介護職未経験者の「大丈夫」の裏側：自信と危険認識のギャップを埋めるには？

介護職が初めての方がいます。トランスを1.2回教わったので一人で大丈夫です！と自信があるようで（車いす⇆ベッド）出来なくはないです。 ただ、そこにフットレストを外す若しくは拡げる、アームレストを下げる事もせずやはりスムーズなトランスが出来ず、浅座りやずれ落ちそうなこともあり、力尽くでトランスします。もちろんプリセプターがしっかり付いて指導、見守りもしますが初めてですのでそう簡単にはいきません。 〝大丈夫です〟〝出来ます〟前向きで良い事だとは思いますが、周りからしてみればやはり危険で怖いな（出来るという思い込み）と感じます。 危険であることやいつ何が起こるかわからないという認識が感じられません。指導はしていますが、本人に響いていないようです。 介護職が初めてでたくさん管も付いてたり骨折リスクも高い方達ばかり（毎度伝えています）人にもよるのでしょうがなぜ〝一人で大丈夫〟という気持ちになれるのでしょうか。そんなに難しいことではないにしろ〝介護は意外に簡単に出来る〟と思っているのでしょうか。

この記事では、介護職未経験者が「一人で大丈夫」と自信を持つ背景と、その自信の裏に潜む危険性、そして、そのギャップを埋めるための具体的な指導方法について、転職コンサルタントの視点から解説します。特に、介護職特有の技術習得における心理的側面と、安全な介護の実践に焦点を当て、現場で働く皆さんに役立つ情報を提供します。

「大丈夫」という自信の根源を探る

介護職未経験者が「一人で大丈夫」と感じる背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、1、2回の練習で成功体験を得たことで、自身の能力を過大評価してしまう「過信」が挙げられます。特に、介護技術は、一見簡単そうに見えても、実際には熟練の技と深い知識、そして、状況判断力が必要とされる高度なスキルです。

また、未経験者にとって、介護の難しさや危険性を正しく理解できていない可能性もあります。研修や指導で危険性について繰り返し説明しているにも関わらず、それが実感として理解されていないケースは少なくありません。これは、経験不足による「現実感の欠如」が原因の一つと言えるでしょう。

さらに、周囲の期待やプレッシャーも影響している可能性があります。プリセプターや先輩職員から「頑張りましょう！」「大丈夫ですよ！」と励まされることで、本人は「期待に応えなければならない」という心理的な負担を感じ、無理をして「大丈夫」と発言しているケースも考えられます。

そして、重要なのは、介護の仕事自体が、他者への奉仕という高いモチベーションに基づいている点です。未経験者であっても、利用者の方々を助けたいという強い気持ちから、「大丈夫」という自信に繋がることもあります。しかし、このポジティブな気持ちと、安全な介護の実践を両立させることが重要です。

「大丈夫」の裏に潜む危険性

「一人で大丈夫」という自信の裏には、重大な危険が潜んでいます。力任せのトランスは、利用者にとって大きな負担となり、転倒や骨折などの事故につながる可能性があります。また、フットレストやアームレストの調整を怠ることで、利用者の身体への負担が増加し、痛みや不快感を与える可能性もあります。

さらに、未経験者が一人で対応することで、緊急事態への対応が遅れるリスクも高まります。例えば、利用者が急に体調が悪くなった場合、適切な処置を迅速に行うことが出来ず、事態を悪化させる可能性があります。

これらの危険性は、単なるミスや不注意ではなく、経験不足や安全意識の低さから生じる深刻な問題です。そのため、単に「大丈夫」という発言を否定するのではなく、その発言の裏にある心理状態を理解し、適切な指導を行うことが重要です。

具体的な指導方法：自信と安全意識のバランス

では、どのようにすれば、未経験者の「大丈夫」という自信と、安全な介護の実践を両立させることができるのでしょうか？

まず、具体的な事例を用いた指導が効果的です。過去に発生した事故事例などを紹介し、その原因と結果を具体的に説明することで、危険性の認識を深めることができます。

次に、ロールプレイングやシミュレーションを活用しましょう。実際にトランスを行う練習を通して、スムーズな動作を習得するだけでなく、様々な状況を想定し、適切な対応を学ぶことができます。

さらに、フィードバックの質を高めることも重要です。単に「間違っている」と指摘するのではなく、「どこがどのように間違っていたのか」「なぜ危険なのか」「どのように改善すれば良いのか」を具体的に説明することで、理解を深めることができます。

そして、自己評価と相互評価の機会を設けることで、自己認識を高めることができます。自身のパフォーマンスを客観的に評価することで、自身の能力と限界を理解し、安全な介護の実践に繋げることができます。

また、定期的な研修や教育を通じて、最新の介護技術や安全に関する知識をアップデートすることも重要です。介護の現場は常に変化しており、新しい技術や知識を習得することで、より安全で質の高い介護を提供することができます。

そして、チーム全体で安全意識を高めるための取り組みも必要です。定期的なミーティングや情報共有を通じて、安全に関する情報を共有し、問題点や改善策を話し合うことで、組織全体の安全意識を高めることができます。

成功事例：丁寧な指導と継続的なサポート

私の経験から、成功事例を一つご紹介しましょう。ある施設では、新人職員に対して、先輩職員がマンツーマンで指導を行い、一人ひとりのペースに合わせて丁寧に技術指導を行いました。また、定期的な面談を通して、不安や疑問点を解消し、継続的なサポートを提供しました。その結果、新人職員は安心して業務に取り組むことができ、安全な介護の実践に繋がりました。

専門家への相談を検討しましょう

ここまで、介護職未経験者の「大丈夫」という自信と、安全な介護の実践の両立について解説してきました。しかし、個々の状況や悩みに最適な解決策は異なります。より具体的なアドバイスや、あなた自身の状況に合わせたサポートが必要な場合は、専門家の力を借りることを検討してみましょう。

まとめ

介護職未経験者の「大丈夫」という発言は、自信の裏返しであると同時に、潜在的な危険性を孕んでいる可能性があります。そのため、単に発言を否定するのではなく、その背景にある心理状態を理解し、具体的な事例やロールプレイング、丁寧なフィードバックを通して、安全意識を高める指導を行うことが重要です。継続的な研修やチーム全体での安全意識の向上も不可欠です。 安全な介護の実践は、利用者と職員双方にとって、かけがえのない安心と信頼を築く基盤となります。