看護実習で悩むあなたへ：倫理問題の見つけ方と、現場で役立つ思考法

この記事では、看護実習中のあなたが直面する倫理問題への悩みに対し、具体的な解決策と、現場で役立つ思考法を提示します。倫理問題の特定が難しいと感じているあなたも、この記事を読めば、問題の本質を見抜き、自信を持って実習に臨めるようになるでしょう。

現在、看護実習中なのですが、その実習中のなかで倫理問題を一つあげ、なぜそう思ったのか、何を話し合いたいのかを決めて話し合わなくてはなりません。

倫理とはなにかを勉強はしたのですが、実際の現場で倫理問題を見つけるとなると難しく、どういうもの(こと)が倫理問題なのかわからなくなってしまい、悩んでいます。

オーソドックスなものを言えば『患者が拘束されている』だとかだと思いますが、現在そのような患者はおらず、倫理問題が見つからないです。

倫理問題は他にどんなことがあるのか教えていただきたいです。

看護実習は、知識と技術を習得するだけでなく、倫理観を養い、問題解決能力を磨く貴重な機会です。しかし、倫理問題の特定は、経験の少ない実習生にとってハードルが高いと感じるかもしれません。この記事では、倫理問題を見つけるための具体的なヒント、現場で役立つ思考法、そして、より深く学びたいあなたへの情報を提供します。

1. 倫理問題とは何か？ 基本的な理解を深める

倫理問題とは、人間の行動や判断が、道徳的規範や価値観に反する場合に生じる問題のことです。看護の現場では、患者さんの権利、尊厳、安全を守るために、倫理的な視点を持つことが不可欠です。倫理問題は、患者さんと医療従事者の関係性、治療方針の決定、情報管理など、多岐にわたる場面で発生する可能性があります。

1-1. 倫理的原則の基本

看護倫理には、いくつかの基本的な原則があります。これらの原則を理解することで、倫理問題を見つけやすくなります。

• 自律性（Autonomy）: 患者さんの自己決定権を尊重し、自分の意思で治療やケアを選択できるように支援すること。
• 善行（Beneficence）: 患者さんの利益を最大化し、最善のケアを提供すること。
• 無危害性（Non-maleficence）: 患者さんに害を与えないこと。治療に伴うリスクを最小限に抑えること。
• 正義（Justice）: 公平な医療を提供し、資源を適切に配分すること。

1-2. 倫理問題の具体例

倫理問題は、上記のような原則に反する場合に発生します。以下に、看護現場でよく見られる倫理問題の具体例をいくつか挙げます。

• インフォームドコンセントの欠如: 患者さんに十分な情報を提供せず、同意を得ずに治療を行うこと。
• プライバシーの侵害: 患者さんの個人情報を許可なく第三者に漏らすこと。
• 尊厳の侵害: 患者さんの人格を尊重しない言動や、身体的・精神的な虐待。
• 資源配分の不公平: 特定の患者に不当に多くの資源を割り当てること。
• 過剰な医療行為: 必要以上の検査や治療を行い、患者さんの負担を増やすこと。

2. 看護実習で倫理問題を見つけるためのステップ

倫理問題を見つけるためには、以下のステップで考えてみましょう。

2-1. 観察と記録

まずは、患者さんのケアの様子を注意深く観察し、記録することから始めましょう。患者さんの言動、表情、周囲とのコミュニケーション、医療チームの対応などを詳細に記録します。記録は、客観的な視点を持つために重要です。

2-2. 疑問を持つ

観察を通して、少しでも「おかしいな」「なぜだろう」と感じたら、その疑問を大切にしましょう。例えば、「なぜこの患者さんは、この治療を受けているのだろうか？」「患者さんは、治療内容について十分に理解しているのだろうか？」といった疑問を持つことが、倫理問題発見の第一歩です。

2-3. 倫理的原則との照らし合わせ

疑問に思った点について、先述した倫理的原則（自律性、善行、無危害性、正義）に照らし合わせてみましょう。例えば、患者さんの自己決定権が尊重されているか、患者さんの利益が最大化されているか、患者さんに不必要なリスクがないか、公平なケアが提供されているか、などを検討します。

2-4. チームとの話し合い

一人で悩まず、指導者や他の実習生、看護師など、チームで話し合うことが重要です。様々な視点から意見を聞くことで、新たな発見があるかもしれません。また、自分の考えを整理し、客観的に評価する機会にもなります。

3. 倫理問題の具体例と、その解決策

具体的な事例を通して、倫理問題の特定と解決策を考えてみましょう。

3-1. 事例1：インフォームドコンセントの不足

状況：認知症の高齢患者Aさんは、手術を受けることになりました。しかし、Aさんは認知機能が低下しており、手術の内容やリスクについて十分に理解することが難しい状況です。医師は、家族に説明し同意を得ましたが、Aさん本人への説明は十分ではありませんでした。

倫理問題：患者の自律性の侵害。患者本人が、自分の治療について理解し、意思決定する権利が尊重されていない。

解決策：

• Aさんの理解度に合わせて、分かりやすい言葉で手術の内容を説明する。
• 家族だけでなく、Aさん本人の意向も確認する。
• 必要であれば、専門家（認知症ケア専門医など）の意見を聞く。
• 患者さんの意思決定を支援するためのツール（絵や写真など）を活用する。

3-2. 事例2：プライバシーの侵害

状況：看護師Bさんは、同僚との会話の中で、患者Cさんの病状やプライベートな情報を、他の患者の前で話してしまいました。

倫理問題：患者のプライバシー侵害。患者の個人情報が、許可なく第三者に漏洩された。

解決策：

• 患者の個人情報は、厳重に管理し、許可なく第三者に漏らさない。
• 患者の情報を話す際は、個室やプライベートな空間で行う。
• 患者の同意を得ずに、写真や動画を撮影しない。
• 医療従事者全員が、プライバシー保護の重要性を認識し、徹底する。

3-3. 事例3：身体拘束

状況：夜間に徘徊する傾向のある患者Dさんを、転倒防止のためにベッドに拘束しました。患者Dさんは、拘束されることに強い抵抗を示しています。

倫理問題：患者の自律性、尊厳の侵害。身体的自由を制限し、患者の尊厳を傷つけている。

解決策：

• 身体拘束は、緊急時や他の方法では安全を確保できない場合に限定する。
• 身体拘束を行う前に、代替案を検討する（環境調整、見守り、家族の協力など）。
• 身体拘束を行う場合は、患者本人と家族に十分な説明を行い、同意を得る。
• 身体拘束中は、定期的に患者の状態を観察し、拘束解除の可能性を検討する。

4. 倫理問題に関する学びを深めるために

倫理問題について、さらに深く学びたいというあなたのために、役立つ情報源を紹介します。

4-1. 参考書籍

• 看護倫理に関する教科書：看護倫理の基礎知識や、具体的な事例について学ぶことができます。
• 倫理的思考力を高めるための書籍：倫理的ジレンマへの対応や、問題解決能力を向上させるためのヒントが得られます。

4-2. 関連団体・ウェブサイト

• 日本看護倫理学会：看護倫理に関する研究や、情報発信を行っています。
• 厚生労働省のウェブサイト：医療に関する倫理的なガイドラインや、関連情報が掲載されています。

4-3. 専門家への相談

倫理問題について、一人で悩まず、専門家に相談することも有効です。看護師長や、倫理コンサルタント、医療倫理専門家などに相談することで、客観的なアドバイスや、具体的な解決策を得ることができます。

5. 実習を通して倫理観を育むために

看護実習は、倫理観を育むための絶好の機会です。積極的に学び、実践することで、より良い看護師を目指しましょう。

5-1. 振り返りの重要性

実習後には、必ず振り返りを行いましょう。良かった点、改善点、疑問に思ったことなどを記録し、指導者や同僚と共有することで、学びを深めることができます。

5-2. 継続的な学習

倫理問題は、常に変化し続けています。最新の情報を収集し、継続的に学習することで、知識をアップデートし、倫理的思考力を高めることができます。

5-3. 自己研鑽

自己研鑽も重要です。倫理に関するセミナーや研修に参加したり、関連書籍を読んだりすることで、自己成長を促すことができます。

6. まとめ：倫理問題への向き合い方

看護実習における倫理問題は、一見難しく感じるかもしれませんが、基本的な原則と、問題解決のステップを理解することで、必ず乗り越えることができます。観察、疑問、チームとの話し合い、そして継続的な学習を通して、倫理的思考力を高め、患者さんの権利と尊厳を守る看護師を目指しましょう。

この記事が、あなたの看護実習の一助となり、倫理的な問題に自信を持って向き合えるようになることを願っています。

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