介護施設からの胃ろうの提案…本当に必要なの？ 専門家が教える、納得の決断をするためのチェックリスト

この記事では、介護施設に入所中のご家族が胃ろうを勧められた際に、どのように対応すれば良いのか、専門家の視点から具体的なアドバイスを提供します。胃ろうの必要性を見極めるためのチェックリストや、施設とのコミュニケーションを円滑に進めるためのヒント、そしてご自身の心の負担を軽減するための考え方について解説します。ご家族の健康と尊厳を守りながら、最善の選択をするための手助けとなることを目指します。

現在、高齢の母が介護施設に入所しているのですが、最近食事の時にむせることが多くなったので胃ろうにして欲しいと施設側に言われました。

母は認知症でもなく、リモート面会でも受け応えがハッキリしています。コロナのせいで面会できなくなる前は、いつも一緒に施設で食事をとっていましたし差し入れのオヤツも食べられているようです。

どうしても施設側の都合で胃ろうにして欲しいと言っているようにしか思えません。私は母を胃ろうなんかにしたくありません。施設側の要望を拒否した場合、退所するように言われてしまうのでしょうか？

皆さま、ご回答ありがとうございます。言葉が足りませんでしたが、胃ろうはもちろん施設の職員さんの判断で薦められているのではなく、施設の訪問診療にきている嘱託の医師からの薦めもあるようです。　でも、その医師とは直接話しをさせてくれません。

母には以前からかかりつけのお医者さまがいて月に一度そちらの病院での診療も受けているのですが、かかりつけのお医者さまには胃ろうは必要ないと言われました。施設での嘱託の医師とかかりつけの医師で判断が違います。なので余計に胃ろうはホントに必要なのかと思ってしまうのです。このことで施設ともめてしまうと確実に追い出されるのではないかと思ってしまいます。コロナで母とも会えず意思疎通が思うようにとれないので余計に悩ましいです。

介護施設から胃ろうを勧められた際、多くのご家族が直面する葛藤は、非常に理解できます。愛するご家族の健康と尊厳を守りたいという強い思いと、施設側の提案に対する不安や疑問が入り混じり、どうすれば良いのか途方に暮れてしまうこともあるでしょう。この記事では、そのような状況にあるあなたが、冷静に状況を把握し、最善の選択をするための道しるべとなる情報を提供します。

1. 胃ろうに関する基礎知識：なぜ勧められるのか？

まず、胃ろうについて基本的な知識を整理しましょう。胃ろうとは、口から食事が摂れなくなった場合に、直接胃に栄養を送り込むための処置です。具体的には、お腹に小さな穴を開け、そこからチューブを通して栄養剤を注入します。この処置は、誤嚥性肺炎のリスクを減らし、栄養状態を維持するために行われることが多いです。

介護施設や医療機関が胃ろうを勧める主な理由は以下の通りです。

• 誤嚥性肺炎の予防: 食事中にむせることが多くなると、食べ物が気管に入り、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まります。胃ろうは、このリスクを軽減する有効な手段の一つです。
• 栄養状態の改善: 口からの食事が困難な場合でも、胃ろうを通じて必要な栄養を確実に摂取することができます。
• 医療的ケアの簡素化: 胃ろうは、点滴などと比べて、比較的容易に栄養管理を行うことができます。

しかし、胃ろうにはメリットだけでなく、デメリットも存在します。例えば、感染症のリスク、チューブの交換や管理が必要になること、そして何よりも、ご本人のQOL（生活の質）への影響です。これらの点を考慮し、慎重に判断する必要があります。

2. 胃ろうの必要性を見極めるためのチェックリスト

胃ろうを検討するにあたって、本当に必要なのかどうかを見極めるためのチェックリストを作成しました。以下の項目を参考に、ご自身の状況を客観的に評価してください。

1. 嚥下（えんげ）機能の評価:
   • 食事中のむせ込みの頻度と程度
   • 食事の形態（刻み食、ミキサー食など）の変更による改善の有無
   • 言語聴覚士による嚥下評価の実施
2. 全身状態の評価:
   • 現在の体重と、過去の体重変化
   • 栄養状態（血液検査の結果など）
   • 全身的な体力や活動レベル
3. 認知機能の評価:
   • 認知症の有無と進行度
   • 意思疎通の能力
   • 食事に対する意欲
4. 本人の意思確認:
   • 可能であれば、本人に胃ろうに関する説明を行い、意思を確認する
   • 本人の意向が不明な場合は、家族や親しい人々の意見を参考に、本人の意思を推測する
5. 代替案の検討:
   • 食事形態の工夫（とろみ剤の使用、一口量を減らすなど）
   • 食事介助の方法の見直し
   • 口腔ケアの徹底

このチェックリストはあくまでも目安であり、最終的な判断は、医師や専門家との相談を通じて行うことが重要です。

3. 施設とのコミュニケーション：円滑に進めるためのヒント

施設側から胃ろうを勧められた際、どのようにコミュニケーションを取るかは非常に重要です。感情的にならず、冷静に、かつ建設的に話し合いを進めるためのヒントをご紹介します。

• 情報収集:
  • 施設側の医師（嘱託医）に、胃ろうを勧める理由を詳しく説明してもらう
  • かかりつけ医にも相談し、意見を聞く
  • 可能であれば、第三者の専門家（管理栄養士、言語聴覚士など）の意見も求める
• 疑問点の明確化:
  • 胃ろう以外の選択肢（食事形態の変更、口腔ケアの強化など）について質問する
  • 胃ろうのメリットとデメリットについて、詳しく説明を求める
  • 胃ろうを行った場合の、今後のケア体制について確認する
• 感情的な対立を避ける:
  • 相手の意見を尊重し、まずは話をよく聞く
  • 自分の意見を伝える際は、感情的にならず、根拠に基づいた説明をする
  • 冷静な話し合いを心がけ、建設的な解決策を探る
• 記録を残す:
  • 話し合いの内容や決定事項を、書面またはメールで記録に残す
  • 重要なやり取りは、録音しておくことも有効

施設側とのコミュニケーションは、一方的な情報伝達ではなく、双方向の対話であるべきです。お互いの立場を理解し、協力して最善のケア方法を探ることが重要です。

4. 専門家への相談：誰に相談すれば良い？

胃ろうに関する判断は、専門的な知識と経験が必要です。一人で抱え込まず、積極的に専門家へ相談しましょう。相談できる相手としては、以下のような専門家が挙げられます。

• かかりつけ医:
  • 普段からご家族の健康状態を把握しているため、的確なアドバイスが期待できます。
  • 胃ろうの必要性や、他の選択肢について相談しましょう。
• 訪問看護師:
  • 自宅でのケアについて、具体的なアドバイスをしてくれます。
  • 胃ろう後のケアや、食事介助の方法などについて相談しましょう。
• 言語聴覚士:
  • 嚥下機能の評価や、食事の工夫について専門的なアドバイスをしてくれます。
  • 誤嚥性肺炎のリスクを軽減するための対策について相談しましょう。
• 管理栄養士:
  • 栄養バランスの取れた食事について、アドバイスをしてくれます。
  • 胃ろうの場合の栄養剤の選択や、食事の工夫について相談しましょう。
• 介護支援専門員（ケアマネージャー）:
  • 介護保険に関する手続きや、介護サービスの利用について相談できます。
  • 施設との連携や、情報収集についてもサポートしてくれます。

これらの専門家は、それぞれ異なる視点から、あなたをサポートしてくれます。複数の専門家と連携し、多角的に情報を収集することで、より適切な判断ができるでしょう。

5. 施設との対立を避けるために：退所を迫られたら？

施設側との意見の相違がどうしても埋まらず、退所を迫られる可能性もゼロではありません。そのような事態に備えて、事前に準備しておくべきことがあります。

• 退所に関する契約内容の確認:
  • 契約書をよく読み、退所に関する条件や手続きを確認する
  • 退所する場合の費用や、返還される金額についても確認する
• 代替施設の検討:
  • 事前に、他の介護施設を探しておく
  • 自宅での介護を検討する場合は、訪問介護サービスなどの情報を収集する
• 弁護士への相談:
  • 施設との間でトラブルが発生した場合、弁護士に相談する
  • 退所に関する法的な問題について、アドバイスを受ける
• 感情的な対応を避ける:
  • 退所を迫られたとしても、感情的にならず、冷静に対応する
  • 相手の意見を尊重し、建設的な話し合いを試みる

退所を迫られることは、非常に精神的な負担が大きいものです。しかし、事前に準備をしておくことで、冷静に対応し、最善の選択をすることができます。

6. 精神的なサポート：心の負担を軽減するために

ご家族の介護は、心身ともに大きな負担を伴います。特に、胃ろうに関する決断は、精神的な葛藤を引き起こしやすく、孤独感や不安を感じることも少なくありません。ここでは、心の負担を軽減するためのヒントをご紹介します。

• 周囲への相談:
  • 家族や親しい友人、または専門家（カウンセラーなど）に相談する
  • 自分の気持ちを話すことで、心の負担を軽減できる
• 情報収集:
  • 胃ろうに関する情報を集め、正しい知識を得る
  • 他の家族の体験談などを参考に、自分だけではないことを知る
• 休息とリフレッシュ:
  • 定期的に休息を取り、心身を休ませる
  • 趣味や好きなことに時間を使い、気分転換を図る
• 自己肯定感を高める:
  • 自分の頑張りを認め、自分を褒める
  • 完璧主義を捨て、無理をしない
• 専門家のサポート:
  • 精神科医やカウンセラーに相談し、心のケアを受ける
  • 必要に応じて、薬物療法なども検討する

一人で抱え込まず、周囲のサポートを受けながら、心身ともに健康な状態で介護を続けることが大切です。

7. 成功事例から学ぶ：他の家族の体験談

実際に胃ろうに関する決断をした他の家族の体験談は、大きな参考になります。ここでは、いくつかの成功事例を紹介します。

• 事例1：かかりつけ医との連携で納得のいく選択をしたAさんの場合

  Aさんの母親は、食事中にむせることが多くなり、施設から胃ろうを勧められました。Aさんは、まずかかりつけ医に相談し、嚥下機能の評価や栄養状態の検査を受けました。その結果、食事形態の工夫や、口腔ケアの徹底で改善が見込めることが判明。施設との話し合いの結果、胃ろうは行わず、食事介助の方法を見直すことになりました。Aさんは、かかりつけ医との連携により、母親のQOLを重視した選択をすることができました。

• 事例2：専門家の意見を参考に、最適なケアプランを見つけたBさんの場合

  Bさんの父親は、認知症が進み、食事を拒否することが多くなりました。施設から胃ろうを勧められましたが、Bさんは、言語聴覚士や管理栄養士に相談し、父親の嚥下機能や栄養状態を詳しく評価してもらいました。その結果、胃ろうではなく、食事の形態や味付けを工夫し、食事介助の方法を見直すことで、父親が食事を楽しめるようになりました。Bさんは、専門家の意見を参考に、父親のQOLを向上させるケアプランを見つけることができました。

• 事例3：本人の意思を尊重し、最善の選択をしたCさんの場合

  Cさんの母親は、認知症が進み、意思疎通が困難になりました。施設から胃ろうを勧められましたが、Cさんは、母親の過去の言動や、親しい人々との話し合いを通じて、母親の意思を推測しました。その結果、母親は、胃ろうではなく、自然な形で最期を迎えたいと考えていることがわかりました。Cさんは、母親の意思を尊重し、看取りケアを選択。母親は、穏やかな最期を迎えることができました。

これらの事例から、それぞれの家族が、様々な状況の中で、最善の選択をしていることがわかります。大切なのは、ご自身の状況を客観的に評価し、専門家のアドバイスを参考にしながら、ご家族のQOLを最優先に考えることです。

8. まとめ：あなたにとっての最善の選択のために

この記事では、介護施設から胃ろうを勧められた際に、どのように対応すれば良いのか、様々な角度から解説しました。胃ろうの基礎知識、チェックリスト、施設とのコミュニケーション、専門家への相談、心のケア、そして成功事例を通じて、あなたが納得のいく決断をするためのヒントを提供しました。

最終的に、どのような選択をするかは、あなたとご家族の状況によって異なります。しかし、この記事で得た知識を参考に、冷静に状況を把握し、専門家のアドバイスを受けながら、ご家族の健康と尊厳を守るための最善の選択をしていただきたいと思います。

もし、あなたが胃ろうに関する判断で悩んでいるなら、まずはこの記事で紹介したチェックリストを参考に、ご自身の状況を客観的に評価することから始めてください。そして、かかりつけ医や専門家との相談を通じて、様々な情報を収集し、ご家族にとって最善の選択を見つけてください。あなたの決断が、ご家族の幸せにつながることを心から願っています。

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