介護職の判断に迷う？バイタル低下の入浴対応とヒヤリハット・アクシデントの線引き

介護職のお話しです。 デイサービスで来所されたご利用者様なんですが、バイタルが低く、ナースよりシャワー浴対応でと、指示があったんですが、ご本人様が湯船に浸かりたいと言っていたとのことで、入浴担当が湯船に入れてしまいました。 その後、そのご利用者にはに異常はなかったんですが、これ入浴担当者は、ヒヤリハットなんでしょうか、アクシデントなんでしょうか。

この記事では、介護職の現場で起こりうる判断に迷う場面、特にバイタル低下時の入浴対応について、ヒヤリハットとアクシデントの線引きを明確に解説します。 経験豊富な介護職の方、これから介護職を目指している方、そして介護現場の管理者の方にとって、実務に役立つ具体的な事例とアドバイスを提供します。 安全な介護サービスの提供、そして自身のキャリアを守るための知識を深めていきましょう。

ケーススタディ：バイタル低下と入浴希望

今回のケースは、デイサービスにおけるご利用者様の入浴対応に関するものです。ナースからの指示はシャワー浴でしたが、ご利用者様ご自身の希望により、入浴担当者が湯船での入浴を許可しました。幸いにもご利用者様に異常は発生しませんでしたが、この状況はヒヤリハットと捉えるべきでしょうか、それともアクシデントでしょうか？

結論から言うと、これはヒヤリハットに該当します。

アクシデントとは、実際に事故や怪我、健康状態の悪化といった具体的な被害が発生した事象を指します。今回のケースでは、ご利用者様に異常がなかったため、アクシデントとは断定できません。

しかし、ナースからの指示を無視し、バイタルが低い状態での湯船入浴を許可した行為は、潜在的に危険性を孕んでいました。もし、ご利用者様の状態が悪化していたら、深刻な事態に発展していた可能性があります。このような、事故や怪我には至らなかったものの、起こりうる危険性を認識した事象こそが、ヒヤリハットなのです。

ヒヤリハット報告の重要性と具体的な手順

ヒヤリハットは、単なる「失敗談」ではありません。それは、将来の事故を未然に防ぐための貴重な情報源です。今回のケースのように、ナースの指示とご利用者様の希望の間で葛藤が生じた状況は、介護現場では決して珍しくありません。

ヒヤリハット報告は、以下の手順で行うことをお勧めします。

1. 事実の記録：いつ、どこで、誰が、どのような状況下で、何が起こったのかを詳細に記録します。日付、時間、場所、関係者、具体的な行動、ご利用者様の状態などを明確に記述しましょう。今回のケースでは、「〇〇年〇月〇日、デイサービスAにて、バイタル低下の利用者Bに対し、ナースの指示（シャワー浴）と利用者Bの希望（湯船入浴）の食い違いが生じた」といった記述が重要です。
2. 原因の分析：なぜそのような状況が発生したのかを分析します。今回のケースでは、ナースの指示が利用者Bの希望を十分に考慮していなかったこと、入浴担当者がナースの指示を優先すべきだったことなどが考えられます。コミュニケーション不足や判断基準の曖昧さが原因として挙げられます。
3. 再発防止策：今後同じような状況が発生しないように、どのような対策を講じるべきかを検討します。例えば、バイタル低下時の入浴対応に関するマニュアルの見直し、ナースと入浴担当者間の情報共有体制の強化、ご利用者様の意思を尊重しつつ安全を確保するための手順の明確化などが考えられます。
4. 報告書の作成：上記の事実、原因、対策をまとめた報告書を作成し、関係部署に提出します。報告書は、客観的な事実を基に、感情的な表現を避け、具体的かつ簡潔に記述することが重要です。

介護職における判断基準の明確化

介護現場では、常に迅速かつ的確な判断が求められます。しかし、判断基準が曖昧だと、今回のケースのように、ヒヤリハットにつながる可能性があります。

そこで、施設や事業所全体で、バイタル低下時の入浴対応に関する明確な判断基準を設けることが重要です。例えば、以下の項目を考慮した判断基準を作成することをお勧めします。

• バイタルサインの数値：具体的な数値を基準に、シャワー浴、湯船入浴、入浴中止の判断を明確化します。
• ご利用者様の状態：意識レベル、体力、体調などを考慮します。医師の指示や既往歴なども重要な情報です。
• ご利用者様の意思：可能な限り、ご利用者様の意思を尊重します。しかし、安全を確保できない場合は、意思を尊重できないこともあります。その判断基準も明確化しておく必要があります。
• 緊急時の対応：バイタル低下が急激に悪化した場合の対応手順を明確化します。誰が、どのような対応をするのかを事前に決めておくことで、迅速な対応が可能になります。

これらの判断基準をマニュアルとして作成し、全職員で共有することで、ヒヤリハット発生のリスクを軽減できます。

専門家からのアドバイス：経験豊富な介護職の視点

長年介護職に従事してきたベテランの視点から、今回のケースについてアドバイスをさせていただきます。

まず、ナースの指示はあくまで「推奨」であり、絶対的なものではないと理解することが重要です。ご利用者様の状態や意思を総合的に判断し、安全を最優先した上で、最善の対応を選択する必要があります。

しかし、指示と異なる対応を選択する際には、その理由を明確に記録し、上司や同僚と共有することが不可欠です。後から問題が発生した場合でも、記録があれば、自身の判断の正当性を説明することができます。

また、日頃からご利用者様とのコミュニケーションを密にすることで、個々のニーズや希望を把握し、より適切な対応が可能になります。

さらに、定期的な研修や勉強会に参加し、最新の知識や技術を習得することで、より安全で質の高い介護サービスを提供できるようになります。

まとめ

介護職は、専門知識と高度な判断力が求められる責任ある仕事です。今回のケースのように、判断に迷う場面は多々あります。しかし、ヒヤリハット報告を積極的に行い、原因分析と再発防止策を検討することで、より安全な介護サービスの提供に繋げることが可能です。

判断基準を明確化し、チーム全体で共有することで、個々の判断の質を高め、事故や怪我を未然に防ぐことができます。そして、日々の業務の中で、ご利用者様の状態や意思を常に意識し、安全を最優先した対応を心がけることが、介護職にとって最も重要なことです。 もし、介護職としてのキャリアに悩んだり、より良い働き方を模索している場合は、専門家への相談も検討してみてください。