介護職の着替え介助：車椅子とベッド、どちらが適切？安全な介助方法と職場との話し合い方

介護職です。グラついて座位がしっかり取れていない人の着替えをベッドでしていたのですが、「車椅子に座れる人は上の服は車椅子で更衣が決まりだ！」と先輩に言われました。咳き込んで前のめりになっただけで転落しそうになる人なのに、ほんとにそれでそれでいいのかなって疑問です。ギリギリでも座れていたら上衣は車椅子で着替えるべきなのでしょうか？明確な理由があれば教えてって言っても会社がそうなっているとしか返事が来なくてモヤモヤしてます。同業者の方とか経験者の方のご意見が欲しいです。

この記事では、介護職における着替え介助、特に座位が不安定な利用者の方の上衣着替えについて、ベッドと車椅子のどちらが安全で適切なのか、その判断基準と職場とのコミュニケーション方法を解説します。現場で日々奮闘されている介護職の皆様の疑問を解消し、より安全で質の高い介護を提供するためのヒントを提供します。 多くの介護現場で直面するこの問題について、具体的な事例を交えながら、深く掘り下げていきます。

利用者の状態を正確に把握することが第一歩

まず重要なのは、利用者の方の身体状況を正確に把握することです。単に「車椅子に座れる」というだけでなく、その座位の安定性、バランス感覚、認知機能、協調性などを総合的に判断する必要があります。 「ギリギリ座れる」という状況は、転倒リスクが非常に高いことを示唆しています。 咳き込むなどの動作でバランスを崩す可能性も考慮しなければなりません。

具体的にどのような点に注意すべきでしょうか？以下にチェックリストを作成しました。

• 座位の安定性： 車椅子に座った状態で、身体を支えなくても姿勢を維持できますか？少しの刺激でバランスを崩したり、身体が傾いたりしませんか？
• バランス感覚： 車椅子に座った状態で、身体を少し傾けたり、手を伸ばしたりしてもバランスを崩しませんか？
• 認知機能： 指示を理解し、着替えの動作に協力できますか？
• 協調性： 着替えの際に、介護者の指示に従って動けますか？
• 身体の痛みや不快感： 車椅子に座ることによって、痛みや不快感を感じていませんか？
• 筋力： 上半身を起こしたり、腕を動かすのに十分な筋力がありますか？

これらの項目を一つずつ確認し、利用者の方の状態を正確に把握することで、ベッドでの着替えが適切かどうかを判断できます。 もし上記の項目で不安定な要素が多い場合は、ベッドでの着替えの方が安全である可能性が高いです。

ベッドと車椅子、それぞれのメリット・デメリット

ベッドと車椅子、それぞれのメリット・デメリットを比較検討してみましょう。

ベッドでの着替え

• メリット： 安定した姿勢で着替えられるため、転倒リスクが低い。介護者も安定した姿勢で介助できる。利用者の負担が少ない。
• デメリット： ベッドから車椅子への移動が必要になる場合がある。ベッドのスペースが必要。

車椅子での着替え

• メリット： 車椅子に座ったまま着替えられるため、移動の手間が少ない。自立性を促すことができる。
• デメリット： 座位が不安定な場合は転倒リスクが高い。介護者も介助しにくい場合がある。利用者の負担が大きくなる可能性がある。

上記のメリット・デメリットを踏まえ、利用者の方の状態に合わせて最適な方法を選択することが重要です。 「車椅子に座れるから車椅子で着替えさせる」という一律のルールではなく、個々の利用者の方の状態に合わせた柔軟な対応が求められます。

安全な着替え介助のための具体的な手順

安全な着替え介助を行うためには、以下の手順を踏むことが重要です。

1. 利用者の方の状態を確認する： 座位、バランス、認知機能、協調性などを確認する。
2. 適切な場所を選択する： ベッドか車椅子か、利用者の方の状態に合わせて適切な場所を選択する。
3. 安全確保： 転倒防止のため、必要に応じて手すりや補助具を使用する。介護者は安定した姿勢を保つ。
4. ゆっくりと丁寧に： 急がずに、ゆっくりと丁寧に介助を行う。利用者の方とコミュニケーションを取りながら進める。
5. 必要に応じて休憩： 利用者の方や介護者が疲れた場合は、休憩を取る。

職場とのコミュニケーション

職場の方針と、利用者の方の安全確保の両立が課題となっています。 会社の方針が「車椅子に座れるなら車椅子で着替え」というものであれば、その根拠を明確に確認する必要があります。 安全面を考慮した上で、より適切な方法を提案し、職場と話し合うことが重要です。 具体的には、以下の点を伝えましょう。

• 利用者の方の具体的な状態： 座位が不安定であること、咳き込むと転倒する危険性があることなどを具体的に説明する。
• 安全確保の重要性： 転倒による怪我のリスクを説明する。
• 代替案の提案： ベッドでの着替え、補助具の使用など、代替案を提案する。
• 関係法令の確認： 労働安全衛生法や介護保険法などを参考に、安全な作業環境の確保について議論する。

話し合いの際には、感情的にならず、冷静に事実を伝え、安全な着替え介助の方法について建設的に議論することが大切です。 必要であれば、上司や管理者、あるいは専門家（ケアマネジャーなど）に相談することも検討しましょう。

成功事例：柔軟な対応で安全を確保

ある介護施設では、座位が不安定な利用者の方に対して、従来の「車椅子で着替え」という方針を見直し、個々の状況に応じた柔軟な対応を行うように変更しました。 その結果、転倒事故が減少しただけでなく、利用者の方の満足度も向上しました。 この事例は、職場の方針に固執するのではなく、利用者の方の安全と快適さを最優先事項として柔軟に対応することの重要性を示しています。

まとめ

介護職における着替え介助は、利用者の方の安全と尊厳を確保する上で非常に重要な業務です。 「車椅子に座れるから車椅子で着替え」というような、一律のルールに当てはめるのではなく、個々の利用者の方の状態を正確に把握し、ベッドと車椅子のメリット・デメリットを比較検討した上で、最も安全で適切な方法を選択することが重要です。 職場とのコミュニケーションを密にすることで、安全な作業環境を構築し、質の高い介護を提供することができるでしょう。