介護職における視覚障碍者への適切な介助：安全と配慮のバランス

介護現場にいる方 是非ご教示ください。老人ホームに入居しています。3日前から目の不自由な高齢者の方が入居していらっしゃいました。その方を食堂に案内する時など介護職員の方は、手を引いたり、全くその方に触れず右だ左だと目の前を案内、遮ったりしています。私はretireしてからここにくるまで、インド、コルカタのマザーテレサのハッシュパヴァンの、死に行くものの家、というカテゴリー的に言うとホスピスで身障者の方をケアするボランティアをしていたことがあります。盲目の方を案内するにはその方に自分の肩に手を添えてもらって案内するというのが正しいやり方ですーーーとインドでは指導され実践してきました。しかし、事故防止のためにここでは入居者が他の入居者に一切の案内、指導をしていけない。車椅子の方の車椅子を押して差し上げてはいけないというきついルールがありそれを破るととてもきつい指導（笑）が入ります。そのことをここの責任者及び介護者あるいはケアマネージャーの方に申し上げようと思うのですが、この方々の立場、この施設の私を含めたヒエラルキーの立場、一生懸命善意で従事なさってる方々のprideを思うと言えないで困っています。どうしたらいいかーー介護職にいる方 ご教示ください。

ご質問ありがとうございます。長年介護のボランティアをされていた経験をお持ちで、視覚障碍者の方への適切な介助方法について、ご自身の経験と施設のルールとの間に葛藤を感じていらっしゃる状況がよく分かります。インドでのボランティア経験で培われたご自身の知識と、日本の介護施設における安全管理のルールとの間で、どのように折り合いをつけていくか、非常に悩ましい問題ですね。

結論から申し上げると、施設のルールを尊重しつつ、より安全で、かつ視覚障碍者の方にとって快適な介助方法を提案していくことが重要です。いきなりルール違反を指摘するのではなく、まずは現状の介助方法の問題点と、改善案を丁寧に説明することが大切です。

現状の問題点の整理

現在の介助方法には、以下の2つの問題点が考えられます。

• 安全性の確保：手を引く介助は、転倒リスクが高いとされています。また、言葉だけで誘導する方法は、視覚障碍者の方にとって不安感を増幅させる可能性があります。
• 尊厳の保持：視覚障碍者の方を「介助される側」として一方的に扱う方法は、その方の自立心を阻害し、尊厳を傷つける可能性があります。

改善案の提案：安全と尊厳を両立する介助

インドでの経験に基づいた「肩に手を添えてもらう方法」は、確かに効果的ですが、日本の介護施設では、転倒リスクや他の入居者との接触による事故のリスクを考慮し、必ずしも推奨されている方法ではありません。しかし、全く同じ方法を導入する必要はありません。重要なのは、「安全」と「尊厳」を両立できる方法を見つけることです。

そこで、以下の改善案を提案します。

• 「軽く腕を添える」介助：完全に手を引くのではなく、軽く腕を添えることで、視覚障碍者の方の不安を軽減し、転倒リスクを低減できます。この方法は、身体的接触を最小限に抑えつつ、安心感を提供できます。
• 誘導棒の使用：誘導棒を使用することで、視覚障碍者の方自身が周囲の状況を把握しやすくなり、自立性を高めることができます。施設によっては、誘導棒の貸し出しや使用方法の指導を行っている場合もあります。
• 環境整備：食堂への導線を明確にする、床の段差をなくす、照明を明るくするなどの環境整備を行うことで、視覚障碍者の方にとって安全で分かりやすい空間を作ることができます。これは、施設全体の安全性を高めることにも繋がります。
• 丁寧なコミュニケーション：視覚障碍者の方と積極的にコミュニケーションを取り、その方のペースや希望を丁寧に確認することで、より安心で快適な介助を提供できます。例えば、「○○さん、大丈夫ですか？」「何か困ったことがあれば、いつでも声をかけてくださいね」など、言葉をかけることで安心感を高められます。

提案方法：具体的な手順

責任者やケアマネージャーに改善案を提案する際には、以下の手順を踏むことをお勧めします。

1. 現状の問題点を具体的に説明する：「言葉だけで誘導すると、視覚障碍者の方が不安を感じ、転倒リスクが高まる可能性がある」など、具体的な事例を挙げて説明します。
2. 改善案を具体的に提示する：「軽く腕を添える介助」や「誘導棒の使用」など、具体的な改善策を提案します。それぞれのメリット・デメリットについても説明することで、説得力を高めることができます。
3. 安全性を重視することを強調する：「安全性を確保しつつ、視覚障碍者の方の尊厳を尊重する介助方法を模索したい」と、施設の安全管理への配慮を示すことが重要です。
4. 協働体制を築く：「一緒に安全で快適な介助方法を検討していきましょう」という姿勢を示し、施設側と協働して改善を進めていくことを提案します。
5. 文献や資料を提示する：視覚障碍者への適切な介助方法に関する文献や資料を提示することで、提案の信頼性を高めることができます。専門機関のウェブサイトや書籍などを参考にするといいでしょう。

これらの改善案を提案する際には、感情的にならず、冷静かつ客観的に説明することが重要です。施設のルールや安全管理の重要性を理解した上で、より良い介助方法を提案することで、施設側も納得してくれる可能性が高まります。

成功事例：他施設での取り組み

ある介護施設では、視覚障碍者の方への介助方法を見直すため、視覚障碍者の方自身や、視覚障碍者支援団体からの意見を聞き入れ、独自の介助マニュアルを作成しました。その結果、事故件数が減少するとともに、視覚障碍者の方の満足度も向上しました。この事例のように、施設と利用者、そして専門家の協働によって、より良い介助方法を確立していくことが重要です。

専門家の視点：介護福祉士の意見

介護福祉士の経験から言えることは、安全と尊厳の両立は、常に介護現場で課題となっています。今回のケースでは、施設のルールと、ご自身の経験に基づいた適切な介助方法との間に葛藤があるため、まずは施設の担当者と話し合い、現状の問題点と改善案を提示することが重要です。その際、感情的にならず、冷静に、そして具体的な事例を交えて説明することが、理解を得るための鍵となります。また、専門機関への相談も有効な手段です。

まとめ

介護現場における視覚障碍者への適切な介助は、安全と尊厳のバランスを考慮することが重要です。施設のルールを尊重しつつ、より安全で快適な介助方法を提案し、施設側と協働して改善を進めていくことが大切です。まずは、現状の問題点と改善案を丁寧に説明し、施設側の理解を得る努力をしましょう。それでも解決しない場合は、専門機関への相談も検討してみてください。