介護職の悩み：過剰介護と適切なケアの境界線はどこ？～ホスピス契約利用者への対応とチームワークの重要性～

介護の職場での悩み相談です。私が勤めている介護施設では、24時間看護師が常駐している施設です。利用者の中には、一般的な介護契約と違いホスピス契約の利用者もいます。今、職場で問題になっているのが…1人のホスピス契約の利用者さんの介護に関してです。その方は首から下の身体が不随の状態、言葉はハッキリ発せないが、何とか伝わる程度、排泄に関しては、ポータブルトイレのみで行いたい…等、色々とありますが…事前に聞いていた内容と、入所後に分かってきた内容の違いが沢山出てきました。中でも問題になっているのが、体交や車椅子への移乗時の介助の事です。2人介助で行うのですが、利用者が納得される体勢になるまで、2人介助で行うのですが、毎回40分～1時間も要するのです。手や足の位置、角度、高さ、座り心地…毎回求められる注文が細かく、また一定しないのです。そのため他の利用者へのサービス提供に支障が生じる事もあります。それで、1人の職員が「ここまでやるのは過剰介護ではありませんか？」と、問題提起したのです。難しい部分なのですが…確かに「これも介護？単なる利用者のわがまま？」とか、思う事も多々あります。どこまでが介護で、どこからが過剰介護なのか…1人の方に2人の介護職員が、呼ばれる度に40分～1時間も取られるのは過剰介護でしょうか？

この記事では、介護職の皆さん、特にホスピス契約の利用者様をケアする中で直面する「過剰介護」と「適切なケア」の境界線について、具体的な事例を交えながら解説します。 高齢者介護、特に終末期ケアにおける倫理的な課題、そしてチーム医療やチームケアにおける連携の重要性についても深く掘り下げていきます。 読者の皆さんが、日々の業務の中で迷うことなく、利用者様にとって最善のケアを提供できるよう、具体的な解決策と、専門家としてのアドバイスを提供します。

ケーススタディ：ホスピス契約利用者と移乗介助の課題

質問にあるケースは、多くの介護施設で起こりうる現実的な問題です。ホスピス契約の利用者様は、残された時間を可能な限り穏やかに過ごしたいという強い思いを抱えています。そのため、移乗介助一つとっても、身体的な不快感だけでなく、精神的な安心感も考慮する必要があるのです。40分～1時間も要する介助は、一見過剰介護のように見えますが、利用者様の身体状況や精神状態、そして何より「納得感」を重視した結果である可能性も高いです。

ここで重要なのは、「過剰介護」の定義を正しく理解することです。過剰介護とは、利用者様の状態や意向を無視し、必要以上にサービスを提供することです。単に時間がかかったり、人員を多く必要とする介助が、必ずしも過剰介護とは限りません。利用者様の尊厳とQOL（生活の質）を最大限に尊重した上で、最善のケアを提供している限り、それは過剰介護とは言えないでしょう。

適切なケアとは？～利用者様の意向と職員の負担のバランス～

では、適切なケアとは何か？それは、利用者様の身体的・精神的ニーズを正確に把握し、その上で、可能な限り負担の少ない、安全で快適な介助を提供することです。質問のケースでは、利用者様の細かな要望に応えるために時間がかかっていますが、それが利用者様の安心感につながるのであれば、必ずしも過剰とは言い切れません。しかし、他の利用者へのケアに支障をきたすレベルであれば、改善策を検討する必要があります。

まず、利用者様の移乗介助に関する要望を、より詳細に記録し、チームで共有することが重要です。記録には、利用者様の言葉だけでなく、表情や身体の反応なども含めて、客観的に記述しましょう。そして、チームで共有することで、それぞれの職員が利用者様の意向を正確に理解し、よりスムーズな介助が可能になります。また、介助方法の標準化も検討しましょう。複数の職員で介助方法を統一することで、介助時間が短縮され、職員の負担軽減にも繋がります。さらに、より効率的な介助方法を検討するために、専門家（理学療法士など）のアドバイスを求めるのも有効です。

具体的な改善策：

• 記録の共有：利用者様の移乗介助に関する記録を、詳細に記録し、チームで共有するシステムを導入する。
• 介助方法の標準化：チームで介助方法を統一し、マニュアルを作成する。
• 専門家の活用：理学療法士などの専門家に相談し、より効率的な介助方法を学ぶ。
• 職員間の連携強化：チームミーティングなどを活用し、職員間のコミュニケーションを強化する。
• 機器の活用：スリングや電動リフトなどの機器を活用することで、職員の負担を軽減する。
• 人員配置の見直し：必要に応じて、人員配置を見直す。

過剰介護と捉えられやすいケースと、そうでないケースの区別

「過剰介護」と判断されるケースと、そうでないケースを明確に区別することは、介護現場において非常に重要です。単に時間がかかったり、人員を多く必要とする介助が、必ずしも過剰介護とは限りません。しかし、以下の様なケースは過剰介護と捉えられやすいです。

• 利用者様の意向を無視した介助：利用者様の意思や身体状況を無視して、職員の都合の良いように介助を行う。
• 必要以上のサービス提供：利用者様の状態を考慮せず、必要以上のサービスを提供する。
• 他の利用者へのサービス提供に支障をきたすレベルの介助：1人の利用者への介助に時間をかけすぎることで、他の利用者へのケアが滞る。
• 職員の負担軽減のための不適切な介助：職員の負担を軽減するために、利用者様の安全や快適性を犠牲にする介助を行う。

一方、利用者様の尊厳とQOLを最大限に尊重した上で、最善のケアを提供している限り、たとえ時間がかかったり、人員を多く必要とする介助であっても、過剰介護とは判断されにくいでしょう。例えば、利用者様の細やかな要望に応えることで、精神的な安心感を与え、穏やかな時間を過ごせるようにしている場合などは、適切なケアと評価される可能性が高いです。

チームワークの重要性と、専門家への相談

介護現場では、チームワークが非常に重要です。特に、ホスピス契約の利用者様へのケアは、多職種連携が不可欠です。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、ケアマネージャーなど、それぞれの専門家が連携することで、利用者様にとって最適なケアを提供できます。チームで情報共有を行い、それぞれの専門家の意見を聞きながら、利用者様にとって最善のケアプランを作成することが重要です。

もし、現状の対応に迷いを感じたり、解決策が見つからない場合は、躊躇せずに専門家に相談しましょう。介護支援専門員や、施設の管理者、あるいは外部の相談機関などに相談することで、客観的な視点を得ることができ、より適切な対応策を見つけることができます。

まとめ

介護職は、利用者様の尊厳とQOLを最大限に尊重しながら、適切なケアを提供することが求められます。ホスピス契約の利用者様への対応は、特に難しい課題ですが、チームワークを強化し、専門家のアドバイスを積極的に活用することで、乗り越えることができます。今回のケースのように、時間のかかる介助であっても、それが利用者様の安心感につながるのであれば、必ずしも過剰介護とは言えません。しかし、他の利用者へのケアに支障をきたす場合は、改善策を検討する必要があります。記録の共有、介助方法の標準化、専門家の活用、職員間の連携強化など、様々な方法で改善を図りましょう。そして、何よりも大切なのは、利用者様一人ひとりのニーズを丁寧に理解し、寄り添う姿勢です。

※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別のケースへの具体的なアドバイスを保証するものではありません。個々の状況に合わせた適切な対応については、専門家にご相談ください。