鈴木様は、「ふるさと」を大きな声で歌われ、とても楽しそうでした。脳トレでは、計算問題を積極的に解き、正解すると笑顔を見せていました。

介護記録の質を高めるためのヒント

介護記録の質を高めるためには、以下の点も意識しましょう。

1. 記録の目的を明確にする

記録を作成する前に、その目的を明確にしましょう。例えば、「利用者の状態を把握するため」「多職種との情報共有のため」「ケアプランの見直しのため」など、目的を意識することで、必要な情報を漏れなく記録することができます。

2. 定期的な振り返りを行う

定期的に自身の記録を見直し、改善点を見つけましょう。他の介護士の記録を参考にしたり、上司や同僚にアドバイスを求めたりすることも有効です。

3. 研修や勉強会に参加する

介護記録に関する研修や勉強会に参加し、知識やスキルを向上させましょう。記録の書き方だけでなく、介護の理念や倫理観についても学ぶことで、より質の高い記録を作成できるようになります。

4. 記録ツールを活用する

近年では、電子カルテや記録支援システムなど、記録を効率化するためのツールが普及しています。これらのツールを活用することで、記録にかかる時間を短縮し、より多くの情報を記録することができます。

5. 多職種連携を意識する

介護記録は、多職種連携の重要なツールです。医師、看護師、理学療法士、作業療法士など、様々な職種と情報を共有し、連携を深めることで、より質の高いケアを提供することができます。

介護記録は、単なる事務的な作業ではなく、利用者の生活を支えるための重要な手段です。記録を通じて、利用者の状態を深く理解し、適切なケアを提供することで、利用者のQOL（生活の質）を向上させることができます。

まとめ：介護記録の書き方の疑問を解消し、より良いケアを提供するために

この記事では、介護記録の書き方に関する疑問を解消し、看護師の皆様がより効果的に記録を作成できるよう、様々な情報を提供しました。介護記録における尊敬語の使用は、利用者の尊厳を尊重し、質の高いケアを提供するための重要な手段です。記録の目的を理解し、丁寧な言葉遣いや客観的な記述を心がけることで、より質の高い記録を作成することができます。

介護記録は、単なる事務的な作業ではなく、利用者の生活を支えるための重要な手段です。記録を通じて、利用者の状態を深く理解し、適切なケアを提供することで、利用者のQOL（生活の質）を向上させることができます。この記事が、皆様の介護記録作成の一助となれば幸いです。

もし、介護記録の書き方について、さらに疑問や悩みがある場合は、積極的に情報収集を行い、専門家や同僚に相談することをお勧めします。また、継続的な学習と実践を通じて、記録スキルを向上させ、より良いケアを提供できるよう努めてください。

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