重度の知的・身体障害者の方の将来と支援体制：親亡き後の生活と就労支援

重度の知的障害があり、意思疎通がうまく行かない。それに加えて身体的障害も持っていて自分一人で動けなかったりものが持てなかったりする。そんな方がいらっしゃった場合、ご両親が寿命等で亡くなり親戚にも身寄りがない。そんな状況になってしまったらどうなってしまうのでしょうか。なんとかして働ける場合はご両親がなくなる前に働ける施設に入れてしまうのでしょうが、働くこともできない場合、生活保護などを受けることができるのでしょうが、自身が動けなかったりすればその生活保護も使うことができない可能性だってある。そうなった場合、言い方は悪いですがのたれ死ぬしかないんですか？そういうケースはめったにないとは思いますがそのような方を介護される施設等があったりするのでしょうか。

この質問は、重度の知的・身体障害を持ち、ご家族の支援がない場合の将来について、非常に切実な不安を反映しています。結論から申し上げますと、「のたれ死ぬしかない」というわけではありません。しかし、ご本人とご家族にとって、適切な支援体制を構築することが非常に重要です。この記事では、重度の知的・身体障害を持つ方が、ご家族を失った後も安心して生活できるよう、具体的な支援策や施設、そして、ご家族が今からできる準備について解説します。 特に、ご本人とご家族が抱える不安や疑問を解消し、希望を見出せるよう、具体的な事例や専門家の意見も交えながら丁寧に説明していきます。

1. 親亡き後の生活：生活保護と障害福祉サービス

ご両親が亡くなった後、親族の支援がない場合、まず検討すべきは生活保護です。生活保護は、最低限の生活を保障するための制度であり、重度の知的・身体障害がある方は、その要件を満たす可能性が高いです。生活保護の申請は、お住まいの市区町村の福祉事務所で行います。申請にあたっては、ご本人の状況を正確に伝えることが重要です。意思疎通が困難な場合、医師の診断書や、ご家族からの状況説明などが役立ちます。また、障害年金の受給も検討しましょう。障害年金は、障害の程度に応じて支給される年金で、生活費の足しになります。

生活保護だけでは生活が困難な場合、または生活保護を受けるための手続きが難しい場合は、障害福祉サービスの利用が不可欠です。障害福祉サービスは、重度の知的・身体障害を持つ方が自立した生活を送れるよう、様々な支援を提供する制度です。具体的には、以下の様なサービスがあります。

• 身体介護：食事、排泄、入浴などの介助
• 生活援助：掃除、洗濯、調理などの家事援助
• 通所支援：デイサービスなどの利用
• 訪問介護：自宅への訪問による介護
• 重度訪問介護：高度な介護が必要な方の支援
• 相談支援：サービス利用計画の作成や相談窓口

これらのサービスは、利用者の状況に応じて、組み合わせたり、必要に応じて変更したりすることができます。福祉事務所の相談支援専門員と相談しながら、最適なサービスを選んでいきましょう。 また、成年後見制度の利用も検討しましょう。成年後見制度は、判断能力が不十分な方の財産管理や身上保護を行う制度です。ご本人の意思を尊重しながら、適切な支援を行うことができます。

2. 就労支援：可能性を探る

ご質問では、働くことができないという前提がありますが、可能性を探ることは重要です。重度の知的・身体障害があっても、就労継続支援を利用することで、働くことができるケースがあります。就労継続支援には、A型とB型があります。

• A型：一般企業並みの賃金が支払われ、雇用保険にも加入できます。
• B型：工賃が支払われ、雇用保険には加入できませんが、働く場を提供し、社会参加を促進します。

それぞれの事業所の特性やご本人の能力、適性に合わせて、最適な就労継続支援B型事業所を選択することが重要です。 また、近年では、障害者雇用を積極的に推進する企業も増えています。企業によっては、重度の障害者の方でも雇用できるよう、職場環境の整備や、個別の支援体制を整えているケースもあります。 就労支援機関やハローワークに相談することで、ご本人に合った就労の機会を見つけることができるかもしれません。

3. 適切な施設：グループホームや障害者支援施設

ご質問にあるような、重度の知的・身体障害者の方が安心して生活できる施設としては、グループホームや障害者支援施設などが挙げられます。グループホームは、少人数で共同生活を送る施設で、比較的家庭的な雰囲気の中で生活できます。障害者支援施設は、より高度な介護が必要な方のための施設です。 これらの施設は、それぞれ運営主体やサービス内容が異なりますので、ご本人の状況やニーズに合った施設を選ぶことが重要です。 福祉事務所や、地域包括支援センターなどに相談することで、適切な施設を紹介してもらえます。

施設を選ぶ際には、以下の点を考慮しましょう。

• 立地：ご自宅からの距離、交通の便
• サービス内容：必要な介護サービス、リハビリテーション、レクリエーションなど
• スタッフの質：経験、資格、対応など
• 利用者の雰囲気：他の利用者との相性など
• 費用：利用料、その他費用

4. ご家族ができる準備：早期からの相談と情報収集

ご両親が健在なうちから、これらの支援制度や施設について、積極的に情報収集し、福祉事務所などに相談することが重要です。 早いうちから準備することで、ご両親の負担を軽減し、ご本人の将来をより安心して設計することができます。 また、成年後見人を選任しておくことも重要です。成年後見人は、ご本人の意思を尊重しながら、財産管理や身上保護を行います。 ご両親が亡くなった後、スムーズに支援体制を構築するために、事前の準備が不可欠です。

さらに、遺言書の作成も検討しましょう。遺言書を作成することで、ご本人の財産や生活に関する意思を明確に伝え、相続手続きをスムーズに進めることができます。 また、信頼できる相談相手を見つけておくことも重要です。弁護士、社会福祉士、ケアマネージャーなど、専門家のアドバイスを受けることで、より適切な対応ができます。

5. 成功事例：地域社会の連携による支援

実際には、多くの地域で、重度の知的・身体障害を持つ方が、地域社会の連携によって支えられている事例があります。 例えば、ボランティア団体が定期的に訪問し、生活支援を行ったり、地域住民が協力して、外出支援を行ったりするケースがあります。 このような地域社会の支援は、ご本人の生活の質を高め、社会参加を促進する上で非常に重要です。

ある地域では、重度の知的障害と自閉スペクトラム症を持つ方が、地域住民の協力の下、就労継続支援B型事業所で働くことに成功し、自立した生活を送っています。 この事例は、地域社会の理解と協力が、障害を持つ方の自立を支える上でいかに重要であるかを示しています。 このような地域社会の連携を促進するためにも、ご家族や関係者は、積極的に地域社会とのつながりを築くことが重要です。

まとめ

重度の知的・身体障害を持つ方が、ご家族を失った後も安心して生活できるよう、生活保護、障害福祉サービス、就労支援、適切な施設の利用など、様々な支援策があります。「のたれ死ぬしかない」というわけではありません。しかし、ご本人とご家族にとって、適切な支援体制を構築することが非常に重要です。この記事で紹介した情報が、少しでもお役に立てれば幸いです。 早めの情報収集と専門家への相談が、未来への希望につながります。