介護職の葛藤：紛失物への対応と優先順位～利用者様の安心と職員の負担のバランス～

介護の仕事をしていた時の話です。 ある女性がショートステイを利用されました。 最初は３階のフロアにいましたが、２階の方のフロアの方へ移られました。その際に本人のうがい用コップが行方不明になり、本人の私物を入れているバッグなども探しましたが見つからず、紛失ということで家族に電話をしました。家族様からは、本人の入れ歯はあるのか尋ねられ、入れ歯はあると伝えたら 「コップはそんなに高価なものじゃないし、１００円20０円の物だから入れ歯さえあれば良いので」 と言われ、招致しました、ということになりました。その後、コップは３階の方の洗面台の方に忘れられていただけで、見つかったという連絡は家族にさせていただき、心配をかけたことと２度も電話をかけることになり、対応に時間を取らせてしまったことに対して謝罪はしましたが、もしこういう場合 「入れ歯があるならコップは紛失になっても大丈夫」 と言われたら、他の介護の職員さんではどうなんでしょうか？ 電話の前に何が何でも探すもんでしょうか？

この質問は、介護職従事者の方々が日常的に直面する「紛失物への対応」と、その際の判断基準、そして職場における共通認識の重要性を浮き彫りにしています。 利用者様の安心と安全を確保しつつ、職員の業務負担を軽減するための適切な対応とは何か？このQ&Aでは、介護現場における紛失物対応の実際、優先順位の決め方、そしてチーム内での情報共有の重要性について、具体的な事例を交えながら深く掘り下げていきます。

１．紛失物対応における優先順位：命に関わるものから考える

まず、ご質問にあるケースで家族の方が「入れ歯さえあれば良い」と言われたことに注目しましょう。これは、入れ歯が利用者様の健康、特に食事や口腔ケアに直接関わる重要な私物であることを示唆しています。一方、うがい用コップは、日常生活に必要ではありますが、入れ歯と比較すると、生命維持や健康に直接的な影響を与える可能性は低いと言えます。

介護現場における紛失物対応では、優先順位をつけることが非常に重要です。 まず、利用者様の生命や健康に直接影響を与える可能性のあるもの（例：薬、医療機器、入れ歯など）を最優先に探す必要があります。次に、日常生活に支障をきたす可能性のあるもの（例：眼鏡、補聴器、杖など）、そして最後に、日常生活に多少不便が生じる程度の私物（例：コップ、タオル、小物など）という順番で対応するのが一般的です。

２．ケーススタディ：コップ紛失事件の検証

ご質問のケースでは、まず入れ歯の有無を確認し、それが無事であることを確認した上で、コップの捜索に時間を割くか否かを判断する、という流れになったと考えられます。これは、優先順位に基づいた合理的な判断と言えるでしょう。しかし、家族の方の言葉に惑わされず、「万が一、コップの中に重要なものが入っていたら？」という視点も必要です。例えば、入れ歯の洗浄剤や、薬を保管していた可能性も考えられます。

もし、コップの捜索に時間を費やし、他の利用者様のケアに支障をきたす可能性がある場合は、家族に状況を説明し、理解を求めることが大切です。 「現在、他の利用者様の対応に追われており、コップの捜索には時間を割くことが難しい」と伝えることで、家族の方も状況を理解し、協力してくれる可能性が高いでしょう。

３．チームワークと情報共有の重要性

今回のケースでは、コップは最終的に発見されましたが、もし発見されなかった場合、どのように対応すべきだったでしょうか？ この様な状況では、チームワークと情報共有が非常に重要になります。 各職員がそれぞれのフロアで発見した情報や、利用者様の行動履歴などを共有することで、より効率的に捜索を進めることができます。

例えば、「紛失物発見連絡システム」を導入し、各フロアに発見物を報告する仕組みを作ることで、迅速な対応が可能になります。また、定期的または必要に応じて、職員間で紛失物対応に関する情報共有の機会を設けることも有効です。 これにより、類似事例から学ぶことができ、より適切な判断基準を確立することができます。

４．職員の負担軽減と心のケア

介護職は、常に利用者様の安全と安心を第一に考え、多忙な日々を送っています。 紛失物対応もその一つであり、職員の負担軽減も重要な課題です。 そのため、業務効率化のための工夫や、チーム内での協力体制の構築が不可欠です。 また、職員の心のケアも忘れてはいけません。 紛失物対応に追われ、精神的に疲弊してしまう職員もいるかもしれません。 職場では、職員同士で相談し合える環境や、必要に応じて専門機関への相談窓口などを設けることが重要です。

５．まとめ：適切な判断とチームワークで安心安全な介護を

介護現場における紛失物対応は、優先順位を明確にし、チームワークを活かすことで、より円滑に進めることができます。 今回のケースのように、家族の方の言葉に惑わされることなく、冷静に状況を判断し、利用者様の安全と安心を最優先に行動することが大切です。 また、職員の負担軽減と心のケアにも配慮し、働きやすい環境を作ることで、質の高い介護サービスを提供することが可能になります。