看取り介護における医師への連絡と、看護師の不安を解消する対応策

この記事では、特養施設で看取り介護に携わる看護師の方々が抱える、医師への連絡に関する不安と、その対応策について掘り下げていきます。特に、心電図モニターの更新を巡る上司と看護師の意見対立、そしてモニターがない状況での対応への不安に焦点を当て、具体的な解決策を提示します。看取り介護の現場で、いかにして質の高いケアを提供し、患者様とご家族に寄り添うことができるのか、そのヒントを探ります。

看取り介護について現在、特養で看取りをしており、息を引き取られた事を先生にお伝えする時に心電図モニターの結果（フラットな状態）を電話で医師に連絡して家族への連絡などその後の対応を10年以上に渡りしてきております。

この度このモニターを更新するということで問題が起きました。

上司「そんなもの、脈が無い、息してない、等の情報を医師に連絡して判断を仰いだらいいか ら、モニターの更新は必要なし（50万もするんやぞ！）」

看護師「本当に亡くなった事を視覚的にまた遠隔で指示をもらうために、モニターの情報は 必要である。（新しいの買ってくれ！）」

と言う具合です。

私は、モニターの情報を元に連絡することに慣れている（それしか知らなかった）ので無い状態での動きを考えると不安を覚えております。

幸い担当の先生は比較的早く来て確認いただけますが、時に24時間以上後に、死亡の確認をしていただくこともあります。

皆さんの施設では、どのような判断の元、医師や家族に「なくなっているかも？」という連絡をされておりますでしょうか。

1. モニター更新を巡る対立と、その背景にあるもの

特養施設における看取り介護は、入居者様の尊厳を守り、最期まで安らかな時間を過ごせるように支援する、非常に重要な役割を担っています。その中で、心電図モニターの更新を巡る上司と看護師の意見対立は、看取り介護の現場でよく見られる問題の一つです。この対立の背景には、コスト意識と、質の高いケアを提供したいという看護師の思い、そして長年の経験からくる慣れや不安が複雑に絡み合っています。

1-1. 上司の視点：コスト削減と効率化

上司の立場からすると、50万円という高額な心電図モニターの更新は、施設の運営コストを圧迫する要因となります。特に、経営状況が厳しい施設においては、コスト削減は重要な課題です。上司は、脈拍や呼吸の停止といった情報を医師に伝え、判断を仰ぐことで、モニターの必要性を疑問視しています。これは、コスト削減と業務の効率化を同時に目指す、経営的な視点からの判断と言えるでしょう。

1-2. 看護師の視点：質の高いケアと安心感の確保

一方、看護師は、心電図モニターが、患者様の状態を客観的に把握し、医師への正確な情報伝達に役立つと考えています。特に、看取りの現場では、患者様の状態を視覚的に確認できることは、看護師にとって大きな安心感につながります。また、遠隔での指示を受ける際にも、モニターの情報は重要な判断材料となります。看護師は、患者様の尊厳を守り、質の高いケアを提供するために、モニターの必要性を訴えているのです。

1-3. 長年の経験からくる慣れと不安

質問者様が、長年心電図モニターの情報をもとに医師に連絡し、対応してきたという経験も、今回の問題に影響しています。モニターがない状態での対応に不安を感じるのは、当然のことです。長年の経験からくる慣れは、時に新しい変化への抵抗感を生み出すことがあります。しかし、変化を受け入れ、新しい知識や技術を習得することで、より質の高いケアを提供できる可能性も広がります。

2. モニターがない状況での対応：具体的な手順とポイント

心電図モニターがない状況でも、適切な対応をすることで、患者様の尊厳を守り、ご家族に安心感を与えることができます。以下に、具体的な手順とポイントを解説します。

2-1. 事前の準備：情報収集と連携体制の構築

• 患者様の情報収集： 患者様の病状、既往歴、現在の状態に関する情報を、カルテや看護記録から詳細に収集します。
• 医師との連携： 普段から、担当医と密にコミュニケーションを取り、看取りに関する方針や連絡方法について確認しておきます。特に、モニターがない状況での対応について、事前に相談しておくことが重要です。
• 家族との連携： 事前に、ご家族に対して、看取り介護に関する説明を行い、不安や疑問を解消しておきます。万が一の際には、迅速に連絡が取れるように、連絡先を確認しておきましょう。
• 施設内での情報共有： 看護師間、介護士間、そして医師との間で、患者様の状態に関する情報を共有し、連携体制を強化します。

2-2. 状態観察：客観的な情報収集

• 呼吸の確認： 呼吸の有無、呼吸回数、呼吸音などを観察します。
• 脈拍の確認： 頸動脈や橈骨動脈などで脈拍を確認します。脈拍の有無、強さ、リズムなどを観察します。
• 皮膚の色： 顔色、手足の色などを観察します。チアノーゼ（皮膚や粘膜が青紫色になる状態）の有無を確認します。
• 瞳孔の確認： 瞳孔の大きさ、対光反射の有無を確認します。
• 全身状態の観察： 全身の冷感、硬直の有無などを観察します。

2-3. 医師への報告：正確な情報伝達

• 客観的な情報を伝える： 観察した情報を、客観的かつ具体的に医師に伝えます。「呼吸停止」「脈拍触知せず」「皮膚冷感あり」など、事実を正確に伝えます。
• 状況に応じた連絡： 状況に応じて、電話、FAX、またはビデオ通話など、適切な方法で連絡を取ります。
• 記録の徹底： 観察した内容、医師への報告内容、指示事項などを、詳細に記録します。

2-4. 家族への対応：寄り添いと情報提供

• 丁寧な説明： 患者様の状態について、ご家族に丁寧に説明します。専門用語を避け、分かりやすい言葉で伝えるように心がけます。
• 心のケア： ご家族の不安や悲しみに寄り添い、心のケアを行います。
• 情報共有： 医師からの指示や、今後の対応について、ご家族と情報を共有します。
• プライバシーの保護： ご家族のプライバシーに配慮し、個人情報保護を徹底します。

3. 看護師の不安を解消するための具体的な対策

心電図モニターがない状況での対応に不安を感じる看護師のために、以下の対策を提案します。

3-1. 研修と教育：知識とスキルの向上

• 救急看護に関する研修： 救急看護に関する研修を受講し、急変時の対応スキルを向上させます。
• フィジカルアセスメントの研修： フィジカルアセスメント（身体観察）に関する研修を受講し、患者様の状態を正確に把握する能力を高めます。
• 看取り介護に関する研修： 看取り介護に関する研修を受講し、看取りに関する知識や技術を深めます。
• 定期的な勉強会： 施設内で、定期的に勉強会を開催し、情報共有やスキルアップを図ります。

3-2. チームワークの強化：連携とサポート体制の構築

• 情報共有の徹底： 看護師間、介護士間、医師との間で、患者様の状態に関する情報を積極的に共有し、連携を強化します。
• 相談しやすい環境： 上司や同僚に相談しやすい環境を整え、不安や疑問を気軽に相談できる体制を構築します。
• メンタルヘルスケア： 精神的な負担を軽減するために、メンタルヘルスケアのサポート体制を整えます。

3-3. 記録の活用：客観的な情報と根拠の明確化

• 詳細な記録： 患者様の状態、観察内容、医師への報告内容、指示事項などを、詳細に記録します。
• 記録の見直し： 定期的に記録を見直し、改善点や課題を把握します。
• 記録の共有： 記録をチーム内で共有し、情報伝達の精度を高めます。

4. 成功事例と専門家の視点

他の施設での成功事例や、専門家の視点を取り入れることで、より実践的な対応策を学ぶことができます。

4-1. 他の施設の成功事例

ある特養施設では、心電図モニターがない状況でも、看護師が患者様の状態を詳細に観察し、医師との連携を密にすることで、質の高い看取り介護を実現しています。具体的には、以下のような取り組みを行っています。

• フィジカルアセスメントの強化： 看護師は、呼吸、脈拍、皮膚の色、瞳孔などを詳細に観察し、客観的な情報を収集しています。
• 医師との連携強化： 医師との定期的なカンファレンスを実施し、看取りに関する方針や対応について、事前に話し合っています。
• 記録の徹底： 観察した内容、医師への報告内容、指示事項などを、詳細に記録し、チーム内で共有しています。
• 家族への寄り添い： 看護師は、ご家族の不安や悲しみに寄り添い、心のケアを行っています。

この施設では、これらの取り組みにより、患者様の尊厳を守り、ご家族に安心感を与える看取り介護を実現しています。

4-2. 専門家の視点

看取り介護の専門家は、心電図モニターの有無に関わらず、患者様の状態を正確に把握し、医師との連携を密にすることが重要であると述べています。また、看護師が不安を感じることなく、自信を持って対応できるよう、研修や教育、チームワークの強化、記録の活用など、様々なサポート体制を整えることが重要であると指摘しています。

専門家は、以下のようなアドバイスをしています。

• 患者様の状態を多角的に評価する： 呼吸、脈拍、皮膚の色、瞳孔など、様々な情報を総合的に評価し、客観的な情報を収集する。
• 医師との連携を密にする： 普段から、担当医とコミュニケーションを取り、看取りに関する方針や連絡方法について確認しておく。
• 記録を徹底する： 観察した内容、医師への報告内容、指示事項などを、詳細に記録し、情報共有に役立てる。
• チームワークを強化する： 看護師間、介護士間、医師との間で、情報共有や相談しやすい環境を整える。
• 自己研鑽を続ける： 研修や勉強会に参加し、知識や技術を向上させる。

これらのアドバイスを参考に、看護師は、自信を持って看取り介護に取り組むことができます。

5. まとめ：看取り介護における看護師の役割と、質の高いケアの提供

特養施設における看取り介護は、患者様の尊厳を守り、最期まで安らかな時間を過ごせるように支援する、非常に重要な役割を担っています。心電図モニターの有無に関わらず、看護師は、患者様の状態を正確に把握し、医師との連携を密にすることで、質の高いケアを提供することができます。

今回のQ&Aを通じて、心電図モニターの更新を巡る上司と看護師の意見対立、そしてモニターがない状況での対応への不安について、具体的な解決策を提示しました。事前の準備、状態観察、医師への報告、家族への対応、そして看護師の不安を解消するための対策など、様々な角度からアプローチすることで、看取り介護の現場で、より質の高いケアを提供し、患者様とご家族に寄り添うことができるはずです。

看護師の皆様には、今回の記事で得た知識や情報を活かし、患者様の尊厳を守り、ご家族に安心感を与える看取り介護に取り組んでいただきたいと思います。そして、自己研鑽を続け、常に質の高いケアを提供できるよう、努力を重ねていくことが重要です。

“`