「施設入居中の親の『家に帰りたい』問題：家族としてどう対応すべき？」介護施設との連携と心のケア

この記事では、介護施設に入所している親御さんの「家に帰りたい」という気持ちに、ご家族がどのように向き合い、施設との連携を深めながら、親御さんの心のケアをしていくかについて、具体的なアドバイスを提供します。特に、ご本人の安全と安心を最優先に考えながら、どのように対応していくべきか、専門的な視点から解説します。

88歳の実父のことでご相談します。昨年夏まで二人で同居していましたが、腎不全になり、一般病院に1か月入院、膀胱路の手術を受けました。そのころに認知症を発症し、院内での徘徊、暴言や暴力が出てきたため、精神科病院に転院し、4か月の入院を経て、特養に入所し、現在に至っています。精神科から特養に移る際に、「在宅だと娘に迷惑をかけるから、施設に入ります」と、病院に面接に来たの施設相談員さんに話し、入所となったのですが、施設に入って半年過ぎたあたりから、「帰りたい」と話すようになりました。職員さんにはごく普通に対応しているようなのですが、面会の家族の前では暴言や暴力が出てくるようになり、物に八つ当たりをしたり大声を出したり、しまいには、「あんたが来たから具合が悪くなって息ができない、帰ってくれ」というようになりました。それでも施設の方々に対して、大きな問題行動は見られないらしいので、これまで父のいるユニットとエレベーターホールは本人の自由行動が許可されていたのですが、ここ数日は、帰りたい帰りたい、と言いながら、自分のいる2階のユニットから、施設の玄関に出ようと、階段を探す行動が出てきた、とのことでした。もちろん施設にはエレベーターもありますが、それは理解できていない様子です。この徘徊について、施設から一度お話ししたい、と連絡があり近日中に行く予定ですが、この時にもしも、相談員さんから、自宅への外出あるいは外泊を提案された場合、私としては「できない」と思っているのですが…家族として言ってはならないことでしょうか….？

理由は、今が冬であること、家が古くバリアフリーではないこともあり、父には寒く過ごしにくいのでは？と思っています。家を出て1年半になりますが、父が今認識している「自宅」のイメージと現実にもギャップがあるでしょうし…。

まだ在宅だった頃、父は家でも感情的になることが多く、カッとなると窓ガラスやトイレの水槽タンクを割ったり、その一方では火の管理も危うく、夜中に電気ストーブにタオルをかけて引火し、ストーブ自体を黒焦げにしたこともありました。今はそういう目の離せない心配からも解放されて、私もやっと落ち着いて生活しており、施設には週2～3回で面会に行っています。ただ、例えば短時間の帰宅にせよ、本人が「もう施設には戻らない」と決めこんでしまったら、と正直、不安になっています。

そんなこともあり、施設サイドから外出を提案されても、お断りしたい、と考えているのですが、これは家族として通用しないことでしょうか？ 施設の方々にはこれまでとてもよくしていただいており、こちらも信頼してお任せしていますが…。

はじめに：状況の整理と問題の本質

ご相談ありがとうございます。88歳のお父様の介護について、大変ご心労のこととお察しいたします。今回の問題は、認知症を患っているお父様の「家に帰りたい」という気持ちと、ご家族としての安全への配慮、そして施設との連携という、複数の要素が複雑に絡み合っています。まずは、現状を整理し、問題の本質を理解することが重要です。

お父様は、腎不全、膀胱瘻の手術、認知症の発症、精神科病院への転院、そして特別養護老人ホームへの入所と、様々な出来事を経験されました。特に、認知症の影響で、現実と認識の間にギャップが生じている可能性があります。「家に帰りたい」という気持ちは、過去の記憶や感情と結びついている一方で、現在の状況を正しく理解できていないことも考えられます。

ご家族としては、お父様の安全を第一に考え、自宅の環境やご本人の状態から、帰宅や外泊が難しいと判断されているのは当然です。しかし、施設側から外出の提案があった場合、どのように対応すれば良いのか、悩まれていることと思います。この問題に対する適切な対応は、お父様のQOL（生活の質）を維持し、ご家族の負担を軽減するためにも、非常に重要です。

1. 「家に帰りたい」という気持ちの背景を理解する

まず、お父様が「家に帰りたい」と訴える背景を理解することが重要です。認知症の症状として、過去の記憶が鮮明になり、現在の状況との間で混乱が生じることがあります。また、施設での生活に対する不安や孤独感、不満などが、この感情を強めることもあります。

• 過去の記憶： 以前の生活、特に楽しかった思い出や慣れ親しんだ環境への郷愁が、帰りたいという気持ちを強くする可能性があります。
• 現在の状況への不満： 施設での生活に馴染めない、人間関係がうまくいかない、自由が制限されるなど、様々な要因が考えられます。
• 不安や孤独感： 見知らぬ環境での生活や、家族との距離感から、不安や孤独を感じている可能性があります。
• 身体的な不調： 体調が優れない場合、精神的な不安定さが増し、「家に帰りたい」という気持ちを強めることがあります。

これらの背景を理解することで、お父様の気持ちに寄り添い、適切な対応をすることができます。例えば、過去の思い出話を聞いたり、施設での生活をより快適にするための工夫をしたりすることが、有効な手段となります。

2. 施設との連携：コミュニケーションと情報共有

施設との連携は、問題解決の鍵となります。定期的なコミュニケーションを通じて、お父様の状況を共有し、一緒に解決策を模索することが重要です。具体的には、以下の点を意識しましょう。

• 定期的な面会と情報交換： 頻繁に施設を訪れ、お父様の様子を直接確認し、職員の方々と情報交換を行いましょう。
• 記録の確認： 施設の記録（日誌、看護記録など）を確認し、お父様の行動や言動、体調の変化などを把握しましょう。
• 相談の機会： 困ったことや疑問に思うことがあれば、遠慮なく相談員や看護師に相談しましょう。
• 家族会の活用： 施設によっては、家族会が開催されています。他の家族との情報交換や、施設への要望を伝える場として活用しましょう。
• 情報共有の徹底： 家族間で、お父様の状況や対応について情報を共有し、一貫性のある対応を心がけましょう。

施設側も、ご家族との連携を重視しています。積極的にコミュニケーションを図り、お互いを理解し合うことで、より良い関係を築くことができます。

3. 外出・外泊の検討：メリットとデメリットの比較

施設から外出や外泊の提案があった場合、すぐに「できない」と決めつけるのではなく、慎重に検討することが重要です。メリットとデメリットを比較し、お父様の状況やご家族の負担などを考慮して、総合的に判断しましょう。

メリット：

• 本人の満足感： 帰宅することで、本人の精神的な満足感が高まり、QOLが向上する可能性があります。
• 現実とのギャップの確認： 実際に自宅に戻ることで、現在の状況を再認識し、現実を受け入れるきっかけになるかもしれません。
• 家族との時間： 家族と過ごす時間を持ち、親密な関係を再構築する機会になります。

デメリット：

• 安全性の問題： 自宅の環境や本人の状態によっては、転倒や事故のリスクが高まる可能性があります。
• 介護負担の増加： 介護者の負担が増加し、心身ともに疲弊する可能性があります。
• 混乱や不安の増大： 帰宅後、施設に戻る際に、混乱や不安が強まる可能性があります。
• 本人の体調悪化： 環境の変化や慣れない状況により、体調が悪化する可能性があります。

これらのメリットとデメリットを比較し、お父様の状態やご家族の状況に合わせて、最適な選択をすることが重要です。場合によっては、短時間の外出から試してみるなど、段階的なアプローチも検討できます。

4. 外出・外泊を検討する際の具体的なステップ

外出や外泊を検討する際には、以下のステップで進めていくと良いでしょう。

1. 情報収集： 施設職員や医師、ケアマネージャーなど、専門家から情報を収集し、お父様の状態を正確に把握します。
2. リスク評価： 自宅の環境や、お父様の身体能力、認知機能などを評価し、リスクを具体的に洗い出します。
3. 準備： 外出・外泊に必要な準備（移動手段、介護体制、持ち物など）を整えます。
4. 計画： 外出・外泊の期間、内容、スケジュールなどを具体的に計画します。
5. 試行： 短時間の外出から試し、お父様の反応や状況を観察します。
6. 評価と見直し： 外出・外泊後、お父様の様子や問題点を評価し、今後の対応を見直します。

これらのステップを踏むことで、安全で、お父様にとってもご家族にとっても、より良い外出・外泊を実現することができます。

5. 帰宅が難しい場合の対応：代替案の検討

自宅への帰宅が難しい場合でも、お父様の「家に帰りたい」という気持ちに応える方法は、いくつかあります。代替案を検討し、本人のQOLを向上させるための工夫をしましょう。

• 自宅の環境を再現： 施設内の居室を、自宅のように飾り付けたり、馴染みのある家具や小物を置いたりすることで、安心感を与えることができます。
• 写真やビデオの活用： 家族写真や、以前の生活のビデオを見せることで、過去の記憶を呼び起こし、安らぎを与えることができます。
• 思い出話： 昔の話を聞いたり、一緒に写真を見ながら思い出を語り合うことで、心の繋がりを深めることができます。
• 趣味や活動の継続： 以前行っていた趣味や活動を、施設でも継続できるように支援します。
• バーチャル帰宅： スマートフォンやタブレットを使って、自宅の様子をビデオ通話で見せることで、帰宅したような疑似体験をすることができます。

これらの代替案を組み合わせることで、お父様の「家に帰りたい」という気持ちを和らげ、施設での生活をより豊かにすることができます。

6. 家族としての心のケア：負担を軽減するために

介護は、ご家族にとって大きな負担となります。特に、認知症の親御さんの介護は、精神的なストレスも大きくなりがちです。ご自身の心のケアも忘れず、無理のない範囲で介護を続けることが重要です。

• 休息： 睡眠をしっかりと取り、疲労を回復させましょう。
• 気分転換： 趣味を楽しんだり、友人との時間を過ごしたりして、気分転換を図りましょう。
• 相談： 家族や友人、専門家（医師、カウンセラーなど）に悩みを相談しましょう。
• 情報収集： 介護に関する情報を収集し、知識を深めましょう。
• 支援サービスの活用： 訪問介護やデイサービスなど、介護保険サービスを活用し、負担を軽減しましょう。
• 罪悪感を手放す： 施設に入所させることに罪悪感を感じる必要はありません。お父様の安全と、より良い生活を願う気持ちがあれば、それで十分です。

ご自身の心のケアを怠ると、心身ともに疲弊し、介護を続けることが難しくなります。周囲のサポートを積極的に活用し、無理のない範囲で介護を続けましょう。

7. 専門家の意見：ケアマネージャーや医師との連携

ケアマネージャーや医師など、専門家の意見を聞くことも重要です。彼らは、お父様の状態を客観的に評価し、適切なアドバイスをしてくれます。また、施設との連携を円滑に進めるためのサポートもしてくれます。

• ケアマネージャー： 介護保険サービスに関する相談や、ケアプランの作成、施設との連絡調整など、様々なサポートをしてくれます。
• 医師： お父様の健康状態や、認知症の進行状況などを評価し、適切な医療を提供してくれます。
• 精神科医： 認知症に伴う精神的な症状（徘徊、暴言、暴力など）に対する治療や、アドバイスをしてくれます。
• ソーシャルワーカー： 介護に関する様々な相談に対応し、必要な情報を提供してくれます。

専門家との連携を通じて、より質の高い介護を提供し、お父様のQOLを向上させることができます。

8. 施設との良好な関係を維持するためのポイント

施設との良好な関係を維持することは、お父様の介護を円滑に進めるために不可欠です。以下の点を意識しましょう。

• 感謝の気持ち： 施設の方々への感謝の気持ちを、言葉や態度で示しましょう。
• 積極的なコミュニケーション： 定期的に施設を訪れ、積極的にコミュニケーションを図りましょう。
• 情報共有： お父様の状態や、ご家族の希望などを、積極的に情報共有しましょう。
• 協力的な姿勢： 施設の運営に協力し、必要な場合には、積極的に手伝いましょう。
• 問題解決への協力： 問題が発生した場合には、施設と協力して、解決策を模索しましょう。

良好な関係を築くことで、施設の方々は、より親身になってお父様の介護をしてくれます。お互いを尊重し、協力し合うことが、良い関係を維持するための秘訣です。

9. まとめ：家族としてできること、できないこと

今回のケースでは、お父様の「家に帰りたい」という気持ちに応えたいというご家族の思いと、安全への配慮の間で葛藤がある状況です。家族としてできること、できないことを整理し、現実的な対応を検討することが重要です。

家族としてできること：

• お父様の気持ちに寄り添い、話を聞いてあげること。
• 施設との連携を密にし、情報交換を行うこと。
• 自宅の環境や、お父様の状態を考慮し、安全な選択をすること。
• 代替案を検討し、本人のQOLを向上させるための工夫をすること。
• ご自身の心のケアを行い、無理のない範囲で介護を続けること。

家族としてできないこと：

• お父様の認知症の症状を完全に治すこと。
• 本人の意思だけで、安全を確保できない状況で帰宅させること。
• ご自身の心身の健康を犠牲にして、介護を続けること。

家族としてできることに集中し、できないことは、専門家のサポートや、介護保険サービスなどを活用しながら、乗り越えていくことが大切です。

10. 今後の具体的なアクションプラン

最後に、今後の具体的なアクションプランを提案します。これらのステップを踏むことで、お父様の介護に関する問題を解決し、より良い生活を送ることができるでしょう。

1. 施設との面談： 近日中に予定されている施設との面談で、お父様の「家に帰りたい」という気持ちについて、相談員と詳しく話し合いましょう。自宅への外出や外泊について、現時点での考えを伝え、今後の対応について相談しましょう。
2. 情報収集： ケアマネージャーや医師、精神科医など、専門家からお父様の状態に関する情報を収集し、今後の対応についてアドバイスをもらいましょう。
3. 代替案の検討： 自宅への帰宅が難しい場合、施設での生活をより快適にするための代替案を検討しましょう。具体的には、自宅の環境を再現したり、思い出の品を飾ったり、趣味や活動を継続できるように支援したりすることを検討しましょう。
4. 家族会議： 家族間で、お父様の状況や対応について情報を共有し、一貫性のある対応ができるように話し合いましょう。
5. 心のケア： ご自身の心のケアを忘れず、休息を取ったり、気分転換を図ったり、専門家に相談したりして、心身の健康を維持しましょう。

これらのアクションプランを実行することで、お父様の介護に関する問題を解決し、ご家族の負担を軽減し、より充実した生活を送ることができるでしょう。焦らず、一つ一つ問題を解決していくことが大切です。応援しています。

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