介護保険サービスの利用、本人の承諾はどこまで必要？ 専門家が教える、家族が抱えるジレンマと解決策

介護保険サービスの利用に関する疑問は、多くのご家族が直面する問題です。特に、認知症などにより本人の意思確認が難しい場合、どのようにサービスを利用すれば良いのか悩むことでしょう。この記事では、介護保険サービスの利用における本人の承諾の必要性、そして、ご家族が抱えるジレンマを解決するための具体的な方法を、専門家の視点から詳しく解説します。

介護保険サービスは、本人の承諾がないと利用できないのでしょうか？

先日、独居の実母に『要介護1』の認定がおりました。

次のような症状があります

1. 短期的な記憶力が落ちている
2. 身内に管理されることに激しい抵抗を示す
3. お金の管理や必要な申請などは出来ない
4. 服薬と栄養の管理が出来ない

月に2～3回程度、姉と訪問し、上記の『3』については、子供らが対応してます。本人の目の前でやると嫌がるので、私が母の気をそらしているうちに、姉が処理しているような感じです。

『4』に関しては、訪問看護もしくはヘルパーさんに来てもらい、指導や見守りしてもらえないものかと考えています。そこで地域包括センターの方にどんな事業者さんが良いか、姉が電話で相談をしました。姉曰く『保険介護サービスは、本人の同意を取ってからではないと利用出来ない』と、言われたそうです。

が、残念ながら、母は判断する能力が著しく落ちてるうえ、とにかく、子供らが提案したことには、すべて抵抗します。一応、介護サービス利用しようよ…と聞いてみたのですが、イヤと言われました。

介護保険サービスの利用に、本人の承諾って、どの程度必要なのでしょうか？今の状態で、子供らが、利用の明確な承諾を母からもらうのは、無理な気がしています。あと、承諾したとしても、次の日には忘れている気もする…。

上記は、介護が必要なご家族を持つ多くの方が抱える悩みです。本人の意思確認が難しい状況で、どのように介護サービスを利用すれば良いのか、具体的なステップと解決策を提示します。

1. 介護保険サービス利用における「本人の承諾」とは？

介護保険サービスの利用には、原則として本人の同意が必要です。これは、利用者の尊厳を守り、自己決定権を尊重するためです。しかし、認知症などにより判断能力が低下している場合は、この原則がそのまま適用されるわけではありません。

• 意思確認のレベル： サービス内容を理解し、選択できる程度の判断能力があれば、本人の同意が必要です。
• 判断能力が低下している場合： 家族や成年後見人などが、本人の意向を尊重しつつ、サービス利用の決定に関わることになります。

重要なのは、本人の意向を最大限尊重しつつ、適切なサービスを提供することです。本人の状態に合わせて、柔軟に対応することが求められます。

2. 介護保険サービス利用のステップ：本人の承諾が得られない場合の対応

本人の承諾が得られない場合でも、諦める必要はありません。以下のステップで、介護保険サービスの利用を進めることができます。

ステップ1：ケアマネジャーへの相談

まずは、担当のケアマネジャーに相談しましょう。ケアマネジャーは、介護保険サービスに関する専門家であり、個々の状況に合わせたアドバイスをしてくれます。

• 状況の説明： 本人の状態、これまでの経緯、そして、なぜ本人の承諾が得られないのかを具体的に伝えます。
• サービス提案： ケアマネジャーは、本人の状態に合わせた適切なサービスを提案してくれます。
• 家族との連携： ケアマネジャーは、家族との連携を図り、円滑なサービス利用をサポートします。

ステップ2：家族会議の開催

ケアマネジャーの提案に基づき、家族会議を開催し、サービス利用について話し合いましょう。本人の意向を尊重しつつ、最適な方法を検討します。

• 情報共有： ケアマネジャーから、サービスの具体的な内容やメリットについて説明を受けます。
• 意見交換： 家族間で、本人の状態や希望、そして、サービス利用に対する考えを共有します。
• 合意形成： 家族全員で、本人の最善の利益となるようなサービス利用について合意形成を図ります。

ステップ3：サービス利用の開始

家族会議での合意に基づき、サービス利用を開始します。本人の状態に合わせて、徐々にサービスを導入していくことも可能です。

• 説明と同意： サービス提供事業者から、サービス内容について説明を受け、本人に理解を求めます。
• 見守り： サービス利用開始後も、本人の様子を注意深く見守り、必要に応じてケアマネジャーに相談します。
• 定期的な見直し： 本人の状態に合わせて、サービスの利用内容を見直します。

3. 介護保険サービスの種類と、本人の状態に合わせた選び方

介護保険サービスには、さまざまな種類があります。本人の状態やニーズに合わせて、適切なサービスを選ぶことが重要です。

訪問サービス

• 訪問介護（ホームヘルプサービス）： 身体介護（食事、入浴、排泄などの介助）や生活援助（掃除、洗濯、買い物など）を行います。
• 訪問看護： 医療的なケア（健康状態の観察、服薬管理、褥瘡の処置など）を行います。
• 訪問リハビリテーション： 理学療法士や作業療法士が自宅を訪問し、リハビリテーションを行います。

ポイント： 短期的な記憶力の低下や服薬管理が難しい場合に、訪問看護やヘルパーによる服薬支援、生活援助が有効です。

通所サービス

• 通所介護（デイサービス）： 日帰りで施設に通い、食事、入浴、レクリエーション、機能訓練などを受けます。
• 通所リハビリテーション（デイケア）： 施設に通い、リハビリテーションを中心としたサービスを受けます。

ポイント： 日中の活動の場を確保し、社会的な交流を促すことで、認知機能の維持や改善に繋がります。

短期入所サービス

• 短期入所生活介護（ショートステイ）： 短期間、施設に入所し、食事、入浴、排泄などの介護を受けます。
• 短期入所療養介護（医療型ショートステイ）： 医療的なケアが必要な方が、短期間、施設に入所し、介護と医療を受けます。

ポイント： 家族の介護負担を軽減し、レスパイトケアとして利用できます。

その他のサービス

• 福祉用具の貸与・購入： 車椅子や歩行器などの福祉用具をレンタルしたり、購入したりできます。
• 住宅改修： 手すりの設置や段差の解消など、自宅のバリアフリー化を行います。

ポイント： 本人の自立を支援し、安全な生活環境を整えるために役立ちます。

4. 成功事例から学ぶ：本人の承諾を得られなくても介護サービスを円滑に利用するためのヒント

多くのご家族が、本人の承諾を得られない状況から、介護サービスを円滑に利用することに成功しています。以下に、そのためのヒントをご紹介します。

事例1：段階的なサービス導入

最初は、本人が抵抗感を示さないような、負担の少ないサービスから始めます。例えば、週に1回の訪問看護からスタートし、徐々に利用頻度を増やしていく方法です。本人がサービスに慣れ、安心感を持つことで、他のサービスの利用にも繋がりやすくなります。

事例2：本人の気持ちに寄り添うコミュニケーション

サービス利用を強要するのではなく、本人の気持ちに寄り添い、不安や抵抗感を理解しようと努めます。「何か困ったことはないですか？」「どんなことが嫌ですか？」など、本人の言葉に耳を傾け、共感を示すことが重要です。

事例3：第三者の意見を取り入れる

ケアマネジャーや医師など、専門家の意見を取り入れることで、客観的な視点からサービス利用の必要性を説明できます。第三者の意見は、本人にとっても受け入れやすくなる場合があります。

事例4：環境調整

本人が落ち着いて過ごせるような環境を整えることも重要です。例えば、好きな音楽を流したり、思い出の写真を飾ったりすることで、本人の不安を和らげることができます。

5. 介護保険サービス利用に関するよくある疑問と答え

介護保険サービスの利用に関して、多くの方が抱える疑問にお答えします。

Q1：本人の判断能力が低下している場合、家族だけでサービス利用を決定できますか？

A1：原則として、家族だけでサービス利用を決定することはできません。ケアマネジャーとの相談や、家族会議などを通じて、本人の意向を尊重しつつ、サービス利用を検討する必要があります。場合によっては、成年後見制度の利用も検討しましょう。

Q2：サービス利用中に、本人がサービスを拒否するようになった場合はどうすれば良いですか？

A2：まずは、本人の気持ちに寄り添い、拒否する理由を理解しようと努めましょう。ケアマネジャーに相談し、サービス内容の見直しや、本人の状態に合わせた対応策を検討します。場合によっては、サービス提供事業者の変更も検討しましょう。

Q3：介護保険サービスの利用料金はどのくらいですか？

A3：介護保険サービスの利用料金は、所得に応じて異なります。自己負担割合は、1割〜3割です。サービスの種類や利用時間によっても料金は異なりますので、ケアマネジャーに相談し、詳細を確認しましょう。

Q4：介護保険サービスを利用するには、どのような手続きが必要ですか？

A4：まずは、お住まいの市区町村の窓口で、介護保険の申請を行います。その後、認定調査が行われ、要介護度が決定されます。要介護度が決定したら、ケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成し、サービス利用を開始します。

6. 介護保険サービス利用をスムーズに進めるためのチェックリスト

介護保険サービスの利用をスムーズに進めるために、以下のチェックリストを活用しましょう。

• □ 本人の状態を正確に把握する： 認知症の進行度合い、身体的な状態、生活習慣などを把握しましょう。
• □ ケアマネジャーに相談する： 介護保険サービスに関する疑問や不安を、ケアマネジャーに相談しましょう。
• □ 家族会議を開催する： 家族間で、本人の状態や希望、サービス利用について話し合いましょう。
• □ サービス内容を理解する： サービスの種類、内容、利用料金などを理解しましょう。
• □ 本人の意向を尊重する： 本人の気持ちに寄り添い、不安や抵抗感を理解しましょう。
• □ サービス利用開始後も、定期的に見直す： 本人の状態に合わせて、サービスの利用内容を見直しましょう。
• □ 専門家のアドバイスを参考に、柔軟に対応する： 状況に応じて、ケアマネジャーや医師などの専門家のアドバイスを参考にしましょう。

7. まとめ：介護保険サービス利用は、家族と専門家の連携が鍵

介護保険サービスの利用は、本人の尊厳を守り、質の高い生活を支えるために不可欠です。本人の承諾が得られない場合でも、諦めることなく、ケアマネジャーや家族との連携を通じて、最適なサービスを見つけることができます。

介護保険サービスの利用は、決して一人で抱え込む問題ではありません。専門家のアドバイスを受けながら、家族一丸となって、本人の幸せを支えていきましょう。

“`