遺産相続の分配は法廷相続分通り？介護や絶縁は関係あるのかを徹底解説

この記事では、遺産相続における分配方法について、特に介護や絶縁といった具体的な状況がどのように影響するのかを掘り下げて解説します。多くの方が抱える疑問、例えば「遺産相続の調停や裁判で、必ず法廷相続分通りに分配されるのか？」「生前の介護や絶縁状態は、遺産の分配に影響するのか？」といった疑問に、法的根拠と具体的な事例を交えてお答えします。相続問題は複雑で、個々の状況によって結果が大きく異なるため、この記事を通じて、ご自身の状況に合わせた理解を深めていただければ幸いです。

遺産相続の調停・裁判を行うと必ずしも、法廷相続分に分配されるのでしょうか？ 例えば、生前に遺産所有者の介護をして面倒をみてた人には遺産の分配量が増えるとか。生前ろくに顔も見せず絶縁状態、葬式にも来ない人は分配量が減るとか。そうゆうのは関係ないのでしょうか？ 今相談している司法書士は戦後みな平等なので分配量は変わらないと言っています。本当なのでしょうか？

相続の基本：法定相続分とは

まず、相続の基本となる「法定相続分」について理解を深めましょう。法定相続分とは、民法で定められた、相続人が受け取ることができる遺産の割合のことです。配偶者や子供、親、兄弟姉妹など、相続人の組み合わせによって、その割合は異なります。例えば、配偶者と子供がいる場合は、配偶者が1/2、子供が1/2を相続するのが基本です。

しかし、法定相続分はあくまで「目安」であり、必ずしもその通りに遺産が分配されるわけではありません。遺言書の有無、相続人同士の合意、そして裁判所の判断など、様々な要因によって分配は変動します。特に、今回の相談内容のように、生前の介護や絶縁といった事情は、遺産の分配に大きな影響を与える可能性があります。

生前の介護：寄与分と特別寄与料

生前に被相続人（亡くなった方）の介護をしていた場合、その貢献度に応じて遺産の分配が増える可能性があります。これは、民法で定められた「寄与分」という制度によるものです。寄与分とは、相続人が被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に、その貢献度に応じて相続分を増やすことができる制度です。

具体的には、以下のようなケースが寄与分として認められる可能性があります。

• 被相続人の介護：日常生活の世話、入浴介助、食事の準備など
• 被相続人の療養看護：通院の付き添い、服薬管理など
• 被相続人の財産管理：不動産の管理、預貯金の管理など

寄与分が認められるためには、相続人が無償で、かつ継続的に被相続人のために貢献していたことが重要です。貢献の内容や程度、期間などを具体的に証明する必要があります。寄与分が認められると、その貢献度に応じて遺産の分配が増額されます。

さらに、2019年の民法改正により、「特別寄与料」という制度も創設されました。これは、相続人ではない親族（例えば、長男の妻など）が、無償で被相続人の介護などを行った場合に、相続人に対して金銭の支払いを請求できる制度です。特別寄与料は、相続人ではない親族の貢献を評価し、相続人間での公平を図るためのものです。

事例紹介：

Aさんの場合、母親である被相続人の介護を長年行い、その結果、母親の財産の維持に大きく貢献しました。他の相続人との間で遺産分割協議がまとまらず、家庭裁判所に調停を申し立てた結果、Aさんの寄与分が認められ、法定相続分に加えて、介護に対する寄与分として遺産の20%を追加で取得することができました。

絶縁状態：相続放棄と遺留分

一方で、被相続人と相続人が絶縁状態にあった場合、遺産の分配が減る可能性もあります。ただし、これは必ずしも自動的に起こるわけではありません。主な影響としては、以下の2点が考えられます。

1. 相続放棄：被相続人と絶縁状態にあった相続人は、遺産の相続を放棄する選択肢があります。相続放棄をすると、その相続人は一切の遺産を受け取ることができなくなりますが、同時に被相続人の借金などの負債も引き継ぐ必要がなくなります。相続放棄は、原則として相続開始を知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。
2. 遺留分：遺留分とは、相続人に保障された、最低限の遺産取得分のことです。たとえ遺言書で「一切の遺産を渡さない」と書かれていたとしても、遺留分を侵害することはできません。ただし、被相続人が生前に相続人に対して虐待や重大な侮辱を行った場合、家庭裁判所は遺留分を剥奪する（相続権を失わせる）ことができます。

事例紹介：

Bさんの場合、父親である被相続人と長年絶縁状態にあり、生前に一度も連絡を取っていませんでした。父親が亡くなり、遺言書で「全ての財産を長女に相続させる」と指定されていたため、Bさんは弁護士に相談し、相続放棄の手続きを行いました。結果として、Bさんは遺産を一切受け取ることはありませんでしたが、父親の借金も引き継ぐ必要がなくなりました。

遺産分割の方法：遺言書、遺産分割協議、調停、審判

遺産分割は、以下のステップで進められます。

1. 遺言書の確認：被相続人が遺言書を作成していた場合、まずはその内容を確認します。遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って遺産分割が行われます。ただし、遺留分を侵害する遺言書は、無効となる可能性があります。
2. 相続人の確定：相続人となる人を確定します。配偶者、子供、親、兄弟姉妹など、民法で定められた順位に従って相続人が決定されます。
3. 遺産分割協議：相続人全員で、遺産の分割方法について話し合います。遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。合意が得られない場合は、次のステップに進みます。
4. 調停：家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停では、調停委員が相続人の間に入り、話し合いを促します。調停で合意に至れば、調停調書が作成され、それに従って遺産分割が行われます。
5. 審判：調停でも合意に至らない場合は、家庭裁判所が審判を行います。審判では、裁判官が様々な事情を考慮して、遺産の分割方法を決定します。

遺産分割の方法は、ケースバイケースで異なります。弁護士や司法書士などの専門家に相談し、適切な方法を選択することが重要です。

司法書士の見解について

相談者の方が仰るように、司法書士が「戦後みな平等なので分配量は変わらない」と説明した場合、それは必ずしも正確ではありません。司法書士は、相続に関する専門知識を持っていますが、その見解は、個々のケースの具体的な事情を考慮せずに、一般的な原則論を述べている可能性があります。遺産相続は、個別の事情によって結果が大きく異なるため、専門家であっても、安易に「分配量は変わらない」と断言することはできません。

今回の相談者のケースでは、生前の介護や絶縁状態といった事情があるため、司法書士の見解だけでなく、弁護士など、より専門性の高い専門家にも相談し、具体的なアドバイスを受けることをお勧めします。

専門家への相談の重要性

遺産相続の問題は、法律的な知識だけでなく、感情的な側面も複雑に絡み合っています。相続人同士の感情的な対立が激化することもあり、専門家のサポートなしに解決することは非常に困難です。専門家への相談は、以下の点で重要です。

• 法的アドバイス：相続に関する法的な知識と経験に基づいたアドバイスを受けることができます。
• 紛争解決：相続人同士の対立を解決するための交渉や調停をサポートしてくれます。
• 手続きの代行：遺産分割協議書の作成、相続放棄の手続きなど、複雑な手続きを代行してくれます。

相続問題に詳しい弁護士や司法書士に相談することで、ご自身の状況に最適な解決策を見つけることができます。無料相談を実施している事務所も多くありますので、積極的に活用しましょう。

まとめ：遺産相続の分配はケースバイケース

遺産相続における分配は、一概に「法廷相続分通り」とは限りません。生前の介護や絶縁状態など、様々な事情が遺産の分配に影響を与える可能性があります。寄与分や特別寄与料、相続放棄、遺留分など、関連する制度を理解し、ご自身の状況に合わせた適切な対応をとることが重要です。

相続問題は複雑で、専門的な知識が必要となる場合があります。弁護士や司法書士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。専門家のサポートを得ることで、円滑な遺産分割を実現し、相続人全員が納得できる解決を目指しましょう。

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