認知症の母を介護施設に入所させるための最適な契約方法：家族信託と任意後見、どちらを選ぶべき？

認知症になってから介護施設に入所する場合についての質問です。父は亡くなり、実家のマンションに一人暮らしの80歳の母（要支援1）、実の娘3人（私は長女です）はそれぞれ結婚して別世帯です。母の物忘れがひどくなってきて、真ん中の妹が母の向いのマンションに家族で引っ越してくれて、母に頼まれ口座の管理と日々の世話をしてくれています。母は年金暮らしで財産は実家のマンションだけです。妹もすでに介護疲れ状態なので、どうしても無理になった時は、実家のマンションを売却して母に介護施設に入所してもらうことになります。そのための準備として、財産管理等の委任契約から任意後見契約に移行するのと、家族信託契約とどちらが向いているのでしょうか？ 色々調べてみてはいるのですが、認知症になった後だと、家族信託では施設への入所手続きができないと聞きましたが、実の娘でもできないのでしょうか？世の中の認知症になった方は全員後見人をつけないと老人ホームに入れないのでしょうか？補足入所費用については、当面は娘３人で立替負担して、マンション売却後精算という形になると思います。母の判断能力があるうちに妹を受託者にして契約を結んでおいて、いざという時（母の認知症が進んだ時）に売却できるようにしておきたいのです。家族信託では身上監護の契約はできないとのことだったのですが、子どもが入居契約をすれば、判断能力がなくなってからでも入所手続きはできるということでしょうか？

80歳のお母様の介護、そして将来的な介護施設入所に向けた準備、大変な状況の中、的確な判断を下す必要があり、ご心配されていることと思います。ご質問にある「家族信託」と「任意後見契約」はどちらも高齢者の財産管理や身の回りの世話に関する契約ですが、それぞれに特徴があり、どちらが最適かは状況によって異なります。今回は、お母様の状況を踏まえ、それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、最適な選択を導き出すお手伝いをさせていただきます。

家族信託と任意後見契約：それぞれのメリット・デメリット

まず、家族信託と任意後見契約のそれぞれの特徴を整理してみましょう。どちらも、お母様の判断能力が低下した場合でも、財産管理や生活上の意思決定をスムーズに行うための制度です。

• 家族信託のメリット
• 柔軟な設計が可能：信託契約の内容は自由に設計できるので、お母様の状況やご家族の希望に合わせた柔軟な対応ができます。例えば、介護費用や生活費の支出方法、マンション売却のタイミングなども詳細に規定できます。
• 秘密保持：信託契約の内容は、原則として第三者に公開されることはありません。
• 迅速な意思決定：後見開始決定などの裁判手続きが不要なため、迅速に財産管理や生活支援を開始できます。
• 家族信託のデメリット
• 専門家の相談が必要：契約内容を適切に設計するには、弁護士や司法書士などの専門家の相談が必要です。
• 費用がかかる：契約締結には、専門家への報酬や登録免許税などの費用が発生します。
• 任意後見契約のメリット
• 手続きが比較的簡単：家族信託に比べて、契約手続きが比較的簡単です。
• 費用が比較的安い：家族信託に比べて、費用が比較的安価です。
• 任意後見契約のデメリット
• 後見開始の判断が必要：お母様の判断能力が低下したと家庭裁判所が判断する必要があります。そのため、手続きに時間がかかる可能性があります。
• 後見人の選任に制限がある：後見人は、家庭裁判所が選任します。ご家族が必ず選任されるとは限りません。
• 監督を受ける：家庭裁判所の監督を受けながら後見業務を行う必要があります。

お母様のケースにおける最適な選択

お母様のケースでは、家族信託の方が適している可能性が高いと考えられます。妹さんがお母様の状況をよく理解しており、信頼できる受託者として契約を締結できる点、そしてマンション売却による介護施設入所費用をスムーズに準備できる点が大きなメリットです。家族信託では、マンション売却に関する権限を委任し、介護施設への入所費用を確保するための手続きを事前に準備しておくことができます。

ご質問にある「認知症になってから家族信託では施設への入所手続きができない」という情報は、正確ではありません。家族信託で財産管理を委任しておけば、受託者（妹さん）が介護施設への入所手続きを行うことは可能です。　重要なのは、契約書に介護施設への入所に関する事項を明確に記載しておくことです。身上監護の契約は、信託契約の中に含めることができます。お子様が入居契約を結ぶことで、判断能力がなくなっても入所手続きは可能です。

ただし、家族信託は専門的な知識が必要なため、弁護士や司法書士などの専門家にご相談することを強くお勧めします。専門家と相談することで、お母様の状況に最適な契約内容を設計し、将来にわたる安心を確保できます。

具体的なアドバイスと成功事例

成功事例として、70代後半の女性Aさんが、認知症の兆候が見え始めた段階で、弁護士のアドバイスを受けながら家族信託を設立したケースがあります。Aさんは、ご自身の財産管理と介護に関する意思決定を息子に委任しました。その後、認知症が進行した際にも、息子がスムーズに財産管理を行い、介護施設への入所手続きを迅速に進めることができました。このケースでは、事前に家族信託を設立することで、ご本人とご家族の負担を軽減し、安心して介護生活を送ることができました。

お母様のケースでも、同様のメリットを得られる可能性が高いです。妹さんが受託者となり、お母様の財産管理と介護施設への入所手続きをスムーズに行うことができます。ただし、契約内容をしっかりと検討し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

具体的なアドバイスとしては、以下の点を考慮してください。

• 専門家への相談：弁護士や司法書士などの専門家に相談し、家族信託契約の内容を決定しましょう。お母様の状況やご家族の希望を丁寧に伝え、最適な契約内容を一緒に作り上げていくことが重要です。
• 契約内容の明確化：契約書には、マンション売却に関する権限、介護施設への入所に関する事項、介護費用や生活費の支出方法などを明確に記載しましょう。
• 受託者の選定：信頼できる人物を慎重に選定しましょう。受託者は、お母様の意思を尊重し、責任感を持って業務を遂行する必要があります。
• 定期的な見直し：状況に応じて、契約内容を見直すことも検討しましょう。お母様の状況の変化やご家族の事情に合わせて、契約内容を柔軟に変更することで、より適切なサポートを継続できます。

まとめ

認知症になってからの介護施設入所は、ご家族にとって大きな負担となる可能性があります。しかし、事前の準備によって、その負担を軽減することができます。お母様の状況を踏まえ、専門家のアドバイスを得ながら、家族信託契約を検討することをお勧めします。早めの準備が、お母様とご家族の未来を守ることに繋がります。

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