35年ぶりに知った父の死と97万円の遺産…どうすれば？相続放棄？それとも？

35年ほど前に生き別れた父が亡くなったと市役所から連絡がありました。父親は若年性認知症を患い、会社を解雇、その後知人を頼り県外へ。そこで入院し治療を行っており、一時退院したのですが、症状が悪化し、住んでいた市に相談の上、特別養護老人ホームへ入所し6年後の65歳で他界しました。父の入院手続きや、面倒をみてくださった方がお金の面でも色々援助して下さったみたいで、父の残した遺留金品をその方にお渡ししたいのですが、因みに通帳には97万円あるそうです。役所の方は、借金等の取り立てや通知など一切なかったとおっしゃってましたが、35年も離れて暮らしていましたので、過去の事が分かりません。最後お世話になったホームの方は、残されたお金があるのでそれで永代供養をすること、そして残った遺留金品をその方へのお礼を行いたいとお話くださいましたが、この場合、父の残したお金を使用し、納骨とお世話になった方へのお礼を行っても良いのでしょうか？相続放棄、時効援用他、何を選択するべきでしょうか？

この記事では、35年ぶりに父親の死を知らされた相談者の方のように、長年連絡を取っていなかった親族の相続問題に直面した際に、どのように対応すべきか、法的・倫理的な観点から解説します。特に、遺産の額が97万円と比較的少ない場合、相続手続きの煩雑さや費用を考慮すると、どのような選択肢が最適なのかを具体的にご紹介します。また、故人の介護や看取りに尽力された方への感謝の気持ちと、相続手続きの適切なバランスをどのように取るべきかについても、具体的な解決策を提示していきます。

1. 状況の整理と事実確認

まず、現状を整理し、必要な情報を収集しましょう。35年間連絡が取れていなかったとはいえ、法律上は相続人であることに変わりはありません。 重要なのは、以下の事実確認です。

• 父の死亡に関する正式な書類の入手： 死亡診断書、戸籍謄本など、父の死亡を証明する公的な書類を市役所から取得しましょう。これは相続手続きの第一歩です。
• 遺産の確認： 通帳の97万円以外にも、預貯金、不動産、有価証券など、その他の遺産がないか確認する必要があります。市役所や特別養護老人ホームに問い合わせてみましょう。 また、父の所有物（遺品）についても確認が必要です。
• 債務の有無の確認： 市役所が借金がないと言っているとはいえ、念のため、クレジットカード会社や金融機関に問い合わせて、父の債務がないか確認することをお勧めします。相続財産から債務を差し引いた額が、相続財産となります。
• 父の最後の6年間の生活状況の把握： 特別養護老人ホームに、父の生活費や医療費の負担状況、介護費用などを詳しく聞き取りましょう。 これにより、97万円の使い道について、より適切な判断ができます。
• お世話になった方との詳細な話し合い： お世話になった方と、具体的な援助内容、金額、今後の希望などを丁寧に話し合うことが重要です。 単なるお礼だけでなく、法的にも明確な契約や合意があれば、トラブルを防ぐことができます。

2. 相続手続きの種類とメリット・デメリット

相続手続きには、いくつかの選択肢があります。

• 単純承認： 遺産を全て相続することを承諾する手続きです。 メリットは手続きが比較的簡単で、遺産を自由に使えることです。デメリットは、父の債務も相続することになる点です。債務超過の場合は、相続放棄が賢明です。
• 限定承認： 遺産の範囲内で債務を支払うことを承諾する手続きです。 メリットは、債務超過のリスクを回避できることです。デメリットは、手続きがやや複雑になる点です。専門家のアドバイスが必要となる場合があります。
• 相続放棄： 遺産の相続を放棄する手続きです。メリットは、債務の相続を回避できることです。デメリットは、遺産を受け取ることができない点です。97万円という金額が少額であることを考えると、手続きの煩雑さを考慮すると、相続放棄も選択肢として十分あり得ます。

3. 97万円の使い道と倫理的な観点

97万円という金額は、永代供養費用と、お世話になった方への感謝の気持ちを表す費用を賄えるかどうか、慎重に検討する必要があります。

• 永代供養費用： お住まいの地域や寺院によって費用は大きく異なります。事前に複数の寺院に問い合わせて、費用を確認しましょう。 費用が高額な場合は、他の方法（例えば、散骨など）も検討する必要があるかもしれません。
• お世話になった方への感謝： 具体的な援助内容と金額を把握した上で、感謝の気持ちを表す金額を決めましょう。 現金だけでなく、感謝状や贈り物なども検討できます。 重要なのは、感謝の気持ちと、法的・倫理的な観点から問題がない範囲で、感謝の気持ちを伝えることです。
• 倫理的な観点： お世話になった方への感謝は重要ですが、相続手続きにおいては、法的な手続きを優先する必要があります。 感謝の気持ちを示す一方で、相続手続きを適切に行うことが重要です。 例えば、お世話になった方に遺産の一部を贈与する場合、贈与税の申告が必要となる場合があります。

4. 専門家への相談

相続手続きは複雑で、法律的な知識が必要となる場合があります。 特に、債務の有無や税金の問題など、不安な点がある場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談することを強くお勧めします。 専門家のアドバイスを受けることで、適切な手続きを行い、トラブルを回避することができます。 また、相続手続きの費用についても、事前に確認しておきましょう。

5. まとめ

35年ぶりに知った父の死と、残された遺産の問題は、感情的にも、手続き的にも複雑な状況です。 しかし、冷静に事実を確認し、相続手続きの種類を理解することで、適切な対応を取ることができます。 97万円という少額の遺産ではありますが、故人の冥福を祈り、お世話になった方への感謝を忘れずに、法的に正しい手続きを進めることが重要です。 迷う場合は、専門家への相談を検討しましょう。