85歳の父の幻覚・妄想への対応：家族としてできること

この記事では、85歳のお父様のパーキンソン病に伴う幻覚や妄想に、ご家族としてどのように対応していくか、具体的なアドバイスを提供します。高齢者の介護、特に認知症の症状を伴う場合の対応は非常にデリケートであり、精神的な負担も大きいものです。この記事を通して、少しでもご家族の負担を軽減し、より良い介護生活を送るためのお手伝いができれば幸いです。

85歳のパーキンソン病の父についての相談です。長文失礼します。

有料老人ホームに入って5年になりますがヤール５で車椅子生活から褥瘡になり現在はベッドで横になっている時間のほうが長くなっています。

3年前くらいから施設のスタッフにいやがらせをされるとか物を盗られた、壊された、勝手に使われたなどの被害妄想から始まり、1～2年前くらいからは犬や猫、虫、子ども、工事の男性などの幻視もひどくなりました。

部屋の壁しかない部分にタンスが置かれていると言い続けており、他の部屋に入居予定の人が勝手に荷物を置いている、勝手に他人がこの部屋で休んでいるなどありえないことを訴えます。

主治医に薬の処方を変えてもらったこともありますが幻覚妄想を少なくする＝体の動きを悪くするということになり、結局施設で管理のしやすい体の状態を保てる現在の処方に戻りました。

施設では体調管理など最低限のことはしていただけるので家族として不満はありませんが、ご相談したいのは父が施設のスタッフでなく家族に色々なことを指示してきたときの対処の仕方です。

たとえば自室の冷蔵庫に入れた食品をスタッフが盗食するので鍵をつけたい、どこそこに看板があった便利屋を呼んでくれといった調子です。

携帯を持っているのでたびたび電話してきますが耳もとおいのでこちらの言うことはほとんど理解しません。

以前も自分のシェーバーをスタッフに勝手に使われると言って手提げ金庫を買って来させたことがありましたが翌日にはダイヤル錠の番号がばれて勝手に開けられていたなど（自分も番号がよく見えていないうえ手指の力も弱く上手く使えない様子）たぶん何をしても他人のせいにして妄想は解決しないと思います。

家族として本人にどう対処したらよいのでしょうか。

よく否定をしない対応と言われますが、スタッフが盗っていることを認めて本人の言うとおりに冷蔵庫に鍵をつけても本人が冷蔵庫をあけられなくなるのは目に見えています。

いつもごまかしごまかし会話をしていますが、本人が忘れるわけでなく、次々と問題が重なります。

どうかお知恵をお貸しください。

1. 現状の理解と受け入れ

まず、ご相談者様が抱える問題の根本にあるのは、お父様のパーキンソン病とそれに伴う認知機能の低下、そして幻覚や妄想といった症状です。これらの症状は、本人の意思とは関係なく現れるものであり、ご本人も混乱し、不安を感じているはずです。ご家族としては、この状況を理解し、受け入れることが、対応の第一歩となります。

パーキンソン病の進行と症状：

• 身体機能の低下: ヤール５という状態は、パーキンソン病がかなり進行していることを示唆しています。車椅子生活からベッドでの生活へと移行していることからも、身体機能の低下が深刻であることがわかります。
• 認知機能の障害: 幻覚や妄想は、認知機能の障害、特にレビー小体型認知症（パーキンソン病と関連することが多い）の可能性があります。
• 精神的な影響: 幻覚や妄想は、本人にとって現実であり、強い不安や恐怖を引き起こします。

専門家の意見：

精神科医や認知症専門医は、幻覚や妄想に対して薬物療法と非薬物療法を組み合わせて治療を行います。薬物療法は症状を緩和する効果がありますが、副作用も考慮する必要があります。非薬物療法としては、環境調整やコミュニケーション、心理療法などが有効です。

2. コミュニケーションのコツ

お父様とのコミュニケーションは、症状を悪化させないために非常に重要です。以下の点を意識して、穏やかな対話を心がけましょう。

1. 否定しない: 幻覚や妄想を頭ごなしに否定すると、お父様は不信感を抱き、さらに混乱する可能性があります。「そう感じられるのですね」「それは辛いですね」など、共感の言葉を伝えましょう。
2. 話を遮らない: お父様の話を最後まで聞き、途中で話を遮ったり、訂正したりしないようにしましょう。話を聞く姿勢を示すことで、安心感を与えられます。
3. 具体的に質問する: 「いつ」「どこで」「誰が」など、具体的な質問をすることで、状況を把握しやすくなります。ただし、尋問のような口調にならないように注意しましょう。
4. 話題を変える: 幻覚や妄想の話が続くと、お父様の不安が増幅する可能性があります。適度に話題を変え、気分転換を図りましょう。過去の楽しい思い出や、好きなことについて話すのも良いでしょう。
5. 言葉遣いを工夫する: 難しい言葉や専門用語は避け、分かりやすい言葉で話しましょう。ゆっくりと、穏やかな口調で話すことも大切です。

成功事例：

あるご家族は、お父様が「部屋に泥棒が入った」と訴えた際、「それは大変でしたね。何か盗られたものはありますか？」と尋ね、話を聞いた上で、「警察に相談しましょうか？」と提案しました。実際には泥棒はいませんでしたが、お父様は「そうしてくれるなら安心だ」と言い、落ち着きを取り戻したそうです。

3. 環境調整と現実的な対応

お父様の生活環境を整えることも、症状の緩和に役立ちます。以下の点を参考に、できる範囲で環境を調整しましょう。

• 安全な環境の確保: 転倒のリスクを減らすため、部屋の整理整頓を行い、段差をなくすなど、安全な環境を整えましょう。
• 視覚的な刺激を減らす: 幻覚の原因となる可能性があるもの（明るすぎる照明、テレビのつけっぱなしなど）を調整し、落ち着ける環境を作りましょう。
• 生活リズムの確立: 規則正しい生活リズムは、認知機能の安定に繋がります。食事、睡眠、入浴などの時間を固定し、生活にメリハリをつけましょう。
• 施設のスタッフとの連携: 施設のスタッフと密に連携し、お父様の状態を共有し、対応について相談しましょう。スタッフが困っている場合は、具体的なアドバイスを求め、協力体制を築きましょう。
• 現実的な対応: お父様の要求を全て受け入れることは難しい場合があります。例えば、冷蔵庫に鍵を付けることについては、本人が鍵を扱えなくなる可能性を説明し、他の方法を提案するなど、現実的な対応を心がけましょう。

専門家の意見：

作業療法士は、環境調整や生活動作のサポートを通じて、認知症の方の生活の質を向上させる専門家です。必要に応じて、作業療法士に相談し、具体的なアドバイスを受けることも有効です。

4. 家族としての心のケア

介護は、ご家族にとって精神的、肉体的に大きな負担となります。ご自身の心身の健康を保つためにも、以下の点に注意しましょう。

• 休息とリフレッシュ: 疲労を感じたら、無理をせずに休息を取りましょう。趣味を楽しんだり、気分転換になるような活動を取り入れることも大切です。
• 相談できる相手を持つ: 家族や友人、専門家など、悩みを相談できる相手を持ちましょう。一人で抱え込まず、誰かに話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることがあります。
• 専門家のサポートを受ける: 介護に関する悩みや不安は、専門家に相談することも有効です。ケアマネージャー、医師、カウンセラーなど、様々な専門家がサポートを提供しています。
• 情報収集: 認知症や介護に関する情報を積極的に収集し、知識を深めましょう。正しい知識を持つことで、不安を軽減し、適切な対応ができるようになります。
• 罪悪感を抱かない: 介護は、常に完璧にできるものではありません。うまくいかないことがあっても、自分を責めすぎないようにしましょう。

成功事例：

あるご家族は、介護の負担が大きくなり、精神的に追い詰められてしまったため、地域の相談窓口に相談しました。専門家のアドバイスを受け、介護保険サービスの利用や、レスパイトケア（一時的に介護を他の人に委ねるサービス）を利用することで、心身ともに余裕を取り戻し、より良い介護生活を送れるようになったそうです。

5. 薬物療法と非薬物療法のバランス

お父様の症状を緩和するためには、薬物療法と非薬物療法のバランスが重要です。主治医と相談し、適切な治療法を選択しましょう。

• 薬物療法: 幻覚や妄想を抑える薬物療法は、症状を緩和する効果が期待できますが、副作用も考慮する必要があります。主治医と相談し、薬の種類や量を調整しましょう。
• 非薬物療法: 環境調整、コミュニケーション、心理療法など、薬を使わない治療法も重要です。これらの治療法は、症状の緩和だけでなく、生活の質の向上にも繋がります。
• 定期的な診察: 定期的に主治医の診察を受け、症状の変化や薬の効果について相談しましょう。必要に応じて、薬の調整や、他の治療法の検討も行いましょう。

専門家の意見：

精神科医は、薬物療法の専門家であり、患者の状態に合わせて最適な薬を選択し、適切な量を処方します。また、精神科医は、非薬物療法についてもアドバイスを提供し、患者の症状を総合的にサポートします。

6. 施設との連携強化

お父様が利用している有料老人ホームとの連携を強化することも、介護を円滑に進める上で重要です。以下の点を意識して、施設とのコミュニケーションを図りましょう。

• 情報共有: お父様の状態や、日々の変化について、施設と積極的に情報共有しましょう。特に、幻覚や妄想の具体的な内容や、お父様の反応などを伝えることが重要です。
• 相談: 介護に関する悩みや、対応に困ったことがあれば、遠慮なく施設に相談しましょう。施設は、介護の専門家であり、様々なアドバイスを提供してくれます。
• 協力体制の構築: 施設と協力し、お父様にとって最適なケアプランを作成しましょう。お父様の状態に合わせて、柔軟に対応できる体制を築くことが大切です。
• 定期的な面会: 定期的に施設を訪問し、お父様との面会や、スタッフとの情報交換を行いましょう。お父様の様子を直接確認し、施設のケアについて評価することも重要です。

成功事例：

あるご家族は、お父様の幻覚や妄想について、施設と密に連携し、具体的な対応策を共有しました。施設は、お父様の部屋の環境を調整し、スタッフが声かけの際に、お父様の不安を和らげるような言葉遣いを心がけるようになりました。その結果、お父様の症状が改善し、穏やかな生活を送れるようになったそうです。

7. 家族会議の開催

ご家族で集まり、お父様の介護について話し合う「家族会議」を開催することも、有効な手段です。家族会議では、以下の点を話し合いましょう。

• 現状の共有: お父様の現在の状態や、抱えている問題について、家族で情報を共有しましょう。
• 目標の設定: お父様にとって、どのような生活が望ましいのか、目標を設定しましょう。
• 役割分担: 介護に関する役割分担を決め、それぞれの負担を軽減しましょう。
• 情報交換: 介護に関する情報交換を行い、知識を深めましょう。
• 定期的な開催: 定期的に家族会議を開催し、状況の変化に合わせて、対応策を見直しましょう。

専門家の意見：

ケアマネージャーは、介護に関する専門家であり、家族会議の進行をサポートし、様々なアドバイスを提供してくれます。必要に応じて、ケアマネージャーに相談し、家族会議を円滑に進めるためのサポートを受けましょう。

8. 法律と権利について

高齢者の介護においては、法律や権利に関する知識も重要です。以下の点について、理解を深めておきましょう。

• 成年後見制度: 認知症などにより判断能力が低下した場合、成年後見制度を利用することができます。成年後見人は、本人の財産管理や、身上監護を行います。
• 介護保険制度: 介護保険制度は、介護が必要な高齢者を支援するための制度です。介護保険サービスを利用することで、介護の負担を軽減することができます。
• 権利擁護: 高齢者の権利を擁護するために、様々な制度や団体があります。虐待や不当な扱いから、高齢者を守るために、これらの情報を把握しておきましょう。

専門家の意見：

弁護士や行政書士は、法律に関する専門家であり、成年後見制度や権利擁護について、相談に乗ってくれます。必要に応じて、専門家に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。

9. 焦らず、長期的な視点で

お父様の症状は、一朝一夕に解決するものではありません。焦らず、長期的な視点で、一つ一つ問題に向き合っていくことが大切です。時にはうまくいかないこともあるかもしれませんが、諦めずに、ご家族で協力し、支え合って、より良い介護生活を目指しましょう。

まとめ：

お父様の幻覚や妄想への対応は、困難を伴うことも多いですが、適切なコミュニケーション、環境調整、専門家のサポート、そしてご家族の協力があれば、必ず改善の道が開けます。この記事で紹介したアドバイスを参考に、ご家族で力を合わせ、お父様が穏やかな日々を送れるよう、サポートしていきましょう。

“`