余命宣告を受けた父とアイスクリーム：医療従事者と家族の葛藤と最善の選択

余命短い老父のわがまま… 病院スタッフの方々からの指示の無視をどうするか… （長文で失礼致します） 昨年末にすでに「年を越せるかどうか…」 と医師に言われていた88歳の父が 病院スタッフの方々の力や自身の生命力もあってか、 奇跡的にまだ何とか命を長らえています。 しかしスタッフの方々へは丁寧でも 母や娘の私には昔から横暴な父、 「死んでも良いから家からアイスクリームを持って来て、 毎日小さじ3杯～5杯食べさせろ」と言います。 母は父に対して若い頃からずっとおびえていて、 今回も「かわいそうだからアイスクリームを持っていくつもり」 と申します。 本音はかわいそうというより、父に怒鳴られるのが怖いのでしょう。 しかし、父は本当なら言語聴覚士の方からしか 食べ物を口にしてはいけないことになっています。 誤嚥性肺炎を防ぐためです。 また、今までは平日は毎日言語聴覚士の方が 病院で用意したアイスクリームや介護食を スプーンで数杯頂いていましたが、 国の法律でそんなに手厚く出来なくなったとのことで、 4月からは言語聴覚士の方は週1回しか お見えにならないそうです。 「それではご本人が気の毒でしょうから」と 看護師さんの許可のもとジュースをスプーンで小さじ数杯 家族が口に入れても良いことになっていますが、 父は「ジュース以外にも欲しい。アイスが良い！」と。 実は同じ病棟で見舞いに来ている家族の方から 「皆、仕方なくてそっと患者の口にアイスくらいは 入れてあげているのよ」と聞きました。 また、以前日野原重明先生の本に 次のようなくだりがありました。 「患者の家族が大きな袋を持って来た。 何かモゾモゾしているな、と思った。 ああやはり、後になって中身は 亡くなりそうなその患者さんの愛犬だったと分かったが、 そのようなことだろうと察しながら スタッフたちは見て見ぬふりをした」 そこで娘としても大いに迷うのですが、 患者本人が「どうしても欲しい」と言うのなら 自己責任・家族責任のもと ある程度の規則破りは仕方ないのか…。 もともと今生きているのが不思議なくらいの 高齢の身内になら…。 もしご自分だったらどうするか、 医療者の方はどう考えるかなど、 よろしかったら書き込みをお願い致します。 ※父は末期ガンです。 高齢でもあり弱っており、低栄養状態です。BMI=13くらいか。 入院しているのはホスピスや緩和ケア病棟ではなく、 老人病院のような所です。 ホスピスなどは近隣に無く、 見舞いに行く母の便宜や 父本人が長く外来に通い慣れていた関係などで、 今の病院に入院しております。 ※バタバタしておりまして なかなか返信ができないかもしれませんが、 どうかお許し下さい。補足書き込んで下さった皆さま、 ありがとうございました。 頂いたお答えを母とともにすべて拝読し、 「本人の希望は叶えたいけれども、 かと言って今まで本当にお世話になった 病棟スタッフの方々にウソをついた上、 大変な迷惑を掛けるようなことはとてもできない」 ということになり、 夕刻でしたが看護師長さんに 事情を正直にお伝えしました。 すると 「私たちもご家族と話し合わなければと思っていました。 結構もめているお声が聞こえるので…。 ご本人の幸せな最期のために何が最善か、 医師も交えて明日話し合いましょう」と仰せ。 少なくとも病院に内緒で 父に食べ物などを与えることは避けられそうです。 皆さま方の親身なご回答、本当にためになりました。 BAはそれぞれの方にとの思いがありますが、 vio********さまとさせて頂きます。

ケーススタディ：余命宣告と家族の選択

この質問は、末期ガンで余命宣告を受けた88歳の父親の「アイスクリームを食べる」という強い希望と、医療従事者の指示、そして家族の葛藤を描いた、非常に難しい状況を表しています。 ご家族の心情、特に母親の恐怖と娘さんの責任感、そして医療現場の制約、倫理的な問題など、多くの要素が複雑に絡み合っています。 このケーススタディを通して、高齢者の終末期医療における家族の役割、医療従事者とのコミュニケーションの重要性、そして倫理的なジレンマについて考えていきましょう。

まず、重要なのは、ご家族の感情です。母親の恐怖は、長年父に支配されてきた歴史と、現在も続く父の横暴な態度から生まれています。娘さんは、父親の希望と医療従事者の指示の間で揺れ動き、大きな責任を感じています。 このような状況では、家族がまず自身の感情を整理し、互いに支え合うことが不可欠です。 家族カウンセリングなどを検討することも有効な手段です。

次に、医療現場の制約です。言語聴覚士による食事介助の回数制限は、誤嚥性肺炎のリスク軽減という医療的な理由に基づいています。 これは、患者の安全と健康を守るための重要な措置です。 しかし、一方で、患者のQOL（生活の質）も考慮する必要があります。 このバランスをどのように取るかが、大きな課題となります。

さらに、倫理的なジレンマがあります。同じ病棟の家族が「こっそりアイスを与えている」という情報が示すように、医療従事者の指示に従わない行動が暗黙のうちに許容されている側面も存在します。 しかし、これは必ずしも正しいとは言えません。 医療従事者の指示を無視することは、患者の安全を脅かす可能性があり、医療現場の秩序を乱す可能性もあります。

このケースでは、娘さんが看護師長に正直に相談したことが、大きな転換点となりました。 医療従事者とのオープンなコミュニケーションは、最善の解決策を見つけるために非常に重要です。 医療チームは、患者の希望、家族の感情、そして医療的な制約を総合的に考慮し、最善のケアプランを策定する必要があります。 このケースでは、医師、看護師長、言語聴覚士、そして家族が一緒に話し合い、患者の希望を尊重しつつ、安全を確保する方法を模索することが重要です。

専門家の視点：緩和ケアと意思決定支援

このケースは、高齢者の終末期医療における多くの課題を浮き彫りにしています。 特に、患者の意思尊重と医療安全のバランス、家族の負担軽減、そして医療従事者との良好な関係構築が重要です。

専門家の視点から見ると、この状況では、緩和ケアの専門家の介入が非常に有効です。緩和ケアチームは、患者の身体的苦痛だけでなく、精神的、社会的、スピリチュアルな苦痛にも対応し、最善のQOLを維持するためのサポートを提供します。 彼らは、家族と医療チームとのコミュニケーションを円滑にし、患者の意思決定を支援する役割も担います。

また、アドバンス・ケア・プランニング（ACP）の重要性も指摘できます。ACPとは、患者自身が自分の終末期の医療について考え、意思表示を行うためのプロセスです。 余命宣告を受けた段階で、患者本人が自分の希望を明確に伝え、家族もそれを理解することで、このような葛藤を事前に回避できる可能性があります。 ACPは、医療従事者と家族が患者の意思を尊重したケアを提供するための重要なツールとなります。

さらに、倫理的な観点からも、このケースを分析する必要があります。 医療従事者の指示に従わない行為は、倫理的に問題がある可能性があります。 しかし、患者の希望を完全に無視することも、倫理的に問題です。 このジレンマを解決するためには、医療倫理委員会などの専門家の意見を聞くことも有効な手段です。

具体的なアドバイス：家族と医療チームの協働

このケースから学ぶべきことは、家族と医療チームが緊密に連携し、患者の意思を尊重しながら、最善のケアを提供することの重要性です。 具体的なアドバイスとしては、以下の点が挙げられます。

• 家族間のコミュニケーション：家族同士で、それぞれの感情や考えを共有し、互いに支え合うことが重要です。 必要であれば、家族カウンセリングなどを検討しましょう。
• 医療チームとのコミュニケーション：医療チームに、患者の希望や家族の状況を正直に伝え、積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。 疑問点や不安があれば、遠慮なく質問しましょう。
• ACPの活用：将来、同様の状況に直面する可能性がある場合は、ACPを活用し、自分の終末期の医療について事前に意思表示しておくことを検討しましょう。
• 緩和ケアの利用：患者の苦痛軽減やQOL向上のため、緩和ケアチームのサポートを受けましょう。
• 専門家の相談：倫理的な問題や難しい意思決定に直面した場合は、医療倫理委員会や専門機関に相談しましょう。

このケースでは、娘さんの積極的な行動と、看護師長の迅速な対応によって、医療チームと家族が協力して解決策を見つける道が開かれました。 これは、高齢者の終末期医療において、家族と医療チームの協働がいかに重要であるかを示す好例です。

まとめ

高齢者の終末期医療においては、患者の意思尊重、医療安全、家族の負担軽減、医療従事者との良好な関係構築など、多くの課題が存在します。 このケーススタディを通して、これらの課題を理解し、家族と医療チームが協力して最善の解決策を見つけることの重要性を再認識することができました。 患者の希望を尊重しつつ、医療的な制約や倫理的な問題にも配慮した、柔軟で人間味あふれるケアが求められています。 そして、何よりも大切なのは、家族と医療チームが共に考え、共に悩み、共に歩むことです。

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