認知症の祖母の食欲不振と精神状態…家族ができること、専門家のアドバイスと介護のヒント

以下は、介護中のご家族が抱える悩みについてまとめたものです。認知症の祖母の食欲不振、精神状態の悪化、そして家族として何ができるのかという深い苦悩が伝わってきます。専門家のアドバイスと、具体的な介護のヒントを通じて、少しでもお役に立てれば幸いです。

祖母（84）は2年前に脳梗塞を発症し左半身麻痺。要介護4で特養に入所しました。車椅子への移乗は全介助、食事（ペースト食）は自力摂取出来ており、コミュニケーションも脳梗塞発症前と比較するとかなり落ちましたが、会話可能で認知面も年相応な印象でした。1ヶ月半前から被害妄想が始まり、２週間前に食欲がなくなり病院へ入院しました。嚥下は問題ないそうですが、本人がお腹減らないと。入院の際に母が面会しましたが、ほとんど表情もなく、誰がきてるのか認識しているのかも分からない状態だったそうです。先生からはこのまま食欲が戻らなければ胃瘻や中心静脈栄養法に切り替えるか、何もしないかと言われています。コロナで面会も出来ず、もどかしい日々を過ごしています。認知症がかなり進行しており、難しいとは思うのですが認知症に詳しい方、何か家族にできることはないか教えていただきたいです。もう戻ることは難しいのかなとおもう反面、どうにかしたいなと思ってしまいます。よろしくお願いします。

はじめに：現状の整理と、私たちができること

ご家族の皆様、心中お察しいたします。愛するお祖母様の病状悪化、そしてコロナ禍での面会制限という状況は、計り知れないご心痛のことと思います。今回の相談内容を拝見し、まずは現状を整理し、私たちができることを具体的に考えていきましょう。

お祖母様の状況は、脳梗塞による身体機能の低下、認知症の進行、そして食欲不振と精神的な不安定さ（被害妄想）が複合的に絡み合っている状態です。このような状況下で、ご家族が抱える不安は非常に大きいものです。しかし、諦めることなく、できることは必ずあります。専門家のアドバイスを参考にしながら、ご家族としてできることを一つずつ確認していきましょう。

1. 認知症の理解を深める

まず、認知症について正しく理解することが重要です。認知症は、単なる物忘れとは異なり、脳の機能が徐々に低下していく病気です。進行具合や症状は人それぞれであり、一概に「こうなる」と決めつけることはできません。しかし、認知症の進行に伴い、以下のような症状が現れることがあります。

• 記憶障害：新しいことを覚えられなくなる、過去の記憶が曖昧になる。
• 見当識障害：時間、場所、人物が分からなくなる。
• 理解力・判断力の低下：物事の判断ができなくなる、複雑な指示が理解できなくなる。
• 実行機能障害：計画を立てたり、手順通りに物事を進めることが難しくなる。
• 感情の変化：不安、怒り、抑うつなどの感情が強くなる。
• 行動の変化：徘徊、暴言、暴力、異食など。
• 精神症状：幻覚、妄想など。

お祖母様に見られる被害妄想は、認知症の精神症状の一つです。これは、現実とは異なる考えを信じ込んでしまう状態で、本人の不安や恐怖から生じることがあります。このような症状が出ている場合、ご家族は冷静に対応し、本人の不安を和らげるように努める必要があります。

認知症について理解を深めるためには、専門医や専門機関から情報収集することが大切です。認知症に関する書籍やウェブサイトも役立ちますが、信頼できる情報源を選ぶようにしましょう。

2. 医療との連携を密にする

お祖母様の現在の状況を改善するためには、医療機関との連携が不可欠です。主治医や看護師と密にコミュニケーションを取り、以下の点について確認しましょう。

• 病状の詳細：現在の病状、食欲不振の原因、精神状態について詳しく説明を受けましょう。
• 治療方針：胃瘻や中心静脈栄養法などの治療法について、メリットとデメリットを理解し、家族としての意思決定をしましょう。
• 服薬管理：認知症の症状を緩和する薬や、精神安定剤などの服薬状況を確認し、疑問点があれば質問しましょう。
• リハビリテーション：身体機能の維持・回復のためのリハビリテーションの実施状況を確認しましょう。
• 今後の見通し：病状の進行具合や、今後の見通しについて説明を受け、家族としての心構えをしましょう。

コロナ禍で面会が制限されている場合でも、電話やオンライン面会などを活用して、医療スタッフとのコミュニケーションを積極的に行いましょう。また、可能であれば、主治医や看護師に、お祖母様の普段の様子や性格などを伝えて、より適切なケアを受けられるように協力しましょう。

3. 食欲不振への対応

食欲不振は、高齢者、特に認知症の方にとって深刻な問題です。栄養不足は、体力低下や認知機能の悪化を招き、さらに病状を悪化させる可能性があります。食欲不振への対応として、以下の点を試してみましょう。

• 食事環境の改善：
  • 食事の時間や場所を固定し、落ち着いて食事ができる環境を整えましょう。
  • テレビを消し、静かな環境で食事をしましょう。
  • 明るく、清潔な食卓を用意しましょう。
  • 可能であれば、お祖母様の好きな音楽を流すのも良いでしょう。
• 食事内容の工夫：
  • 食べやすく、飲み込みやすい形態の食事（ペースト食など）を提供しましょう。
  • 彩り豊かで、見た目も楽しめる食事を心がけましょう。
  • 味付けを工夫し、食欲を刺激しましょう。
  • 少量多食を心がけ、一度にたくさん食べられなくても、こまめに食事を提供しましょう。
  • 栄養補助食品やサプリメントも活用しましょう。
• 食事介助の工夫：
  • 食事の介助をする際は、落ち着いた声で話しかけ、ゆっくりと食べさせましょう。
  • 食事の前に、お祖母様の好きな食べ物の話をするなど、食欲を刺激する声かけをしましょう。
  • 食べさせるスピードを調整し、無理強いしないようにしましょう。
  • 食事中にむせたり、飲み込みにくそうにしている場合は、無理に食べさせないようにしましょう。
• 専門家への相談：
  • 管理栄養士に相談し、栄養バランスの取れた食事メニューを作成してもらいましょう。
  • 言語聴覚士に相談し、嚥下機能の評価や、安全な食事方法についてアドバイスを受けましょう。

4. 精神的なケア

被害妄想などの精神症状は、本人の不安や恐怖から生じることがあります。ご家族は、お祖母様の気持ちに寄り添い、安心感を与えるように努めましょう。具体的には、以下の点を心がけましょう。

• 傾聴：お祖母様の訴えをよく聞き、共感する姿勢を示しましょう。否定したり、頭ごなしに否定したりせず、「つらいね」「大変だったね」など、共感の言葉をかけましょう。
• 安心感を与える：落ち着いた声で話しかけ、穏やかな表情で接しましょう。スキンシップ（手をつなぐ、抱きしめるなど）も有効です。
• 環境調整：刺激の少ない、落ち着ける環境を整えましょう。
• 薬物療法：精神症状が酷い場合は、精神科医に相談し、薬物療法を検討しましょう。
• 専門家への相談：認知症専門医や精神科医、精神保健福祉士などに相談し、適切なアドバイスを受けましょう。

コロナ禍で面会が制限されている状況では、ご家族が直接ケアをすることが難しい場合があります。その場合は、施設職員と連携し、お祖母様の様子について情報交換をしたり、オンライン面会などを活用して、できる限りコミュニケーションを取りましょう。

5. 家族の心のケア

介護は、ご家族にとって心身ともに負担の大きいものです。特に、認知症の介護は、終わりが見えない不安や、症状の進行に対する無力感など、様々な感情が入り混じり、精神的な負担が大きくなりがちです。ご家族自身の心のケアも非常に重要です。

• 情報収集：認知症に関する情報を集め、病気について理解を深めましょう。
• 休息：十分な睡眠を取り、休息時間を確保しましょう。
• 気分転換：趣味や好きなことをする時間を作り、ストレスを発散しましょう。
• 相談：家族や友人、専門家（医師、カウンセラーなど）に相談し、悩みを打ち明けましょう。
• サポート：介護保険サービスや、地域のサポート体制を活用しましょう。
• 罪悪感を手放す：「もっと何かできるのではないか」という罪悪感を感じることもあるかもしれませんが、自分を責めずに、できる範囲で精一杯のケアをしましょう。

一人で抱え込まず、周囲のサポートを積極的に活用することが大切です。介護保険サービスを利用したり、地域の相談窓口に相談したりすることも有効です。

6. 胃瘻や中心静脈栄養法について

主治医から胃瘻や中心静脈栄養法を提案されているとのことですが、これらの治療法には、それぞれメリットとデメリットがあります。ご家族は、これらの情報を十分に理解した上で、意思決定をする必要があります。

胃瘻

胃瘻は、お腹に小さな穴を開け、そこから胃に直接栄養を送る方法です。メリットとしては、

• 長期的な栄養補給が可能であること
• 誤嚥性肺炎のリスクを軽減できる可能性があること
• 経口摂取が困難な場合でも、栄養を確保できること

などが挙げられます。一方、デメリットとしては、

• 手術が必要であること
• 感染症のリスクがあること
• 胃瘻からの栄養補給に慣れるまで時間がかかること

などが挙げられます。

中心静脈栄養法

中心静脈栄養法は、太い血管（中心静脈）にカテーテルを挿入し、そこから栄養剤を点滴する方法です。メリットとしては、

• 短期間で集中的な栄養補給が可能であること
• 消化管を使用しないため、消化器系の負担が少ないこと

などが挙げられます。一方、デメリットとしては、

• 感染症のリスクが高いこと
• 血管に負担がかかること
• 長期間の栄養補給には向かないこと

などが挙げられます。

これらの治療法を選択するかどうかは、お祖母様の病状、予後、ご家族の意向などを総合的に考慮して決定する必要があります。主治医とよく相談し、それぞれの治療法のメリットとデメリットを理解した上で、家族としての意思決定をしましょう。

7. 介護保険サービスの活用

介護保険サービスを積極的に活用することも、介護負担を軽減するために有効です。お祖母様が利用できる介護保険サービスには、以下のようなものがあります。

• 訪問介護：ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事、入浴、排泄などの介助を行います。
• 訪問看護：看護師が自宅を訪問し、健康管理や医療処置を行います。
• 通所介護（デイサービス）：日中に施設に通い、食事、入浴、レクリエーションなどのサービスを受けます。
• 短期入所生活介護（ショートステイ）：短期間、施設に入所し、介護サービスを受けます。
• 福祉用具のレンタル：車椅子や介護ベッドなどの福祉用具をレンタルできます。
• 住宅改修：手すりの設置や段差の解消など、住宅の改修費用の一部を補助してもらえます。

これらのサービスを利用することで、ご家族の介護負担を軽減し、お祖母様の生活の質を向上させることができます。ケアマネージャーに相談し、お祖母様の状況に合わせたサービスを検討しましょう。

8. 今後の見通しと、心の準備

認知症は進行性の病気であり、症状は徐々に悪化していく可能性があります。ご家族は、今後の見通しについて、主治医やケアマネージャーとよく話し合い、心の準備をしておくことが大切です。病状の進行に伴い、お祖母様の身体機能や認知機能が低下し、介護の負担が増えることも考えられます。しかし、絶望することなく、できることを一つずつ行い、お祖母様を支えていくことが重要です。

また、ご家族は、お祖母様の尊厳を守り、最後まで寄り添うという覚悟を持つことも大切です。認知症が進み、意思疎通が難しくなっても、お祖母様は人間としての尊厳を持っています。ご家族は、お祖母様の気持ちを尊重し、優しく接するように心がけましょう。

9. 成功事例と専門家の視点

認知症の介護は困難な道のりですが、多くのご家族が、様々な工夫をしながら、認知症の方を支えています。以下に、成功事例と専門家の視点をご紹介します。

成功事例1：コミュニケーションの工夫

認知症の初期段階にあるAさんは、物忘れが多くなり、家族との会話が減っていました。そこで、ご家族は、Aさんの好きなことや思い出話をする時間を増やし、Aさんの話に耳を傾けるようにしました。その結果、Aさんは、徐々に心を開き、家族とのコミュニケーションが活発になりました。専門家は、「認知症の方とのコミュニケーションは、言葉だけでなく、表情や声のトーン、ボディランゲージなども重要です。相手の気持ちに寄り添い、共感する姿勢を示すことが大切です」と述べています。

成功事例2：環境調整の工夫

Bさんは、夜間に徘徊することが多く、ご家族は困っていました。そこで、ご家族は、Bさんの部屋の照明を明るくし、昼夜の区別をつけやすくしました。また、Bさんの好きな音楽を流したり、アロマを焚いたりして、落ち着ける環境を整えました。その結果、Bさんの徘徊が減り、夜間も安眠できるようになりました。専門家は、「認知症の方にとって、環境は非常に重要です。落ち着ける環境を整えることで、不安を軽減し、症状を緩和することができます」と述べています。

専門家の視点：認知症ケアのポイント

認知症ケアの専門家は、以下の点を重要視しています。

• 本人の気持ちに寄り添う：認知症の方の気持ちを理解し、共感する姿勢が大切です。
• 本人の能力を活かす：できることは、できる限り自分でしてもらい、自尊心を保つようにしましょう。
• 環境を整える：安全で、落ち着ける環境を整えましょう。
• 家族のサポート：家族だけで抱え込まず、周囲のサポートを活用しましょう。
• 専門家との連携：医師やケアマネージャーなど、専門家と連携し、適切なケアを受けましょう。

10. まとめ：諦めない介護、寄り添う心

今回の相談内容から、お祖母様の病状、そしてご家族の深い愛情と苦悩が伝わってきました。認知症の介護は、決して楽なものではありません。しかし、諦めずに、できることを一つずつ行い、お祖母様に寄り添うことが大切です。

今回の記事でご紹介した情報を参考に、医療機関との連携を密にし、食欲不振への対策を講じ、精神的なケアを行い、介護保険サービスなどを活用しながら、ご家族の心のケアも忘れずに行ってください。そして、何よりも、お祖母様の気持ちに寄り添い、愛情を持って接することが大切です。困難な状況ではありますが、ご家族の皆様が、お祖母様と穏やかな時間を過ごせることを心から願っています。

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