介護施設入居を拒否する認知症の親への対応：入居相談員が教える、家族を支えるための実践的アドバイス

この記事では、介護付有料老人ホームの入居相談員として働くあなたが直面する、認知症の高齢者の施設入居に関する困難な状況について、具体的な解決策と心のケアを提案します。入居を拒否する入居希望者、そしてその家族の双方を支えるために、専門的な知識と実践的なアドバイスを提供します。認知症ケア、家族とのコミュニケーション、施設との連携など、多角的な視点から問題解決に取り組み、入居相談員の皆様が自信を持って業務に取り組めるようサポートします。

介護付有料老人ホームの入居相談員です。入居検討者の方の７８歳の父親の件で相談したく、投稿させていただきます。

今まで元気だったのですが認知症が進み、施設入居を検討し、契約を済ませました。行くことも自分で決めたのですが、数分後行くことを拒否しはじめ、このことが何回か続き、結局入居を断念しました。

数ケ月後、また本人から入居したいと言われ、契約しましたが、また同じで拒否により同じく断念しました。

どちらの施設も見学したこと、契約したことを忘れており、自分はこのまま戸建てで生活できると思っています。体験入居もすすめましたが駄目です。

病院へ行くのも拒否しており、認知症の薬はまったく飲んでいません。

娘、息子、兄弟の言うことはまったく聞かず、家族は困りはてています。家族は住んでいるところからも離れています。

徘徊は無く、食事は何か自分で食べているようです。もちろんヘルパーも雇っていません。介護認定の手続きも拒否により出来ていません。

認知症だからというこで終わらせたくなく、家族は入居を強く望んでおり、出来ればこのままお断りせず、入居させたいのですが、何か良い方法はないでしょうか？経験多い方のアドバイスお願いいたします。

はじめに：入居相談員としてのあなたの役割

介護付有料老人ホームの入居相談員として、あなたは入居希望者とその家族にとって、非常に重要な存在です。今回のケースでは、認知症の進行により入居を拒否する高齢者と、その対応に苦慮する家族の間で、どのようにサポートしていくかが課題となります。まずは、入居相談員であるあなたが果たすべき役割を明確にしましょう。

• 情報提供と説明： 施設のサービス内容、料金、入居までの手続きなどを、わかりやすく説明します。
• 相談対応： 入居希望者や家族の不安や疑問に対し、親身になって相談に乗ります。
• 調整役： 家族と施設の間、あるいは入居希望者と家族の間で、円滑なコミュニケーションを図ります。
• 問題解決： 入居に関する様々な問題に対し、専門的な知識と経験に基づき、解決策を提案します。

今回のケースでは、入居希望者の意思と家族の希望が対立しているため、上記の役割を総合的に発揮し、双方のニーズに応える必要があります。

ステップ1：現状の正確な把握とアセスメント

まずは、現状を正確に把握することから始めましょう。具体的には、以下の情報を収集し、アセスメントを行います。

1.1 情報収集

• 入居希望者の状態： 認知症の進行度合い、身体機能、既往歴、服薬状況、日常生活の様子（食事、排泄、睡眠など）、精神状態（不安、抑うつなど）を詳細に把握します。可能であれば、医師やケアマネジャーからの情報も収集します。
• 家族の情報： 家族構成、家族の介護に対する考え方、経済状況、入居希望者の自宅環境、家族の居住地からの距離などを把握します。
• 過去の経緯： 過去の入居検討の経緯、拒否に至った理由、本人の発言内容などを詳しく聞き取ります。
• 本人の価値観： 本人が大切にしていること、趣味、過去の生活歴などを把握し、本人の価値観を尊重したケアプランを立てるための基礎とします。

1.2 アセスメントのポイント

• 認知機能の評価： 認知症の進行度合いを客観的に評価します。MMSE（ミニメンタルステート検査）などの認知機能検査の結果や、日常生活における認知機能の低下の具体的なエピソードを参考にします。
• 行動・心理症状（BPSD）の評価： 徘徊、暴言、暴力、不眠、不安、抑うつなどのBPSDの有無、程度、原因を評価します。BPSDは、入居拒否の大きな要因となる場合があります。
• 本人の意思確認： 本人の意思を尊重することは重要ですが、認知症の進行度合いによっては、本人の意思だけを優先することが難しい場合もあります。家族との協力のもと、本人の真意を探る努力が必要です。

ステップ2：家族との連携と情報共有

家族との連携は、問題解決の鍵となります。家族の不安や困り事を丁寧に聞き取り、情報共有を密に行いましょう。

2.1 家族へのヒアリング

• 家族の思い： 家族が施設入居を希望する理由、現在の状況に対する不安や悩み、入居希望者への思いなどを丁寧に聞き取ります。
• 情報提供： 認知症に関する正しい知識、施設のサービス内容、入居までの手続きなどをわかりやすく説明します。
• 家族の役割： 家族が協力できること、入居後のサポート体制などを一緒に考えます。

2.2 情報共有のポイント

• 定期的な連絡： 家族との連絡を密にし、入居希望者の状態変化や、施設の情報を共有します。
• 記録の活用： 相談内容や対応内容を記録し、家族と共有することで、情報伝達の正確性を高めます。
• 多職種連携： 医師、ケアマネジャー、看護師など、多職種と連携し、情報を共有することで、より質の高いケアを提供できます。

ステップ3：入居希望者とのコミュニケーション

入居希望者とのコミュニケーションは、信頼関係を築き、入居への意欲を引き出すために重要です。認知症の特性を理解し、本人の気持ちに寄り添ったコミュニケーションを心がけましょう。

3.1 コミュニケーションのポイント

• 傾聴： 本人の話をじっくりと聞き、共感的な態度を示します。
• 肯定的な言葉： 本人の自尊心を傷つけないよう、肯定的な言葉で話しかけます。
• 分かりやすい説明： 難しい言葉を避け、短く分かりやすい言葉で説明します。
• 非言語的コミュニケーション： 表情、視線、身振り手振りなど、非言語的なコミュニケーションも大切にします。
• 回想法： 過去の出来事や思い出を語り合うことで、本人の安心感を高めます。

3.2 具体的なコミュニケーション例

入居を拒否する理由を探るために、以下のような質問をしてみましょう。

• 「何か不安なこと、困っていることはありますか？」
• 「今の生活で、一番つらいことは何ですか？」
• 「もし施設に入るとしたら、どんなことが心配ですか？」
• 「どんな生活を送りたいですか？」

本人の言葉に耳を傾け、本人の気持ちを理解しようと努めることが大切です。

ステップ4：環境調整と入居への準備

入居への準備は、本人の不安を軽減し、スムーズな入居を促すために重要です。環境調整、体験入居、家族との協力など、様々な工夫を試みましょう。

4.1 環境調整

• 本人の生活環境： 自宅の環境を整え、安全で快適な生活を送れるようにします。
• 施設の環境： 施設の雰囲気を事前に伝え、本人が安心できるような環境作りをします。
• 個室の選択： 個室の方が、本人のプライバシーを確保でき、落ち着いて過ごせる場合があります。
• 持ち物の準備： 好きなもの、使い慣れたものなど、本人が安心できるものを持ち込めるようにします。

4.2 体験入居の活用

体験入居は、入居に対する不安を軽減し、施設での生活をイメージしやすくするために有効です。体験入居の際には、以下の点に注意しましょう。

• 本人の意向確認： 体験入居を勧める前に、本人の意向を確認します。
• 短期間の体験： 最初は短期間の体験から始め、徐々に期間を延ばしていくことも可能です。
• 家族の同伴： 家族が同伴し、本人の様子を観察し、サポート体制を整えます。
• 施設の協力： 施設のスタッフが、本人の不安を軽減し、快適に過ごせるようにサポートします。

4.3 家族との協力

家族は、入居希望者の精神的な支えとなり、入居後の生活をサポートする上で重要な役割を果たします。家族との協力体制を構築するために、以下の点を意識しましょう。

• 情報共有： 本人の状態や、施設での様子を定期的に家族に報告します。
• 面会： 家族が積極的に面会し、本人とのコミュニケーションを図るように促します。
• イベントへの参加： 家族が施設のイベントに参加し、他の入居者やスタッフとの交流を深める機会を作ります。
• 相談体制： 家族からの相談に、いつでも対応できる体制を整えます。

ステップ5：専門家との連携

認知症ケアは、専門的な知識と経験が必要です。医師、ケアマネジャー、精神科医など、専門家との連携を密にし、多角的なサポート体制を構築しましょう。

5.1 医師との連携

• 診断と治療： 認知症の診断と治療について、医師と連携し、適切な医療を提供します。
• 服薬管理： 服薬状況を確認し、必要に応じて医師に相談し、服薬指導を行います。
• 健康管理： 定期的な健康チェックを行い、体調の変化に注意します。

5.2 ケアマネジャーとの連携

• ケアプランの作成： ケアマネジャーと連携し、本人の状態に合わせた適切なケアプランを作成します。
• サービス調整： 訪問介護、デイサービス、訪問看護など、必要なサービスを調整します。
• 情報共有： 本人の状態や、ケアプランの進捗状況について、ケアマネジャーと情報共有します。

5.3 精神科医との連携

• BPSDへの対応： BPSDが強く現れている場合、精神科医に相談し、適切な治療やケアを行います。
• 精神的なサポート： 本人や家族の精神的なサポートを行います。
• 薬物療法： 必要に応じて、精神科医の指示のもと、薬物療法を行います。

ステップ6：入居拒否への具体的な対応策

入居拒否への対応は、個々のケースによって異なりますが、以下の点を参考に、柔軟に対応しましょう。

6.1 拒否の理由を探る

入居を拒否する理由を、丁寧に探ることが重要です。本人の言葉に耳を傾け、何が不安なのか、何が嫌なのかを理解しようと努めましょう。拒否の理由が分かれば、それに対する具体的な対策を講じることができます。

6.2 焦らず、時間をかける

入居拒否は、すぐに解決できる問題ではありません。焦らず、時間をかけて、本人の気持ちに寄り添いながら、入居への意欲を高めていくことが大切です。

6.3 選択肢を提示する

入居だけでなく、他の選択肢（訪問介護、デイサービス、ショートステイなど）も提示し、本人が納得できる選択肢を見つけられるようにサポートします。選択肢を提示することで、本人の自律性を尊重し、主体的な意思決定を促すことができます。

6.4 家族へのサポート

家族の負担を軽減するために、情報提供、相談対応、精神的なサポートなどを行います。家族が安心して、入居希望者を支えられるように、サポート体制を整えましょう。

6.5 成功事例の共有

過去の成功事例を参考に、具体的な対応策を検討します。他の入居相談員の経験や、専門家の意見も参考に、より効果的な対応策を見つけましょう。

例えば、過去に同様のケースで、以下のような対応が成功した例があります。

• 本人の興味のある話題： 趣味、過去の仕事、家族のことなど、本人が興味を持っている話題について、積極的に話しかけ、信頼関係を築いた。
• 体験入居の工夫： 短時間の体験入居から始め、徐々に時間を延ばし、本人が施設に慣れるように促した。
• 家族の協力： 家族が積極的に面会し、本人とのコミュニケーションを図り、施設での生活をサポートした。
• 環境調整： 個室の環境を整え、本人が安心して過ごせるように配慮した。

ステップ7：入居後のサポート

入居はゴールではなく、新たな生活の始まりです。入居後も、継続的なサポートを提供し、本人が安心して生活できるように支援しましょう。

7.1 定期的な面談

定期的に本人と面談し、生活状況や困り事を聞き取ります。必要に応じて、ケアプランの見直しを行います。

7.2 家族との連携

家族との連携を継続し、本人の状態や、施設での様子を共有します。家族が安心して、本人を支えられるように、サポート体制を整えます。

7.3 サービスの調整

本人の状態に合わせて、必要なサービスを調整します。必要に応じて、医師、ケアマネジャー、その他の専門家と連携し、より質の高いケアを提供します。

7.4 苦情対応

入居者や家族からの苦情に、真摯に対応し、問題解決に努めます。苦情を、より良いケアを提供するための貴重な情報として活用します。

入居相談員として、これらのステップを踏むことで、認知症の高齢者の施設入居を成功に導き、入居希望者とその家族を支えることができます。あなたの専門知識と、温かい心で、多くの人々をサポートしてください。

まとめ：入居相談員として、できること

介護付有料老人ホームの入居相談員として、認知症の高齢者の施設入居を支援することは、容易ではありません。しかし、あなたの専門知識と経験、そして温かい心があれば、必ず解決の道は開けます。今回のケースでは、以下の点を意識して、入居希望者とその家族をサポートしましょう。

• 現状の正確な把握： 認知症の進行度合い、本人の状態、家族の状況などを詳細に把握します。
• 家族との連携： 家族の不安や困り事を丁寧に聞き取り、情報共有を密にします。
• 入居希望者とのコミュニケーション： 本人の気持ちに寄り添い、信頼関係を築きます。
• 環境調整と入居への準備： 本人の不安を軽減し、スムーズな入居を促します。
• 専門家との連携： 医師、ケアマネジャーなど、専門家と連携し、多角的なサポート体制を構築します。
• 入居拒否への具体的な対応策： 拒否の理由を探り、焦らず、時間をかけて対応します。
• 入居後のサポート： 継続的なサポートを提供し、本人が安心して生活できるように支援します。

あなたの努力が、入居希望者とその家族の笑顔につながることを願っています。困難な状況に直面した際は、一人で抱え込まず、同僚や上司、専門家と相談し、チームで問題解決に取り組みましょう。

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