介護職の悩み解決！高齢者の拘りへの対応と声掛けのコツ

介護職です。86歳の方で杖歩行、かなり認知症は進んでいると思います。会話は可能。易怒性無し。性格は穏やかでニコニコしておられる男性利用者、排泄はトイレですが排尿や排便の感覚は無く失禁は多いです。椅子に座る時に椅子をくるくるといつまでも回し続けて座らないなど拘りは強くあります。座りましょうか？と声掛けにも自分が納得するまでは回し続けて座られません。洗面所でのうがいをいつまでもやめない傾向は以前からあり、すでに30分近くうがいを続けているのでそろそろ終わりましょうか？と声掛けしても今始めたばっかりやと言われうがいをやめるのを拒否されます。立位や歩行はかなり不安定な方で長時間うがいを続けていて疲れて転倒して頭を打たれました。他トイレに座ってもらった時も長く座っていてそろそろ終わりましょうか？と声掛けするも今座ったばっかりやと言われ拒否。洗面所でのうがいは転倒もあったのである程度で終わって貰いたいんですがどう声掛けしたらうがいやトイレを終わってもらえるかなと考えていますがなかなか思いつかず何か良い方法はないでしょうか？今のところコップをこちらが取り上げないとうがいをやめられない様子です。

この記事では、介護職の皆様が直面する、高齢者の「こだわり」への対応について、具体的な解決策と声掛けのコツを解説します。特に、認知症が進んでいる高齢者の方のケアに焦点を当て、安全で効果的なコミュニケーション方法を、事例を交えながらご紹介します。この記事を読み終える頃には、利用者の方との良好な関係を築きながら、安全な介護を実現するための具体的なスキルを身につけていることでしょう。

1. 高齢者の「こだわり」を理解する：認知症と行動・心理症状（BPSD）

まず重要なのは、利用者様の行動の背景を理解することです。86歳、認知症が進んでいる男性利用者様の「椅子を回し続ける」「うがいを長時間続ける」「トイレに長時間座る」といった行動は、単なる「頑固さ」ではなく、認知症に伴う行動・心理症状（BPSD）の可能性が高いです。BPSDは、認知症によって引き起こされる様々な行動や心理の変化のことで、その原因は多岐に渡ります。例えば、不安、混乱、記憶障害、幻覚、妄想などが考えられます。

今回のケースでは、長時間うがいをする行為は、単に口腔ケアという行為そのものではなく、安心感や落ち着きを得るための手段になっている可能性があります。同様に、椅子を回し続ける行為も、何かしらの不安や落ち着きのなさを解消するための行動かもしれません。 これらの行動を「悪いこと」と決めつけるのではなく、「なぜこの行動をとるのか？」という視点を持つことが、効果的な対応の第一歩です。

2. 効果的な声掛け：共感と具体的な指示

「座りましょうか？」「終わりましょうか？」といった、一般的な声掛けは、認知症が進んでいる方にとっては理解しづらい場合があります。抽象的な表現ではなく、具体的な指示と共感を組み合わせた声掛けが効果的です。

• 共感的なアプローチ：利用者様の気持ちに寄り添う言葉を選ぶことが重要です。「うがい、気持ちがいいんですね」「ゆっくり座ってくださいね」など、利用者様の行動を否定せずに受け止め、共感の言葉を添えることで、抵抗感を減らすことができます。
• 具体的な指示：「あと5回うがいしたら終わりましょう」「この椅子に座って、少し休憩しましょう」など、具体的な回数や時間、場所を指示することで、利用者様は行動の終わりを明確に認識しやすくなります。
• 選択肢を与える：「うがいはもう終わりですか？それとも、あと2回だけうがいしましょうか？」など、選択肢を与えることで、利用者様自身の意思決定を促すことができます。これは、尊厳を保つ上で非常に重要です。
• 視覚的なサポート：時計やカレンダーを見せる、絵カードを使うなど、視覚的な情報を与えることで、時間経過や行動の終わりを理解しやすくします。例えば、「あと10分したら休憩しましょう」と伝える際に、時計を指さしながら伝えることで、より理解が深まります。

3. 環境調整によるサポート：安全な空間づくり

声掛けだけでは効果がない場合、環境調整も有効です。洗面所の床は滑り止めマットを敷き、転倒防止に努めましょう。また、椅子に座る際に、安定した椅子を選ぶ、または補助具を使用するなど、安全な環境を整備することが重要です。

さらに、うがいコップをすぐに取り上げるのではなく、うがいを始める前に、「○○さん、うがいは10分間で終わりましょうね」と約束し、タイマーを使用するのも効果的です。タイマーが鳴ったら、優しく「時間ですよ」と声かけ、コップを取り上げることで、利用者様は安心してうがいを終えることができます。

4. チームとしての連携と専門家の活用

介護は、一人で抱え込まず、チームとして連携することが重要です。同僚や上司と情報共有を行い、利用者様の状態や効果的な対応方法について話し合うことで、より適切なケアを提供することができます。

また、必要に応じて、ケアマネージャーや医師、理学療法士、作業療法士、精神科医などの専門家に相談することも大切です。専門家のアドバイスを受けることで、より適切なケアプランを作成し、利用者様の安全と尊厳を確保することができます。特に、認知症専門医の意見を聞くことで、より適切な対応策を立てることができます。

5. 成功事例と具体的な対応策

ある介護施設では、認知症の高齢者が食事中に箸を何度も落としてしまうことに悩んでいました。そこで、職員は、箸の代わりにスプーンを使用したり、食べやすいように食事を細かく刻んだりするなど、環境調整を行いました。また、食事中に職員が優しく声かけを行い、食事のペースを調整することで、落ち着いて食事ができるようにサポートしました。その結果、食事中のストレスが軽減され、箸を落とす回数が減り、食事の時間が穏やかなものになりました。

今回のケースでは、以下のような対応策が考えられます。

• 洗面所の環境改善：滑り止めマットの設置、手すりの設置、安定した椅子を用意する。
• タイマーの使用：うがい、トイレの時間をタイマーで管理し、時間になったら優しく声をかける。
• 代替行動の提案：うがいが長引く場合は、「うがいが終わったら、一緒に歌を歌いましょうか？」など、別の楽しい活動に誘導する。
• 記録の保持：利用者様の行動パターンや反応を記録することで、より効果的な対応策を立てることができる。

6. まとめ：継続的な観察と柔軟な対応

高齢者の「こだわり」への対応は、一朝一夕に解決できるものではありません。継続的な観察と、状況に応じた柔軟な対応が求められます。 利用者様の状態を常に把握し、声掛けや環境調整、専門家への相談などを適切に行うことで、安全で安心できる介護を提供することが大切です。

この記事で紹介した方法を参考に、利用者様との信頼関係を築き、より良い介護を目指してください。 そして、困難に直面した際には、ためらわずに専門家への相談を検討しましょう。

※この記事は一般的な情報提供を目的としており、医療的なアドバイスではありません。具体的な対応については、必ず専門家の指導を受けてください。