相続放棄と空き家の有効活用：認知症の母と亡き父の家の処遇について

亡き父の家を処分したいと思っています。5年前に父が亡くなりましたが相続の手続きはしていません。母は、介護5の認知症で、会話不能、ADL全介助で施設に入居しています。子供は、長女と次女、孫は４人います。5年も空き家になっているので、賃貸か売却を考えています。手続きは難しいでしょうか？どんな方法がありますか？賃貸と売却と、どちらが良いでしょうか？よろしくお願いいたします。

ご質問ありがとうございます。ご高齢の母親の介護と、5年も空き家になっている実家の処分、大変お困りのことと思います。相続手続きが未了のまま、空き家の管理や処分を検討されている状況は、多くの相続問題を抱えるご家族にとって共通の悩みです。このケースでは、まず相続手続きを進めることが最優先です。その後、賃貸か売却かを検討することになります。以下、ステップごとに詳しく解説していきます。

１．相続手続きの開始：まずは相続放棄の検討から

5年前の相続手続きが未了であるため、まず相続の開始手続きを行う必要があります。相続開始とは、被相続人（亡くなった父）の死亡によって相続が発生した時点のことです。相続開始から3ヶ月以内に、相続放棄の手続きを行うことができます。相続放棄とは、相続財産（この場合は、ご実家とそれに付随する財産）を相続しない意思表示です。相続放棄は、家庭裁判所に申述することで行われます。

なぜ相続放棄が重要なのか？

• 債務の相続リスク回避：亡くなった父に借金など債務があった場合、相続人はその債務を相続することになります。相続放棄をすることで、この債務の相続を回避できます。
• 管理負担の軽減：空き家の維持管理には、固定資産税、修繕費など多額の費用がかかります。相続放棄を選択することで、これらの負担から解放されます。
• 手続きの簡素化：相続財産に債務がない場合でも、相続放棄は手続きを簡素化し、精神的な負担を軽減します。特に、ご質問者様のようにご高齢の母親の介護をされている状況では、相続手続きに時間を割くことが困難です。

相続放棄の申述には、家庭裁判所への書類提出が必要です。専門の司法書士に依頼することで、スムーズな手続きを進めることができます。相続放棄の期限を過ぎると、相続財産を承継したものとみなされるため、早めの対応が重要です。

２．相続手続き完了後の選択肢：賃貸か売却か

相続放棄を選択しない場合、もしくは相続放棄が認められなかった場合は、相続財産を承継することになります。この段階で、賃貸か売却かを検討します。それぞれのメリット・デメリットを比較検討してみましょう。

３．賃貸と売却の比較検討

賃貸のメリット：

• 安定した収入：家賃収入を得ることができるため、経済的な負担を軽減できます。
• 管理会社への委託：管理会社に管理を委託することで、手間を省くことができます。

賃貸のデメリット：

• 空室リスク：入居者が見つからない期間が生じる可能性があります。
• 修繕費用：修繕費用は、所有者負担となる場合が多いです。
• 管理費用：管理会社への委託費用が必要です。

売却のメリット：

• 一括収入：売却することで、まとまった資金を得ることができます。
• 管理負担の解消：売却後は、管理の必要がなくなります。

売却のデメリット：

• 価格交渉：希望価格で売却できない可能性があります。
• 売却にかかる費用：仲介手数料、登記費用など、売却にかかる費用が必要です。

どちらの方法が最適かは、ご家族の状況や経済状況、ご実家の状態などによって異なります。例えば、ご実家が老朽化している場合は、売却が現実的な選択肢となるでしょう。一方、比較的状態が良い場合は、賃貸による収入を得ることも検討できます。

４．具体的なステップとアドバイス

1. 専門家への相談：司法書士、税理士、不動産会社など、専門家への相談が不可欠です。相続手続き、賃貸・売却に関する手続き、税金対策など、専門家のアドバイスを受けることで、よりスムーズに、そして有利に進めることができます。
2. 相続財産の調査：相続財産の内容を把握する必要があります。不動産の評価、借金の有無などを確認しましょう。
3. 相続人全員の合意：相続手続きや、賃貸・売却の決定には、相続人全員の合意が必要です。家族間での話し合いを十分に行い、合意形成を目指しましょう。
4. 不動産の査定：売却を検討する場合は、不動産会社に査定を依頼し、適正な価格を把握しましょう。
5. 賃貸契約：賃貸を検討する場合は、信頼できる管理会社を選び、適切な賃貸契約を結びましょう。

５．成功事例

以前、認知症の母親と空き家の問題を抱えるご家族を支援した事例があります。相続放棄を選択することで、債務の相続リスクを回避し、空き家の管理負担から解放されました。その後、不動産会社と相談しながら、実家を売却し、母親の介護費用に充てることができました。ご家族は、精神的な負担を軽減し、安心して母親の介護に専念することができました。

６．まとめ

空き家の処分は、相続手続きと密接に関連しており、複雑な問題です。相続放棄の検討、賃貸・売却の比較検討、専門家への相談など、慎重に進める必要があります。ご家族で話し合い、専門家のアドバイスを受けながら、最適な解決策を見つけてください。焦らず、一つずつステップを踏んでいくことが重要です。

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