介護現場の移乗介助：高齢者の不安を軽減する具体的な方法

介護職に携わってる看護師さん介護士さん、ケアマネさん。教えてください。母が介護型老人ホームに入居しています。自分では体を動かせないので、離床の時間には、寝たままの状態で大のバスタオルを身体の下にしいて、リクライニングになる車椅子に乗せてもらっています。その時の事で御相談なのですが、頭側と足側に1人づつバスタオルの端をもってせーの で移乗するのですが、母がどうしてもこの瞬間が怖いようで、(1度体が浮く感じになるので怖い)、看護師さん達が、お腹の上に手を乗せてね と言っても、ベットの柵を握りしめてしまって、毎回てこづっているようです。私がいる時は、お腹の上で両手を握ってあげてるとギュッと掴んで怖くないようです。何かにつかまっているとこわくないと思うので、何かつかむもの？か他によい方法があれば教えていただけませんか。最近は、それが怖いからか、車椅子に乗るよーと声かけをすると目をつぶって寝たフリ？をするようになってしまったそうです。

この記事では、介護施設に入居されているご高齢者の移乗介助における不安軽減について、具体的な解決策を提案します。特に、車椅子への移乗時に感じる恐怖心を取り除き、スムーズな介助を実現するための方法を、介護現場のプロの視点と、ご家族の立場を踏まえて解説します。 ご自身の母親の状況と照らし合わせながら、ぜひ参考にしてみてください。 高齢者の不安軽減、安全な移乗介助、そして介護職員の負担軽減という３つの観点を重視した、実践的なアドバイスを提供していきます。

1. 高齢者の不安：なぜ「浮く感覚」が怖いのか？

ご質問にあるように、寝たままの状態から車椅子への移乗は、高齢者にとって大きな不安要素となります。特に「体が浮く感覚」は、バランス感覚の低下や、転倒への恐怖心を刺激します。 これは、単なる物理的な感覚だけでなく、自立性の喪失や身体的弱さへの不安といった心理的な側面も深く関わっています。 ご母親がベッドの柵を握りしめるのは、まさにこの不安を軽減しようとする本能的な行動なのです。 目をつぶって寝たふりをされるのも、移乗への恐怖を回避しようとする行動と捉えることができます。

2. 現状の移乗方法の問題点と改善策

現状の「バスタオルを用いた二人介助」は、確かに簡便な方法ですが、高齢者にとって不安定な状態になりやすく、恐怖感を増幅させる可能性があります。 特に、せーので同時に行う方法は、タイミングがずれると、身体に負担がかかり、危険性も高まります。 改善策として、以下の点を検討しましょう。

• スライディングボードの活用： スライディングボードを使用することで、身体を滑らせるように移乗できるため、浮く感覚を最小限に抑えられます。 介護職員の負担も軽減され、安全性の向上にも繋がります。 ボードの種類も様々なので、ご高齢者の状態に合ったものを選択することが重要です。
• 移乗シートの活用： 移乗シートは、身体を包み込むように支えるため、安心感を与え、転倒リスクを低減します。 様々な素材や形状のものが市販されているので、ご高齢者の体型や状態に最適なものを選んでください。
• 介助者の配置の見直し： 二人介助の場合、一人ずつがバスタオルの端を持つのではなく、一人が身体を支え、もう一人が車椅子を操作するなど、役割分担を明確にすることが重要です。 連携を密にすることで、スムーズで安全な移乗が可能になります。 また、介助者は常に高齢者の表情や反応に注意を払い、声かけを丁寧に行うことが大切です。
• ポジショニングの工夫： 移乗前に、高齢者の体位を適切に調整することで、移乗時の負担を軽減できます。 例えば、枕やクッションを使用して、身体を安定させたり、体幹をサポートしたりすることで、安心感を高めることができます。

3. 高齢者の心理的な不安への対応

物理的な工夫に加え、高齢者の心理的な不安への対応も重要です。 ご家族であるあなたが、お腹の上で両手を握ってあげると安心するという事実は、安心感を与える触覚的接触の重要性を示しています。

• 言葉かけの工夫： 「車椅子に乗るよ」という一方的な指示ではなく、「○○さん、一緒に車椅子に乗ろうか」といった、共感的な言葉かけを心がけましょう。 高齢者のペースに合わせて、ゆっくりと時間をかけて行うことが大切です。 また、移乗の過程を丁寧に説明することで、不安を軽減することができます。
• 視覚的な工夫： 移乗前に、車椅子を視覚的に確認させることで、不安を軽減できます。 また、移乗中も、高齢者の視界に介助者が常にいるようにすることで、安心感を与えられます。
• 音楽療法： 穏やかな音楽を流すことで、リラックス効果を高め、不安を軽減することができます。 音楽療法は、高齢者の精神的な安定に効果的な手段です。
• 握るものの提供： ご質問にあるように、何か握るものがあると安心する場合は、ベッドサイドに握りやすいぬいぐるみや、柔らかいタオルなどを用意しましょう。 安全面にも配慮し、転倒防止にも繋がるようなものを選ぶことが大切です。

4. 介護職員への連携と相談

介護施設の職員と連携し、ご母親の状態を共有し、最適な移乗方法を検討することが重要です。 職員の意見を聞き入れ、様々な方法を試行錯誤することで、ご母親にとって最も安全で安心できる方法を見つけることができます。 また、介護職員の負担軽減のためにも、効果的な移乗方法の検討は不可欠です。 定期的に職員と話し合い、改善点を見つけるようにしましょう。

5. 専門家への相談

それでも不安が解消されない場合は、専門家への相談を検討しましょう。 理学療法士や作業療法士は、高齢者の身体機能や心理状態を考慮した上で、最適な移乗方法を提案してくれます。 また、介護相談窓口なども活用することで、より具体的なアドバイスを得ることができます。

6. まとめ

高齢者の車椅子への移乗は、身体的な負担だけでなく、心理的な不安も大きく関わっています。 安全でスムーズな移乗を実現するためには、物理的な工夫と、高齢者の心理的な状態への配慮が不可欠です。 この記事で紹介した方法を参考に、ご家族と介護職員が協力し、ご母親にとって最適な方法を見つけていきましょう。 そして、常に高齢者の状態に注意を払い、安全第一で介助を行うことが重要です。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療的なアドバイスではありません。具体的な対応については、必ず専門家にご相談ください。