患者さんの笑顔を守る！個人情報保護と地域医療サービスの両立術

この記事では、地域医療に貢献する19床の医院を経営されている先生が抱える、個人情報保護と患者サービスの両立に関するお悩みについて、具体的な解決策を提示します。患者さんの写真を撮って食堂に飾り、喜んでいただいているものの、個人情報保護の観点から問題がないか不安を感じているとのこと。このジレンマを解消し、患者さんの笑顔を守りながら、安心してサービスを提供できる方法を一緒に考えていきましょう。

個人情報保護法についてお尋ねします。

小さいながら、田舎で19床の医院を営んでいます。入院はほとんどが老人が多く、長期入院の方ばかりです。入院すると時間がとても長く、唯一大きな変化は毎回の食事内容くらいと、転院・死亡・老人介護施設への入所くらいです。そういう方に喜んで頂きたく、入院患者さん方の写真を写して患者食堂に貼り、楽しんでいただき、一週間後に記念にお渡ししています。

「写真なんか、本当に何年も撮っていなかったから、嬉しい」「県外にいる子供や孫に送ろうと思う」と喜んで頂いてきましたが、一職員が個人情報保護法に反することで、写真を撮る許可を患者の家族に念書を取るべきではないか、とか、外部に写真が漏れ入院していることが分かったらどうするのか・・・と言われました。これってサービスの一環で、患者さん方に喜んで頂いているのに、情報に違反する行為なのでしょうか？

1. 個人情報保護法の基本を理解する

個人情報保護法は、個人の権利利益を保護するために、個人情報の適正な取り扱いを定めた法律です。医療機関においては、患者さんの氏名、住所、病歴、検査結果など、非常に多くの個人情報を取り扱うため、特に注意が必要です。今回のケースでは、患者さんの写真が個人情報に該当するかどうかが重要なポイントとなります。

個人情報保護法における「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別できるもの（氏名、生年月日など）または他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別できるものを指します。写真も、写っている人物を特定できる場合は、個人情報に該当する可能性があります。

2. 患者さんの写真撮影における法的リスクと対策

患者さんの写真を撮影し、食堂に掲示したり、記念に渡したりする行為は、患者さんの肖像権に関わる可能性があります。肖像権とは、自分の容姿を無断で撮影されたり、公開されたりしない権利です。したがって、写真撮影を行う際には、患者さん本人の同意を得ることが非常に重要です。

2-1. 同意取得の方法

同意を得る方法は、口頭、書面、または電磁的な記録（メールなど）で行うことができます。書面で同意を得る場合は、以下の点を明確に記載した同意書を作成することをお勧めします。

• 写真の利用目的：食堂への掲示、記念品としての配布など、具体的に記載します。
• 写真の利用範囲：院内限定、または外部への公開の有無（例：広報誌への掲載など）を明記します。
• 写真の保存期間：写真の保管期間を明確にし、不要になった場合は適切に廃棄することを約束します。
• 同意の撤回：患者さんがいつでも同意を撤回できることを明記します。

同意書は、患者さん本人または法定代理人（未成年者の親権者など）に署名してもらうようにします。口頭での同意も有効ですが、後々のトラブルを避けるためにも、書面での記録を残しておくことが望ましいです。

2-2. 情報漏洩対策

写真が外部に漏洩するリスクを最小限に抑えるために、以下の対策を講じましょう。

• アクセス制限：写真データへのアクセス権限を、限られた職員にのみ付与します。
• セキュリティ対策：写真データを保存するサーバーやパソコンには、パスワード設定やウイルス対策ソフトの導入など、適切なセキュリティ対策を施します。
• 情報管理体制の構築：写真データの管理責任者を定め、定期的な情報セキュリティ教育を実施します。
• 外部委託先の選定：写真のプリントや加工を外部に委託する場合は、個人情報保護に関する契約を締結し、適切な管理体制が整っている業者を選定します。

2-3. 念書について

職員の方から「念書を取るべき」という意見が出たとのことですが、念書は、法的拘束力を持たせるためのものではなく、あくまでも同意を得た証拠として有効です。同意書を作成し、患者さんまたはその家族に署名してもらうことで、法的リスクを軽減できます。

3. 患者サービスと個人情報保護の両立

患者さんの喜びを大切にしながら、個人情報保護も徹底するためには、以下の点を意識しましょう。

3-1. 情報公開の範囲を限定する

写真の公開範囲を、院内の食堂に限定することで、外部への情報漏洩リスクを低減できます。また、写真に写る患者さんの氏名や病室番号などの個人情報を記載しないようにすることで、プライバシー保護を強化できます。

3-2. 患者さんの意向を尊重する

写真撮影前に、必ず患者さんに「写真撮影の目的」と「利用方法」を説明し、同意を得るようにします。写真撮影を希望しない患者さんには、無理強いしないようにしましょう。また、写真撮影後も、患者さんから「写真の公開を中止してほしい」という申し出があった場合は、速やかに対応するようにします。

3-3. 継続的な改善を行う

個人情報保護に関する法令やガイドラインは、常に変化しています。定期的に情報収集を行い、自院の個人情報保護体制を見直すようにしましょう。また、職員に対して、個人情報保護に関する研修を定期的に実施し、意識向上を図りましょう。

4. 成功事例から学ぶ

多くの医療機関が、患者さんのプライバシーを守りながら、質の高い医療サービスを提供しています。以下に、参考となる成功事例をいくつかご紹介します。

• 事例1：ある病院では、患者さんの写真撮影を行う際に、必ず同意書を取得し、写真の利用目的と範囲を明確にしています。また、写真データは厳重に管理され、外部への情報漏洩を防ぐための対策が講じられています。
• 事例2：別の病院では、患者さんの写真撮影に際して、患者さんの顔が特定できないように、ぼかしを入れたり、一部を隠したりするなどの工夫をしています。
• 事例3：ある介護施設では、入居者の写真撮影を行う前に、必ず家族に説明し、同意を得ています。また、写真の利用目的を明確にし、施設内での掲示や、家族への配布に限定しています。

これらの事例から、患者さんの個人情報を保護しながら、患者さんに喜んでいただけるサービスを提供することは可能であることがわかります。自院の状況に合わせて、これらの事例を参考に、最適な方法を検討しましょう。

5. まとめ：患者さんの笑顔を守るために

個人情報保護は、患者さんの権利を守るために不可欠です。しかし、患者さんの笑顔を大切にすることも、医療機関の大切な使命です。今回のケースでは、写真撮影を行う前に、患者さんの同意を得ること、写真の利用目的と範囲を明確にすること、情報漏洩対策を徹底することが重要です。これらの対策を講じることで、患者さんのプライバシーを守りながら、患者さんに喜んでいただけるサービスを提供することができます。

個人情報保護に関する法令やガイドラインは、常に変化しています。定期的に情報収集を行い、自院の個人情報保護体制を見直すようにしましょう。また、職員に対して、個人情報保護に関する研修を定期的に実施し、意識向上を図りましょう。患者さんの笑顔を守り、安心して医療サービスを提供できる体制を構築するために、継続的な努力を続けることが大切です。

今回のケースでは、個人情報保護法に配慮しながら、患者さんの喜びを両立させる方法について解説しました。しかし、個々の状況によって、最適な対策は異なります。専門家のアドバイスを参考に、自院に合った方法を検討することをお勧めします。

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