介護施設と病院での拘束：あなたとご家族を守るための選択肢を徹底解説

この記事では、ご家族の介護に関する深刻な問題、特に認知症の高齢者の身体拘束について、介護の専門家としての視点から深く掘り下げていきます。今回の相談内容は、85歳のお母様がアルツハイマー型認知症で入院されており、病院での身体拘束と今後の介護について、多くの疑問と不安を抱えていらっしゃるというものです。病院での対応は適切なのか、このまま拘束が続くのか、施設入所は可能なのか、費用面での問題など、様々な課題に直面している状況です。この記事では、これらの問題に対して、具体的な解決策と、ご家族がより良い選択をするための情報を提供します。

85歳母はアルツハイマーで入院してます。しかし、話している相手が誰か分からなくなってきております。相手が返事しないと叩いてしまいます。しかし、体重は３５キロしかないので怪我などはしないのですが、病院としては事故予防として昼は車椅子に拘束し、夜はベットに拘束しており２４時間拘束されてます。ケアマネジャーはこのままで良いという考えです。

質問① 介護事業所だと問題でしょうが病院では医師の指示なので問題ないとの事ですが本当にそうなのでしょうか？

質問② このまま、死ぬまで拘束され続けるのでしょうか。暴力があるため特養・グループホームも断られます。２４時間ヘルパーは高額のため払えません。よろしくお願いします。

1. 病院での身体拘束：法的・倫理的な側面

ご質問の核心は、病院での身体拘束が適切かどうか、そしてそれがいつまで続くのか、という点にあります。まず、医療機関における身体拘束は、患者の安全を守るために行われる場合がありますが、同時に、患者の人権を侵害する可能性も孕んでいます。身体拘束は、医師の指示に基づいて行われることが原則ですが、その指示は、患者の心身の状態、拘束の必要性、代替手段の検討など、様々な要素を考慮した上で、慎重に行われなければなりません。

1-1. 身体拘束の法的根拠

医療機関での身体拘束は、医療関連法規に基づいて行われます。具体的には、以下の法律が関連します。

• 医療法： 医療機関の管理義務を定めており、患者の安全確保のために必要な措置を講じることを求めています。
• 精神保健福祉法： 精神疾患を持つ患者に対する身体拘束の要件を定めています。
• 高齢者虐待防止法： 高齢者に対する身体拘束が虐待にあたる場合があることを示唆しています。

これらの法律に基づき、身体拘束は、以下の条件を満たす場合にのみ許容されます。

• 緊急性： 患者本人または周囲の人の生命または身体に危険が及ぶ可能性が切迫していること。
• 非代替性： 他の安全確保のための手段（例：見守り、環境調整、薬物療法など）を試みても、危険を回避できないこと。
• 一時性： 身体拘束は、あくまで一時的な措置であり、可能な限り早期に解除されるべきであること。
• 記録： 身体拘束の必要性、方法、時間、解除までの経過などを詳細に記録すること。

1-2. 身体拘束に対する倫理的配慮

身体拘束は、患者の尊厳を損なう可能性があるため、倫理的な観点からも慎重な検討が必要です。医療従事者は、患者の意思を尊重し、可能な限り自由な生活を支援する義務があります。身体拘束を行う際には、患者本人や家族への十分な説明と同意を得ることが重要です。また、身体拘束の目的、方法、期間、解除の見通しなどについて、明確に説明し、理解を得る努力をしなければなりません。

2. 病院と介護事業所の違い：身体拘束の考え方

ご質問にあるように、病院と介護事業所では、身体拘束に対する考え方が異なる場合があります。これは、それぞれの施設の目的と、提供するサービスの性質が異なるためです。

2-1. 病院の役割と身体拘束

病院は、主に病気の治療を目的としています。患者の容態が急変した場合や、医療処置が必要な場合には、身体拘束が行われることがあります。しかし、身体拘束は、あくまで治療を円滑に進めるため、または患者の安全を守るための手段であり、長期的な身体拘束は、原則として避けられるべきです。病院では、医師の指示に基づいて身体拘束が行われますが、その指示は、前述の法的・倫理的な要件を満たしている必要があります。

2-2. 介護事業所の役割と身体拘束

介護事業所は、高齢者の日常生活を支援することを目的としています。身体拘束は、原則として禁止されていますが、例外的に、本人の安全を確保するために、やむを得ず行われる場合があります。介護事業所では、身体拘束を行う際には、以下の手順を踏む必要があります。

• 身体拘束の必要性の検討： 身体拘束以外の方法（例：環境調整、見守り、家族との連携など）を検討し、それでも安全が確保できない場合に、身体拘束を検討します。
• 家族への説明と同意： 身体拘束の目的、方法、期間、解除の見通しについて、家族に十分な説明を行い、同意を得ます。
• 記録： 身体拘束の必要性、方法、時間、解除までの経過などを詳細に記録します。
• 委員会での検討： 身体拘束を行う場合は、施設内の委員会で検討し、妥当性を評価します。

介護事業所での身体拘束は、非常に慎重に行われ、その必要性は定期的に見直されます。

3. 身体拘束からの脱却：具体的な方法

お母様の身体拘束を解除するためには、様々な方法を検討し、病院や関係者と協力して、より良いケアプランを模索する必要があります。

3-1. 病院との連携

まず、病院の医師、看護師、ケアマネジャーと密接に連携し、身体拘束の現状と、その必要性について話し合うことが重要です。以下の点を中心に話し合いましょう。

• 身体拘束の目的： なぜ身体拘束が必要なのか、その具体的な理由を確認します。
• 代替手段の検討： 身体拘束以外の安全確保の方法（例：見守り、環境調整、薬物療法など）がないか、検討します。
• 身体拘束の期間： 身体拘束はいつまで続くのか、解除の見通しを確認します。
• ケアプランの見直し： 身体拘束を解除するために、どのようなケアプランが必要か、一緒に検討します。

必要に応じて、セカンドオピニオンを求めることも検討しましょう。他の医師の意見を聞くことで、より客観的な判断を得ることができます。

3-2. 環境調整

環境調整は、身体拘束を減らすための有効な手段です。お母様の置かれている環境を、安全で安心できるものに整えることで、身体拘束の必要性を減らすことができます。具体的な環境調整の例としては、以下のようなものがあります。

• 転倒防止： ベッドの高さを調整し、転落防止用の柵を設置する。
• 徘徊対策： 部屋の出入り口にセンサーを設置する、または、見守りカメラを設置する。
• 暴力行為への対応： 叩いても怪我をしないようなクッション材を使用する、または、落ち着けるような環境を整える。
• 認知症対応： 部屋を明るくし、見慣れたものを配置する。

3-3. 専門家の活用

専門家の意見を聞くことも、身体拘束からの脱却に役立ちます。以下の専門家への相談を検討しましょう。

• 認知症専門医： 認知症の進行度合いや、行動・心理症状（BPSD）に対する適切な治療法について相談します。
• 精神科医： 精神的な安定を促す薬物療法について相談します。
• 理学療法士・作業療法士： 身体機能の維持・向上、または、日常生活動作の改善のためのリハビリテーションについて相談します。
• 介護福祉士： 介護に関する専門的な知識や技術、具体的なアドバイスを受けられます。
• ケアマネジャー： ケアプランの見直しや、介護保険サービスの利用について相談します。

3-4. 介護保険サービスの活用

介護保険サービスを積極的に活用することで、ご家族の負担を軽減し、お母様の生活の質を向上させることができます。具体的なサービスとしては、以下のようなものがあります。

• 訪問介護（ヘルパー）： 自宅での生活を支援し、身体拘束を減らすためのサポートを受けられます。
• 訪問看護： 専門的な医療ケアを受けられます。
• 通所介護（デイサービス）： 日中の活動を支援し、ご家族の負担を軽減します。
• 短期入所生活介護（ショートステイ）： 短期間の入所により、ご家族の休息（レスパイトケア）を確保します。
• 福祉用具のレンタル： 介護用ベッド、車椅子などの福祉用具をレンタルし、生活の質を向上させます。

ケアマネジャーに相談し、お母様の状況に合った介護保険サービスを検討しましょう。

4. 施設入所：選択肢としての検討

現在の状況では、特養やグループホームへの入所が難しいとのことですが、状況によっては、他の選択肢を検討することも可能です。

4-1. グループホームの可能性

グループホームは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送る施設です。暴力行為がある場合でも、入所できる可能性はゼロではありません。グループホームによっては、認知症の専門知識を持ったスタッフが、入居者の状態に合わせて、柔軟に対応してくれる場合があります。グループホームを探す際には、以下の点を重視しましょう。

• 認知症ケアの専門性： 認知症ケアに関する研修を受けたスタッフがいるか。
• 受け入れ体制： 暴力行為のある入居者への対応経験があるか。
• 環境： 落ち着いて過ごせるような環境が整っているか。

いくつかのグループホームを見学し、スタッフと直接話をして、お母様に合った施設を探しましょう。

4-2. 介護付き有料老人ホームの検討

介護付き有料老人ホームは、24時間体制で介護サービスを提供する施設です。医療ケアが必要な場合にも対応できる施設もあります。介護付き有料老人ホームを探す際には、以下の点を重視しましょう。

• 医療体制： 医療機関との連携、または、施設内に医師や看護師がいるか。
• 介護体制： 介護職員の配置人数、夜間の対応体制など。
• 入居者の状態： 暴力行為のある入居者への対応経験があるか。

いくつかの介護付き有料老人ホームを見学し、スタッフと直接話をして、お母様に合った施設を探しましょう。

4-3. 24時間ヘルパーの検討

24時間ヘルパーは、高額な費用がかかりますが、自宅での生活を継続するための有力な選択肢となります。24時間ヘルパーを利用することで、身体拘束を解除し、お母様の生活の質を向上させることができます。24時間ヘルパーを利用する際には、以下の点を重視しましょう。

• 経験と専門性： 認知症ケアの経験豊富なヘルパーを選ぶ。
• 相性： お母様との相性が良いヘルパーを選ぶ。
• 費用： 複数の事業者の料金を比較検討する。

ケアマネジャーに相談し、信頼できるヘルパー事業者を紹介してもらいましょう。

5. 費用の問題：経済的な負担を軽減するために

介護にかかる費用は、ご家族にとって大きな負担となります。経済的な負担を軽減するために、以下の制度やサービスを活用しましょう。

5-1. 介護保険制度の活用

介護保険制度は、介護サービスの利用にかかる費用を軽減するための重要な制度です。介護保険サービスを利用する際には、以下の点に注意しましょう。

• 自己負担割合： 所得に応じて、自己負担割合が異なります。
• 利用限度額： 介護度に応じて、利用できるサービスの限度額が定められています。
• 高額介護サービス費： 一定以上の自己負担額を超えた場合、払い戻しを受けられます。

ケアマネジャーに相談し、介護保険制度を最大限に活用しましょう。

5-2. 医療費控除の活用

医療費控除は、医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に、所得税を軽減できる制度です。医療費控除を受けるためには、以下の点に注意しましょう。

• 対象となる医療費： 医師の治療費、入院費、薬代などが対象となります。
• 控除額： 1年間の医療費の総額から、10万円または総所得金額等の5%のいずれか低い方を差し引いた金額が控除対象となります。
• 確定申告： 医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。

領収書を保管し、確定申告を行いましょう。

5-3. その他の制度の活用

経済的な負担を軽減するための、その他の制度も検討しましょう。

• 高額療養費制度： 医療費が高額になった場合に、自己負担額を軽減する制度です。
• 生活保護： 経済的に困窮している場合に、生活費を支援する制度です。
• 成年後見制度： 判断能力が低下した方の財産管理や身上監護を支援する制度です。

これらの制度について、市区町村の窓口や、社会福祉協議会などに相談しましょう。

6. まとめ：より良いケアのために

お母様の身体拘束の問題は、非常に複雑で、様々な要素が絡み合っています。しかし、諦めずに、病院、専門家、介護保険サービス、そしてご家族が協力することで、より良いケアを実現することができます。今回の記事で提示した情報が、少しでもお役に立てれば幸いです。

重要なポイントを改めてまとめます。

• 病院との連携： 身体拘束の必要性、代替手段、解除の見通しについて、病院と密接に連携しましょう。
• 環境調整： 安全で安心できる環境を整え、身体拘束の必要性を減らしましょう。
• 専門家の活用： 認知症専門医、精神科医、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、ケアマネジャーなど、様々な専門家の意見を聞きましょう。
• 介護保険サービスの活用： 訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイなど、介護保険サービスを積極的に活用しましょう。
• 施設入所の検討： グループホーム、介護付き有料老人ホーム、24時間ヘルパーなど、様々な選択肢を検討しましょう。
• 費用の問題： 介護保険制度、医療費控除、その他の制度を活用し、経済的な負担を軽減しましょう。

ご家族だけで抱え込まず、周囲の人々と協力し、お母様にとって最善のケアを探求してください。そして、お母様が、少しでも穏やかで、安らかな日々を送れることを心から願っています。

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